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21 ナッシュの事情(ナッシュ視点)
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叔父の男爵が来た夜、旦那様に呼ばれてお嬢様を隣国に留学させる予定だと聞かされました。次いでお嬢様が留学されると私はヤンさんの父親ゴードン氏の下に就くよう命じられました。
それと明日からはもうお嬢様の送り迎えの必要はないと。
ゴードン氏は王都の商業地区で仕事をしているので私はここを離れることになります。お嬢様を送り迎えという私の細やかな幸せがなくなるのは寂しい限りです。
小さかったお嬢様が私を覚えてくれていたことには胸が熱くなりました。私も辛い子爵家の生活の中で時々思い出していたのです『あの子は新しいお母さんと仲良くなったかな』と。
旦那様はかつてご自分の母親である老子爵夫人に援助していました。老子爵夫人は夫の老子爵に内緒で私を使って三度援助を求める手紙を渡しに行かせたのです。
旦那様は仕事で家にはおらず、手紙は留守番のヤンさんに渡しました。
『必ず渡すから、これはお駄賃』と言ってキャンディをくれたのを覚えています。
三度目にお嬢様に出会って家出を食い止めたのですが、ヤンさんの声で身を隠しました。お金の無心に来ているのをお嬢様に知られるのが恥ずかしかったのです。後でこっそりヤンさんに手紙を渡しました。
その三度目にアニーが事故に合い、私は謂れの無い折檻を受けました。老夫人と母が止めてくれなければ私は死んでいたでしょう。
『平民から金なんぞ借りるなみっともない!』
老子爵に援助もバレて、以降は旦那様との接触は禁じられました。老子爵が矜持を捨てて旦那様に助けを求めた時には遅過ぎたのです。破産して何もかも失い、見下げていた平民にまで落ちたのですから。
こちらでアニーと共にお世話になると決まった時、これからは自分の人生を大事に生きていこうと決心しました。本当に子爵家の身内だからとお嬢様達を恨む気持ちなど無かったのです。
旦那様は優しい方ですが商売人です。私が使い物になるか試していました。
最初にこちらへの婿入りを打診された時、お受けすると答えたら失望されたでしょう。そんな野心もお嬢様への下心も無いと証明しなければなりませんでした。
ここに来た日、それを教えてくれたのはヤンさんでした。
『旦那様の好意に甘え過ぎないようにね。お嬢様とは一定の距離を置くように』
なので細心の注意を払ってきたつもりだったのにカミラを見た時に何もかも忘れて殺意が沸きました。
本来ならお嬢様をナイフで傷つけた時に追い出されるのが当然だったのですが、お嬢様が庇ってくれたので残ることが出来ました。そのうえ母の毒殺を証明してくれたのです。
母の仇を取ることが出来ましたが、反対にお嬢様を傷つけることになってしまいました。学園で『犯罪者の身内』と心無い噂を立てられ辛い目に合っています。
その噂を立てた本人マリフル嬢との縁談など虫唾が走ります。
男爵の話だとお嬢様を送り迎えする私に興味を持ったそうですがきっぱりとお断りして正解でした。男爵に利用されるのも真っ平です。あの男は兄嫁であった母に愛人になるよう強要し、断った母を追い出したクズです。
お嬢様が留学するとドナモンド伯爵家と伯爵家との癒着を狙ったシルオート男爵家は旦那様と奥様からそれなりの報復を受けるでしょう。噂の元凶である私も去って、お嬢様は心置きなく卒業に集中できるはずです。
こんな私でも何とか旦那様には認められたみたいです。
いつか旦那様の事業を受け継ぐお嬢様の力になれるよう『ゴードン氏の元で仕事に励みます』と旦那様に誓うと『しっかりとやって欲しい』と答えられました。
最後に『重要な仕事を任せたいのだが引き受けてくれるか』と真剣な顔で言われました。
『なんでもお引き受けします』
初めて任せられた重要な仕事をきちんとやり遂げてみせます。お嬢様の為に。
それと明日からはもうお嬢様の送り迎えの必要はないと。
ゴードン氏は王都の商業地区で仕事をしているので私はここを離れることになります。お嬢様を送り迎えという私の細やかな幸せがなくなるのは寂しい限りです。
小さかったお嬢様が私を覚えてくれていたことには胸が熱くなりました。私も辛い子爵家の生活の中で時々思い出していたのです『あの子は新しいお母さんと仲良くなったかな』と。
旦那様はかつてご自分の母親である老子爵夫人に援助していました。老子爵夫人は夫の老子爵に内緒で私を使って三度援助を求める手紙を渡しに行かせたのです。
旦那様は仕事で家にはおらず、手紙は留守番のヤンさんに渡しました。
『必ず渡すから、これはお駄賃』と言ってキャンディをくれたのを覚えています。
三度目にお嬢様に出会って家出を食い止めたのですが、ヤンさんの声で身を隠しました。お金の無心に来ているのをお嬢様に知られるのが恥ずかしかったのです。後でこっそりヤンさんに手紙を渡しました。
その三度目にアニーが事故に合い、私は謂れの無い折檻を受けました。老夫人と母が止めてくれなければ私は死んでいたでしょう。
『平民から金なんぞ借りるなみっともない!』
老子爵に援助もバレて、以降は旦那様との接触は禁じられました。老子爵が矜持を捨てて旦那様に助けを求めた時には遅過ぎたのです。破産して何もかも失い、見下げていた平民にまで落ちたのですから。
こちらでアニーと共にお世話になると決まった時、これからは自分の人生を大事に生きていこうと決心しました。本当に子爵家の身内だからとお嬢様達を恨む気持ちなど無かったのです。
旦那様は優しい方ですが商売人です。私が使い物になるか試していました。
最初にこちらへの婿入りを打診された時、お受けすると答えたら失望されたでしょう。そんな野心もお嬢様への下心も無いと証明しなければなりませんでした。
ここに来た日、それを教えてくれたのはヤンさんでした。
『旦那様の好意に甘え過ぎないようにね。お嬢様とは一定の距離を置くように』
なので細心の注意を払ってきたつもりだったのにカミラを見た時に何もかも忘れて殺意が沸きました。
本来ならお嬢様をナイフで傷つけた時に追い出されるのが当然だったのですが、お嬢様が庇ってくれたので残ることが出来ました。そのうえ母の毒殺を証明してくれたのです。
母の仇を取ることが出来ましたが、反対にお嬢様を傷つけることになってしまいました。学園で『犯罪者の身内』と心無い噂を立てられ辛い目に合っています。
その噂を立てた本人マリフル嬢との縁談など虫唾が走ります。
男爵の話だとお嬢様を送り迎えする私に興味を持ったそうですがきっぱりとお断りして正解でした。男爵に利用されるのも真っ平です。あの男は兄嫁であった母に愛人になるよう強要し、断った母を追い出したクズです。
お嬢様が留学するとドナモンド伯爵家と伯爵家との癒着を狙ったシルオート男爵家は旦那様と奥様からそれなりの報復を受けるでしょう。噂の元凶である私も去って、お嬢様は心置きなく卒業に集中できるはずです。
こんな私でも何とか旦那様には認められたみたいです。
いつか旦那様の事業を受け継ぐお嬢様の力になれるよう『ゴードン氏の元で仕事に励みます』と旦那様に誓うと『しっかりとやって欲しい』と答えられました。
最後に『重要な仕事を任せたいのだが引き受けてくれるか』と真剣な顔で言われました。
『なんでもお引き受けします』
初めて任せられた重要な仕事をきちんとやり遂げてみせます。お嬢様の為に。
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