異世界に行った理由

ミカン♬

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 フリック殿下は夢中になると寝食忘れて不眠不休で研究に没頭するらしい。

「時々お声を掛けないと死にかけるんです」
「うっ、まだ子どもなのに恐るべき集中力ですね」
「実験中は私はヒマなのです。ミオと親睦を深める時間が出来ました」

 リシャールが近づくと甘い香りがして、頭の中を警戒アラートが鳴り響く。

「あ!・・・そうだ、私はいつ帰れるの?」
「ん・・・」
 色気漂うリカルド、危ない危ない。

「青と赤、二つの月が重なる時に奇跡が起こると言われています。5年先かな」
「うそ、そ、その奇跡って本当に起こるの?」

「昨夜がそうでした、だからミオがここに来たのでしょう。毎回奇跡は起こりませんが、今回は起こった。そして私達は出逢った。まさに奇跡ですね」

「そんな5年先なんて、私は23歳?・・・長すぎるよ」

「え、ミオは18歳?じゃぁすぐに結婚できますね。15歳くらいかと思っていました」
「なんで私はリシャールの妻になっているの?」

「ミオが求婚したからですよ、2回も」
 2回って・・・チュゥ♡・・・のこと?

「キスが求婚の証だなんて知らなかったの。無効じゃないかな?」
「でも私を好きだからキスしましたよね。しっかり契約印も残したので有効です」

 舌の印・・・深いチクッ!とするキスされたっけ。あれがそうか。

「印は外せます。5年経って、私を嫌いになっていたら外しましょう」
「リシャールが私を嫌いになる場合もあるよね?」
「今のところ想像できませんね」

 顔が近づいて、警戒アラートが・・・ドキドキ・・・
 だが、リシャールは私から少し離れた。

「今はまだ無理そうですね。でも私は必ずミオを落として見せます」
 自信ありげなリシャール、そりゃその美貌だと誰でも落とせそう。

 平々凡々な私のどこが好きなんだろう、紫月の乙女と言われてもハズレ物件なのに。
 でも今は彼を頼るしかない、ギフトが物々交換しかないのだ。
 魔法だってこれから初歩を習得する段階。

 (神様、なんで私にチートを与えてくれなかったのよっ!)


 私はまだ現実味がなくて、ここに遊びに来ているような感覚がぬぐい切れていなかった。
 でも、リシャールの話で──ガツン!と頭を殴られた感じ。

 5年も家族に会えないなんて、私が急に消えて心配しているに違いない。
 他に帰る方法は無いのかな・・・


 落ち込む私をリシャールは優しく寄り添ってくれた。
 単純な私は情に絆されていく。

 ただ毎晩一緒に寝るのは慣れない。目のやり場に困る。
 というか、私は初めからどうかしている。リシャールにキスしたり、いくらイケメンだからって初対面の男性と一緒に寝るなんて普通じゃない。

 舌の契約印のせいなのかリシャールを受け入れるのに抵抗がないのだ。

「ミオも裸で寝れば気持ちいいのに」
「寒がりなので無理です」

「抱きしめて温めてあげるよ」
「イリマセン」

 リシャールが甘い言葉を吐くといい匂いが漂ってクラクラする。

「ねぇ、何か私に魔法を使ってない?」
「ないですよ、魅了魔法は禁忌ですからね」

「み、魅了なんかされてないんだからね!」
「ふふ、ミオは可愛い、好きだ」

「お触りは禁止だからね!」
「ええ、もう夫婦なのに」
「順番がおかしいでしょ!」

 こんなやり取りを繰り返し、1週間が過ぎていた。


 フリック殿下が研究に夢中になって、リシャールを困らせている。
 なのでトレードはお休みして、魔法書を読んだり、リシャールから初歩魔法を習いながら過ごしていた。

「ミオのドレスが届いたので街に出てみましょう」
 八日目の朝リカルドに可愛いワンピースとコートを着せられて街に出ることになった。

 モコモコのブーツも履かされて温かい。他にもパンツや厚手の服を沢山用意してくれた。
 初日に夜の街を1度見ただけだ、ワクワクする。

「殿下も行くのですか?嬉しいな」
「行きたくないけど、歩いて体を動かせってリシャールが煩いんだ」

 運動不足の殿下と三人で街に出ると、風が冷たくて真冬が近いと分かる。
 綺麗なお店が建ち並び、入った店でケーキセットを食べた。

 店を出ると、大通りを馬車が何台も行き交うのが目につく。

「この世界の移動は馬車なのね」
「そうです。魔法で転移も出来ますよ。ミオの世界はどうなんですか?」

「車とかバイク、電車、バス、飛行機、船とかかな」
「船はありますよ。他は無いですね」

「車は大気汚染に繋がるのでお勧めできないけど、便利よ」

 殿下が改造すれば車だって排気ガスは出さなくなりそう。
 でも、この世界に車を持ち込むのは違う気がする。

「ねね、どれか、ミオのトレードで出せない?」
「そうですね、自転車なら」
 殿下の運動不足にも役立つかもしれない。

「ミオ、大気汚染は困ります。魔樹木が枯れると大変なので」
「自転車は大丈夫。何が枯れるの?」
「あれです」
 リカルドが指した先にはポプラのような広葉樹がそびえ立ち、見回すと同じ大木が至る所にある。

「あの木から魔素が排出されて、魔法が使えるのです」
 光合成みたいなものなのか。


「大気が汚染されると魔樹木は枯れて大変な事になるんだよ」
「どうやって木が汚染されるの?」
「この世界は時々瘴気が地面から吹き出て、騎士団が瘴気を清めて回っているんだ。安全ならジテンシャ出して、ミオお願い!」
「分かりました・・・そのうちに」

 地球で魔法が使えたら素敵だ。

 自転車と魔樹木。
 もしトレードできたとしても、きっと魔樹木は地球では育たない。


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