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13 顛末 1
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父の報告が続く。
「十年以上前、老侯の依頼で調査してルッツを見つけた。だが報告はしなかった。報告すればルッツの命が危なかったからだ。──ミハイルを殺したのはモートン。ダリオンを襲ったのも同じだ」
私は息をのむ。
ダリオンは黙って俯いて、唇を噛み締めていた。
彼も犯人が誰なのか、もうわかっていたようだ。
「ギルドを襲撃、放火したのも……モートンよね?」
「そうだ。ギルドが侯爵家の内情を掴んでいるのを恐れたんだ」
「違う……でたらめだ……」
「モートン。俺が沈黙し続けたのは侯爵家を恐れたからじゃない。ルッツを守ったからだ」
胸が熱くなった。
「……そっか」
モートンとダリオン、それにビルド商会。三者は結託して老侯爵を欺いたんだ。
モートンは跡継ぎなし。侯爵家を発展させる器量もなし。結局、その程度の人。
だから老侯爵はミハイルを諦めきれず、探し続けた。
不満を抱くモートンにビルド商会が持ち込んだのが、ミハイルの指輪。
相談してダリオンを遺児の替え玉に仕立て上げた。
でもそこで止まればよかったのに、欲を出したビルド商会は侯爵家乗っ取りまで企んだ。
ダリオンを当主にしようとしたのだ。そのせいでモートンとの同盟は崩れて、ダリオンが狙われた。
そして──私。
「もし詐欺で訴えれば、ダリオンの身元が調べられて替え玉がバレる。だから……私も狙われたんだ」
「嘘を言うな! どこに証拠がある!」
モートンが怒鳴った瞬間、黒い影が飛んだ。
黒豹がモートンを床に叩きつける。
すかさずアランがナイフを首元に押し当て、囁いた。
「証拠なんて必要ないのですよ。お望みならば、あなたの体に尋ねましょうか?」
「まだ殺すなよ。聞きたいことは山ほどある。ギルド本部を燃やした責任も取らせるからな」
父の命令に、アランはうなずいて仲間にモートンを縛らせた。
黒豹の姿のルッツが、すっと私の足元に来た。
「……もしかして、私のために怒ってくれた?」
抱きしめると、彼は喉を鳴らした。
以前のファルと同じ仕草。
でも、今ここにいるのはルッツ。
──しかも、私のことは絶対好きにならないって、言った。
彼には恋人がいる。
ちょっとだけ嫉妬してしまった。
「モートン、事実なのか? ミハイルを殺したのか? ダリオンは偽者なのか?」
老侯爵の震える声。悲しみに潰されそうな声だった。
──この人、悪人じゃない。でも……ミハイルさんを追い出したのは、この人自身。
「間違いない。放火は死罪だ。ビルド商会のキスリー家乗っ取りも未遂ではあるが、重罪だ」
「……ぁあ、なんということだ」
ルッツのお爺さんは頭を抱えて唸いた。
その時だった。
ダリオンが急に、私に向かって叫んだ。
「アリー! お願いだ、俺は悪気はなかったんだ! 君から父上に言ってくれ、助けてくれって!」
「無理」
私は冷たく言い返した。
「大店の婿殿で満足していれば良かったのに。乗っ取りなんて、馬鹿な人」
「違うんだ! 俺は王都で、お前のために家を買う金が欲しかっただけなんだ! なあ、アリー、やり直そう!」
「なに言ってるのよ!」
ポーラが怒鳴って、ダリオンの車椅子をガタガタ揺らす。
「うるさい! 俺は最初から替え玉なんて反対だったんだ!」
「この卑怯者!」
掴み合いの夫婦喧嘩が始まって、再びこの場はカオス。見ていられない……。
「夫婦で罪を償いなさい。……あんたを殴ってやろうと思ったけど、その気も失せたわ。でも、結婚詐欺の件は訴える。覚悟しなさい」
