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7 ヘレンと再会
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宿に移ると言っても先生とミリアンさんは、女の子の一人暮らしは心配だから塔で暮らせばいいと言ってくれた。
正直、宿暮らしは不安だったので非常にありがたい。生活費を受け取ってもらうのを条件に滞在させて貰うことにした。
翌日、ミリアンさんに塔の3階に連れて行かれた。不思議な空間で空中庭園といった場所。
「ここは魔法の障壁が張られているので、自由に魔法訓練が出来ます。師匠に代わって僕が指導しますね」
「宜しくお願いします」
「得意なのは土魔法ですか。特待生なるには巨大ゴーレムでも作りましょうか」
「はい、ゴーレムは人型から恐竜まで作れます!」
「人型?それを作ってみて下さい」
私はミリアンさんに似たゴーレムを作り出してみせた。
「面白いですね!いろいろ作ってみましょうか」
「はい!」
恐竜ティラノサウルスはミリアンさんが大喜びしてくれた。その後は更に上級の土魔法や初球の風魔法を教わった。オーハン先生のように丁寧に教えてくれて、私は直ぐに風魔法を習得していった。
*
オーハン先生の塔に居候しながら、図書館に通って過去問題を閲覧しながら猛勉強を始めた。一番苦労するのが常識問題で、この異世界では前世の常識を覆して覚えないといけなかった。
塔に来て1週間ほど経つと突然ヘレンが塔を訪ねて来て、私を連れ戻すと喚き散らした。
バレンシアが消えて自分の居場所が無くなるのを懸念したのだろう。
「家出なんて、よくも私に恥をかかせてくれたわね!屋敷に戻して躾をし直してやるわ!」
「また鞭で殴ったり針で刺しますか?虐待は犯罪ですよ?」
「な、なんて生意気な。お前が魔法学校など入れるはずないでしょう!戻って大人しく教育を受けなさい」
「ヘレン叔母様、私はもう馬鹿のふりをするのはウンザリです。二度と私の前に現れないで!」
ヘレンの体が怒りで熱くなり、体から魔力が溢れた。
これはいけない焼き殺されるなと思ったら────
ザザーッ────! 私の隣でミリアンさんが魔法を放った。
ヘレンは頭から水を被ってキョトンとしている。
その顔がバレンシアに似ている気がして悲しい。
「な!な!何を!」
「お帰り下さい。シアさんはこちらで大切にお預かりします」
「このままでは済まさないわ!バレンシア、試験に落ちて惨めな姿で戻ってくるといい。楽しみだわ!」
キーキー言いながら水浸しのままヘレンは帰って行った。
「助けて頂いて有難うございました」
「いえ、火山のような人ですね。水をかけちゃって、危険でしたか?」
「水蒸気爆発を起こしたら塔が吹っ飛んだかも」
「あはは、あの人はシアさんには全く必要ない。反面教師です」
ミリアンさんが居てくれたのもあるが、もうヘレンは怖くなかった。
「絶対に特待生になります。努力だけは自信あるんです」
「その意気です。頑張って下さい」
***
雪が舞い始めて、図書館に来る人も少なくなってきた。間もなく図書館は春まで冬期休暇に入り閉館だ。
同じく魔法学校も冬期休暇に入り、特待生試験が始まる。過去問題を見る限り落ちる気はしない。けれど運のバロメータが低い私には、何が起こるか分からず不安だ。
なんせ前世はめっちゃ貧乏な家に生まれ、6人きょうだいの4番目で自分の居場所を獲得するのに必死だった。高校を卒業後就職して直ぐに倒産。次はブラック企業で過労死(多分)。
そもそも、バレンシアの為に今は頑張っている。その結果、私には何が残るのか。
消えてしまったバレンシア。
面倒くさがり屋のお姫様の絵本を思い出す。
魔女に鏡を割られて、あのお姫様はどうなったんだろう。
「特待生の試験を受けるのか?」
虚空を見つめていると、いきなり後ろから声が聞こえた。
「はい」
「今年は志願者が多いようだ。頑張ってね」
聞いた覚えのある声だった。
その人は鏡のように光沢のある銀の髪にルビー色の目をした美しい男性で、服装からして高貴な方に違いない。
離れた場所には護衛、従者も控えている。
「有難うございます。頑張ります」
「・・・君、名前は?」
「・・・シアと申します」
「シア?」
何だろう、背筋がゾクゾクして既視感が・・・この人は私を<鑑定>している?
