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第3章 魔導要塞の攻防
第46話 ★部隊編成
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フォルセル王国から魔術師集団が入国してから数週間が経った。
その間、バルティス王国の騎士団と魔術師集団の双方の実力の把握や戦略検討などが詰められていた。
10人の魔女たちの繰り出す黒魔術はバルティス王国の面々を驚かすのに充分なものであった。それぞれ二人の術師が地水火風及び闇属性の魔術を操った。中でも筆頭の魔女・ジャンヌは、バルティス王国の面々を震撼させた。
炎と光の魔術師。複数属性の魔術を操るというその能力、それだけでもバルティス王国の白魔術師たちの常識を覆すのに充分である。
演舞にて彼女は広域攻撃魔術・ファイアーエクスプロージョンを披露した。会場となったコロシアムの舞台で、彼女が放った火術は巨大な炎の塊を生み出し、10メートル四方を炎で覆い尽くした。
観覧席で見守っていたカーネル率いる聖騎士団、その他軍関係者の面持ちは神妙だ。
────使われたら対処できない
遠隔からの広範囲を対象とした灼熱の攻撃を目の当たりにし、彼らは思った。術の発動までに数十秒の詠唱があった。その時間にいかに間合いを詰め、術の行使を中断させるかがすべて。発動が間に合ってしまえば、その威力と効果範囲はすさまじく、耐えることはおろか回避することすらままならないだろう。
さらに光の魔術においては、バルティス王国の修道士たちを凌駕する治癒魔術の技術を披露することとなった。単純な効果の高さだけでなく、遠隔の相手にも治癒効果を発揮する、対象範囲内にいるものをすべてに治癒効果を発揮するなどだ。
観覧した修道士たちはみな一様に苦虫を噛み潰したような表情になった。彼らは自身の持つ白魔術を金科玉条として掲げてきたが、あろうことか禁術使いとして排斥の対象としてきた黒魔術師に自分らの専売特許である白魔術の分野で実力の差を見せつけられてしまったのだ。
「ペテンだ。恐らく事前に何かしらの仕込みをしていたに違いない。」
「そもそも、女が戦闘の技術を持ったところで、戦の何が分かるというのだ。」
ルドルフ大臣を中心とした一分の高級文官と修道士たちの集団の間からはそのような愚痴に近い罵声がちらほらと発せられている。
「ふん。見苦しいことこの上ない。これが我が国の屋台骨を支える人材の現実とは、余自身正直信じとうはないわ。」
そんな様子を遠巻きに眺め、暗い表情でウラジミール国王は嘆息する。
「特権に甘んじてきた我が国の修道会、官僚組織の付けが回ってきたということです。彼らがいかに蔑もうが、実力において我らが劣っているという現実は歪めようもない。今回の出来事はもちろん国運の一大事かもしれませんが、我が国の悪習に凝り固まった組織に風穴を開けるという意味においては僥倖といえるかもしれませんな。」
王の傍らで、宰相ジュリアスはそう進言した。特権階級が幅を利かす組織はやがて腐敗をきたす。そのツケは新興勢力の台頭と王朝の交代という形でもって清算されるのが歴史の常だ。現段階で組織の腐敗を排除できるきっかけを得られただけでも運が良い方だ、というのがジュリアスの捉え方であった。だがそれもこの国難を無事に切り抜けてこそである。
観覧席を驚かせ、拍手を浴びながら颯爽と退場するジャンヌ。演舞場から控えの間に向かう出入り口では従者を傍ら連れたカーネル将軍が待っていた。
「握手を求めてもよろしいですかな、ジャンヌ女史。素晴らしい魔術の技術の数々。頼もしい限りです。」
「評価いただき、ありがとうございます。残念ながら貴国においては禁忌の術とされているようで・・・、お目汚しはご容赦。」
握手を交わしながらカーネルは「とんでもない」と返した。
「貴殿らの魔術に対して、わが軍としては詠唱の成立前に術を中断させる以外に対処方法はないと、よく理解でき申した。威力、不可避性、いずれにおいても凄まじい。悔しいが一度術を使われれば、わが方にこれに耐えるすべはござらん。」
「ご謙遜を。それに私共の肉体は、このようにか弱きものにございますれば、貴殿らのように戦場の修羅場を切り拓く力は持ってはおりませぬ。」
「いや、であるからこそ、我らが精鋭が鉄壁の前衛を務めあげればよい。アロン島に何者がいるかは知らぬが、我らが鉄壁を築けばいかなる魔物もそなたらの詠唱を止めることはできんだろう!」
「・・・そのように、よく連携できればよろしいでしょうね。」
バルティス王国は必ずしも一枚岩とは言えないようだが、前線に赴く者たちの間では少しずつ信頼関係が築かれているようであった。
「・・・で、あたいに何の用だい?」