「俺を四年も待ってくれたじゃないか! ポーラと別れて、これからはアリーだけを愛する、誓うよ!」
「……はぁ?」
なんて安っぽい愛の誓い。
「「ふざけんな!!」」
私とルッツの声が、ぴったり重なった。
次の瞬間、ルッツの拳がダリオンの顔面をとらえる。
包帯がみるみる赤く染まって、ダリオンは呻いた。
「ぶっ殺してやる!」
ルッツがダリオンの胸倉を掴み、車椅子から引きずり出す。
「な、なんだよ……アリー、助けてくれよ……」
「まだ言ってる。……これで決別よ!」
私はピッチフォークで、ダリオンのお尻を突いた。
「ぐはっ!」
情けない叫び。
すぐに私はポーラに向き直る。
「コイツと組んで私を騙したわよね? 認めなさい!」
「そうよ! ダリオンはあんたなんか全然好きじゃなかったわ! 騙されたあんたが悪いのよ!」
「いつまでも私を見くびらないで! この、くず夫婦!」
ピッチフォークを突きつけると、ポーラは悲鳴を上げて尻もちをついた。
すると、ずっと黙ってたビルド商会の会長が、父に向かって叫んだ。
「やり過ぎだ! 商会ギルドを敵に回すことになるぞ! 落ち着いて話し合おう!」
でも、父は一歩も引かない。
「はっ。俺がなぜ“裏社会のボス”と呼ばれているか、知らんわけでもあるまい。そしてこのアリーは、この俺の娘だ」
その言葉に、会長の顔がみるみる青ざめる。
両手を上げて、降参するみたいに後ずさった。
その隙に、ルッツの拳がダリオンの脇腹に叩き込まれた。
ダリオンはそのまま気絶。
けれどルッツは止まらない。
次はモートンに殴りかかる。
「これは俺たち親子の痛みだ! そして……黒豹たち、アリーの痛みだ!」
拳が何度も落ちて、モートンは床に崩れた。
──ルッツは、ずっと待ってたんだ。この瞬間を。
最後に父が告げた。
「モートン、いずれお前だけを裏で始末するつもりだった。だがおまえはアリーにまで手を出した。侯爵家はもう終わりだ」
「十年以上前、老侯の依頼で調査してルッツを見つけた。だが報告はしなかった。報告すればルッツの命が危なかったからだ。──ミハイルを殺したのはモートン。ダリオンを襲ったのも同じだ」
私は息をのむ。
ダリオンは黙って俯いて、唇を噛み締めていた。
彼も犯人が誰なのか、もうわかっていたようだ。
「ギルドを襲撃、放火したのも……モートンよね?」
「そうだ。ギルドが侯爵家の内情を掴んでいるのを恐れたんだ」
「違う……でたらめだ……」
「モートン。俺が沈黙し続けたのは侯爵家を恐れたからじゃない。ルッツを守ったからだ」
胸が熱くなった。
「……そっか」
モートンとダリオン、それにビルド商会。三者は結託して老侯爵を欺いたんだ。
モートンは跡継ぎなし。侯爵家を発展させる器量もなし。結局、その程度の人。
だから老侯爵はミハイルを諦めきれず、探し続けた。
不満を抱くモートンにビルド商会が持ち込んだのが、ミハイルの指輪。
相談してダリオンを遺児の替え玉に仕立て上げた。
でもそこで止まればよかったのに、欲を出したビルド商会は侯爵家乗っ取りまで企んだ。
ダリオンを当主にしようとしたのだ。そのせいでモートンとの同盟は崩れて、ダリオンが狙われた。
そして──私。
「もし詐欺で訴えれば、ダリオンの身元が調べられて替え玉がバレる。だから……私も狙われたんだ」
「嘘を言うな! どこに証拠がある!」
モートンが怒鳴った瞬間、黒い影が飛んだ。
黒豹がモートンを床に叩きつける。
すかさずアランがナイフを首元に押し当て、囁いた。
「証拠なんて必要ないのですよ。お望みならば、あなたの体に尋ねましょうか?」
「まだ殺すなよ。聞きたいことは山ほどある。ギルド本部を燃やした責任も取らせるからな」