「あ、あの・・・」
「失礼した。また魔法学校で会おうね、シア」
<鑑定>で乙女の秘密を覗くなんて失礼なイケメン!誰だか知らないが要注意だ。
正直、宿暮らしは不安だったので非常にありがたい。生活費を受け取ってもらうのを条件に滞在させて貰うことにした。
翌日、ミリアンさんに塔の3階に連れて行かれた。不思議な空間で空中庭園といった場所。
「ここは魔法の障壁が張られているので、自由に魔法訓練が出来ます。師匠に代わって僕が指導しますね」
「宜しくお願いします」
「得意なのは土魔法ですか。特待生なるには巨大ゴーレムでも作りましょうか」
「はい、ゴーレムは人型から恐竜まで作れます!」
「人型?それを作ってみて下さい」
私はミリアンさんに似たゴーレムを作り出してみせた。
「面白いですね!いろいろ作ってみましょうか」
「はい!」
恐竜ティラノサウルスはミリアンさんが大喜びしてくれた。その後は更に上級の土魔法や初球の風魔法を教わった。オーハン先生のように丁寧に教えてくれて、私は直ぐに風魔法を習得していった。
*
オーハン先生の塔に居候しながら、図書館に通って過去問題を閲覧しながら猛勉強を始めた。一番苦労するのが常識問題で、この異世界では前世の常識を覆して覚えないといけなかった。
塔に来て1週間ほど経つと突然ヘレンが塔を訪ねて来て、私を連れ戻すと喚き散らした。
バレンシアが消えて自分の居場所が無くなるのを懸念したのだろう。
「家出なんて、よくも私に恥をかかせてくれたわね!屋敷に戻して躾をし直してやるわ!」
「また鞭で殴ったり針で刺しますか?虐待は犯罪ですよ?」
「な、なんて生意気な。お前が魔法学校など入れるはずないでしょう!戻って大人しく教育を受けなさい」
「ヘレン叔母様、私はもう馬鹿のふりをするのはウンザリです。二度と私の前に現れないで!」
ヘレンの体が怒りで熱くなり、体から魔力が溢れた。
これはいけない焼き殺されるなと思ったら────
ザザーッ────! 私の隣でミリアンさんが魔法を放った。
ヘレンは頭から水を被ってキョトンとしている。
その顔がバレンシアに似ている気がして悲しい。
「な!な!何を!」
「お帰り下さい。シアさんはこちらで大切にお預かりします」
「このままでは済まさないわ!バレンシア、試験に落ちて惨めな姿で戻ってくるといい。楽しみだわ!」
キーキー言いながら水浸しのままヘレンは帰って行った。
「助けて頂いて有難うございました」
「いえ、火山のような人ですね。水をかけちゃって、危険でしたか?」
「水蒸気爆発を起こしたら塔が吹っ飛んだかも」
「あはは、あの人はシアさんには全く必要ない。反面教師です」
ミリアンさんが居てくれたのもあるが、もうヘレンは怖くなかった。
「絶対に特待生になります。努力だけは自信あるんです」
「その意気です。頑張って下さい」
***
雪が舞い始めて、図書館に来る人も少なくなってきた。間もなく図書館は春まで冬期休暇に入り閉館だ。
同じく魔法学校も冬期休暇に入り、特待生試験が始まる。過去問題を見る限り落ちる気はしない。けれど運のバロメータが低い私には、何が起こるか分からず不安だ。
なんせ前世はめっちゃ貧乏な家に生まれ、6人きょうだいの4番目で自分の居場所を獲得するのに必死だった。高校を卒業後就職して直ぐに倒産。次はブラック企業で過労死(多分)。
そもそも、バレンシアの為に今は頑張っている。その結果、私には何が残るのか。
消えてしまったバレンシア。
面倒くさがり屋のお姫様の絵本を思い出す。
魔女に鏡を割られて、あのお姫様はどうなったんだろう。
「特待生の試験を受けるのか?」
虚空を見つめていると、いきなり後ろから声が聞こえた。
「はい」
「今年は志願者が多いようだ。頑張ってね」
聞いた覚えのある声だった。
その人は鏡のように光沢のある銀の髪にルビー色の目をした美しい男性で、服装からして高貴な方に違いない。
離れた場所には護衛、従者も控えている。
「有難うございます。頑張ります」
「・・・君、名前は?」
「・・・シアと申します」
「シア?」
何だろう、背筋がゾクゾクして既視感が・・・この人は私を<鑑定>している?
「あ、あの・・・」
「失礼した。また魔法学校で会おうね、シア」
<鑑定>で乙女の秘密を覗くなんて失礼なイケメン!誰だか知らないが要注意だ。
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