【完結】ツンデレ黒豹獣人の溺愛。「あんた、私のこと好きだったんだ?!」

ミカン♬

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12 キスリー侯爵家

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 キスリー侯爵家に到着した。門番が何か言ってきたけど、無視して敷地に踏み込む。
 わらわら出てきた護衛兵も一瞬で片付けて、気づけば立派な屋敷の中。

「このような無礼は許されません!」
 エントランスで執事っぽい男が怒鳴る。けどアランが澄ました顔で「当主にお目通り願いたい」と告げた。

 少しして現れたのは父と同じくらいの年の男。侯爵家の次男、モートン。
「ギルド長自らとは、さて? どんな御用かな」

「受けた依頼の報告だ。老侯爵に会わせろ」

「父は臥せっている。お引き取りを──うっ!」
 アランのナイフが、モートンの首筋にぴたり。

「御託はいい。呼んでこい。死にたいか?」


 使用人たちがわーわー騒いでるのを横目に、私達は客室に落ち着いて、老侯爵の到着を待っていた。
 でも先に現れたのは、父の部下に引き連れられたビルド商会の面々。
 車椅子のダリオンに、奥さんのポーラ、そして会長まで勢揃いだった。

「情報ギルドの会長! これは一体どういうつもりだ! こんな横暴は許されんぞ!」
 入ってくるなり、商会会長が父に食ってかかる。

「お前の娘が、ダリオンの捜索依頼を出したんだ。その報告もあってな」

「必要ないわ! 夫は見つかったの。もう終わりよ!」
 ポーラが怒鳴る。

「アリー! 侯爵家に逆らって無事でいられると思うな!」
「ごみくず詐欺師は黙ってなさい。あんたの始末は後で私がやるから」
 ピッチフォークを向けて私は言い放った。

「な、なにを……」
 ダリオンは口をパクパクさせて黙り込んだ。
 ……どうしてこんな男に恋してたんだろう。ほんとにもう、大嫌い。

「貴様が俺の娘を騙したことは承知している。覚悟しろ」
 父が低く言い放つ。その瞬間、場の空気が凍りつき、ダリオンは黙って背を丸めた。

 ああそうか。私が情報ギルド長の娘だって、あいつ最近知ったんだ。
 取るに足りない町娘だと思って四年も騙し続けた。全く馬鹿にしてくれたもんだ。

 そこへ杖をついたキスリー老侯爵がようやく現れ、全員が揃った。

「報告はモートンから受けている。今さら何の報告かね?」
 老侯爵がソファに腰を下ろし、静かに問う。

「たくさんある。順番に話そう。ルッツ、お前が説明しろ」
 父がファイルを差し出す。

「は? なんで俺が……そういうのはアランの役だろう……」
 文句を言いながらも、ルッツは渋々報告書を開いた。

「長男ミハイルは獣人のケイトと駆け落ち後、行方不明。当ギルドが捜索した結果、二人の死亡を確認」

「やはり……死亡していたのか。奇跡的にダリオンだけが生き残ったのだな」
 老侯爵の目が潤む。

「お爺様、泣かないで下さい。俺は……」
「チッ、茶番はいい。続けるぞ」
 ルッツがあっさり遮る。

「残された遺児は、ケイトの友人夫妻に預けられていた。それがダリオン──というのがモートンの報告なんだな」
 ポンポンとルッツは報告書を手で軽く叩いた。

「そうだ!」
 ダリオンが拳を振り上げる。
「俺こそがミハイルの遺児で、侯爵家の正当な跡継ぎだ!」

「はあ? あんたが?」
「チンピラの貴様が、そう報告しただろう! なあ、ポーラ?」
「そうよ! 私が侯爵夫人なのよ!」

 モートンが鼻で笑った。
「甥っ子ダリオンはタマなしだ。跡継ぎは無理だ」
「叔父上だって子どもはいないじゃないか!」
「親戚筋から養子を迎える。お前は用済みだ。消えろ!」

 言い争う二人。そこでルッツがパンッと手を叩いた。

「へぇ、仲間割れかよ。ああそうか。欲張りなビルド商会が侯爵家の座まで狙ったんだな。ダリオンはそのせいでタマ取られ……いや、殺されかけた。だよな、モートンさん」

「チンピラは黙れ。兄ミハイルが死んだ報告は確かに受けた。これ以上は身内の問題だ。帰れ」

 ルッツが派手な花柄シャツを着崩しているから、完全にチンピラ扱い。……ちょっとむかつく。
 父みたいにスーツを着こなせば、ダリオンなんかよりずっと素敵なのに。


「お前たち、いったい何を争っているんだ?」
 老侯爵が眉をひそめる。

「老侯、このチンピラの顔に見覚えはないか?」
 父が突然ルッツを指差した。

「……会った覚えはないが」
 じっと見つめて、ぽつり。
「似ている……」

「当然だ。こいつがミハイルの遺児だ。俺がずっと預かっていた」

「えええええーーーっ!」
 叫んだのは私。だって、嘘みたいでしょ!?

「嘘だ! 遺児は俺だ!」
「そうよ、指輪が証拠よ!」
「父上、騙されないでください!」
「いや、孫はダリオンなのでは……?」
 部屋中に声が飛び交ってカオス状態。

「うるせえ! ボスが報告中だ、黙れ!」
 ルッツが一喝。……なんか、格好いい……。
 でも彼が本物の遺児? ──全然信じられない。

「間違いなくこのルッツがミハイルの遺児だ。あの指輪は、ルッツが幼い頃にビルド商会に売られたもの。ダリオンたちはそれを悪用して侯爵家を乗っ取ろうとした」
 父の声は確信に満ちている。

「た、確かに……ミハイルに似てはいるが……」
 老侯爵の目が揺れる。

 まあ、チンピラみたいな孫にちょっとガッカリだろうけど、これだけは言いたい。
「ルッツはダリオンの数千倍イイ男よ!」

「……はあ、俺はもういいよな?」
 ──ルッツ、話題の中心人物なのにもう退場するの? ほんと自由すぎる。


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