父の命令に、アランはうなずいて仲間にモートンを縛らせた。
黒豹の姿のルッツが、すっと私の足元に来た。
「……もしかして、私のために怒ってくれた?」
抱きしめると、彼は喉を鳴らした。
以前のファルと同じ仕草。
でも、今ここにいるのはルッツ。
──しかも、私のことは絶対好きにならないって、言った。
彼には恋人がいる。
ちょっとだけ嫉妬してしまった。
「モートン、事実なのか? ミハイルを殺したのか? ダリオンは偽者なのか?」
老侯爵の震える声。悲しみに潰されそうな声だった。
──この人、悪人じゃない。でも……ミハイルさんを追い出したのは、この人自身。
「間違いない。放火は死罪だ。ビルド商会のキスリー家乗っ取りも未遂ではあるが、重罪だ」
「……ぁあ、なんということだ」
ルッツのお爺さんは頭を抱えて唸いた。
その時だった。
ダリオンが急に、私に向かって叫んだ。
「アリー! お願いだ、俺は悪気はなかったんだ! 君から父上に言ってくれ、助けてくれって!」
「無理」
私は冷たく言い返した。
「大店の婿殿で満足していれば良かったのに。乗っ取りなんて、馬鹿な人」
「違うんだ! 俺は王都で、お前のために家を買う金が欲しかっただけなんだ! なあ、アリー、やり直そう!」
「なに言ってるのよ!」
ポーラが怒鳴って、ダリオンの車椅子をガタガタ揺らす。
「うるさい! 俺は最初から替え玉なんて反対だったんだ!」
「この卑怯者!」
掴み合いの夫婦喧嘩が始まって、再びこの場はカオス。見ていられない……。
「夫婦で罪を償いなさい。……あんたを殴ってやろうと思ったけど、その気も失せたわ。でも、結婚詐欺の件は訴える。覚悟しなさい」
「俺を四年も待ってくれたじゃないか! ポーラと別れて、これからはアリーだけを愛する、誓うよ!」
「……はぁ?」
なんて安っぽい愛の誓い。
「「ふざけんな!!」」
私とルッツの声が、ぴったり重なった。
次の瞬間、ルッツの拳がダリオンの顔面をとらえる。
包帯がみるみる赤く染まって、ダリオンは呻いた。
「ぶっ殺してやる!」
ルッツがダリオンの胸倉を掴み、車椅子から引きずり出す。
「な、なんだよ……アリー、助けてくれよ……」
「まだ言ってる。……これで決別よ!」
私はピッチフォークで、ダリオンのお尻を突いた。
「ぐはっ!」
情けない叫び。
すぐに私はポーラに向き直る。
「コイツと組んで私を騙したわよね? 認めなさい!」
「そうよ! ダリオンはあんたなんか全然好きじゃなかったわ! 騙されたあんたが悪いのよ!」
「いつまでも私を見くびらないで! この、くず夫婦!」
ピッチフォークを突きつけると、ポーラは悲鳴を上げて尻もちをついた。
すると、ずっと黙ってたビルド商会の会長が、父に向かって叫んだ。
「やり過ぎだ! 商会ギルドを敵に回すことになるぞ! 落ち着いて話し合おう!」
でも、父は一歩も引かない。
「はっ。俺がなぜ“裏社会のボス”と呼ばれているか、知らんわけでもあるまい。そしてこのアリーは、この俺の娘だ」
その言葉に、会長の顔がみるみる青ざめる。
両手を上げて、降参するみたいに後ずさった。
その隙に、ルッツの拳がダリオンの脇腹に叩き込まれた。
ダリオンはそのまま気絶。
けれどルッツは止まらない。
次はモートンに殴りかかる。
「これは俺たち親子の痛みだ! そして……黒豹たち、アリーの痛みだ!」
拳が何度も落ちて、モートンは床に崩れた。
──ルッツは、ずっと待ってたんだ。この瞬間を。
最後に父が告げた。
「モートン、いずれお前だけを裏で始末するつもりだった。だがおまえはアリーにまで手を出した。侯爵家はもう終わりだ」
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