冒険者ギルドの事務室に一人の使者が人を訪ねて来ていた。呼ばれて来場した女傭兵のセラフィーナは、そうぶっきらぼうに声をかけて来客室の席に着座した。
「アロン島に潜入した経験を持つあんたにお願いしたいことがある。」
使者は宰相の花押が押された書簡を差し出し、そう返事をした。荒れくれ者が集う冒険者ギルド。貴族の世界とは無縁であるその社会にこのような使者が訪れるのは異例中の異例だ。若干の緊張をたたえながら、彼女は使者に話を続けるように促した。
──────────
リアムやリリカの魔術の描写に比べると、なんかしょぼく感じたかもしれませんが。そういうことです。
「俺らしょせんモグリの魔術師だからな。ちょっといろいろできるようになったからって自惚れは禁物だ。彼ら本場の魔術師が本気になったら、雑魚の俺たちは一瞬で消し飛ばされるに違いない!!(リアム談)」
その間、バルティス王国の騎士団と魔術師集団の双方の実力の把握や戦略検討などが詰められていた。
10人の魔女たちの繰り出す黒魔術はバルティス王国の面々を驚かすのに充分なものであった。それぞれ二人の術師が地水火風及び闇属性の魔術を操った。中でも筆頭の魔女・ジャンヌは、バルティス王国の面々を震撼させた。
炎と光の魔術師。複数属性の魔術を操るというその能力、それだけでもバルティス王国の白魔術師たちの常識を覆すのに充分である。
演舞にて彼女は広域攻撃魔術・ファイアーエクスプロージョンを披露した。会場となったコロシアムの舞台で、彼女が放った火術は巨大な炎の塊を生み出し、10メートル四方を炎で覆い尽くした。
観覧席で見守っていたカーネル率いる聖騎士団、その他軍関係者の面持ちは神妙だ。
────使われたら対処できない
遠隔からの広範囲を対象とした灼熱の攻撃を目の当たりにし、彼らは思った。術の発動までに数十秒の詠唱があった。その時間にいかに間合いを詰め、術の行使を中断させるかがすべて。発動が間に合ってしまえば、その威力と効果範囲はすさまじく、耐えることはおろか回避することすらままならないだろう。
さらに光の魔術においては、バルティス王国の修道士たちを凌駕する治癒魔術の技術を披露することとなった。単純な効果の高さだけでなく、遠隔の相手にも治癒効果を発揮する、対象範囲内にいるものをすべてに治癒効果を発揮するなどだ。
観覧した修道士たちはみな一様に苦虫を噛み潰したような表情になった。彼らは自身の持つ白魔術を金科玉条として掲げてきたが、あろうことか禁術使いとして排斥の対象としてきた黒魔術師に自分らの専売特許である白魔術の分野で実力の差を見せつけられてしまったのだ。
「ペテンだ。恐らく事前に何かしらの仕込みをしていたに違いない。」
「そもそも、女が戦闘の技術を持ったところで、戦の何が分かるというのだ。」
ルドルフ大臣を中心とした一分の高級文官と修道士たちの集団の間からはそのような愚痴に近い罵声がちらほらと発せられている。
「ふん。見苦しいことこの上ない。これが我が国の屋台骨を支える人材の現実とは、余自身正直信じとうはないわ。」
そんな様子を遠巻きに眺め、暗い表情でウラジミール国王は嘆息する。
「特権に甘んじてきた我が国の修道会、官僚組織の付けが回ってきたということです。彼らがいかに蔑もうが、実力において我らが劣っているという現実は歪めようもない。今回の出来事はもちろん国運の一大事かもしれませんが、我が国の悪習に凝り固まった組織に風穴を開けるという意味においては僥倖といえるかもしれませんな。」
王の傍らで、宰相ジュリアスはそう進言した。特権階級が幅を利かす組織はやがて腐敗をきたす。そのツケは新興勢力の台頭と王朝の交代という形でもって清算されるのが歴史の常だ。現段階で組織の腐敗を排除できるきっかけを得られただけでも運が良い方だ、というのがジュリアスの捉え方であった。だがそれもこの国難を無事に切り抜けてこそである。
観覧席を驚かせ、拍手を浴びながら颯爽と退場するジャンヌ。演舞場から控えの間に向かう出入り口では従者を傍ら連れたカーネル将軍が待っていた。
「握手を求めてもよろしいですかな、ジャンヌ女史。素晴らしい魔術の技術の数々。頼もしい限りです。」
「評価いただき、ありがとうございます。残念ながら貴国においては禁忌の術とされているようで・・・、お目汚しはご容赦。」
握手を交わしながらカーネルは「とんでもない」と返した。
「貴殿らの魔術に対して、わが軍としては詠唱の成立前に術を中断させる以外に対処方法はないと、よく理解でき申した。威力、不可避性、いずれにおいても凄まじい。悔しいが一度術を使われれば、わが方にこれに耐えるすべはござらん。」
「ご謙遜を。それに私共の肉体は、このようにか弱きものにございますれば、貴殿らのように戦場の修羅場を切り拓く力は持ってはおりませぬ。」
「いや、であるからこそ、我らが精鋭が鉄壁の前衛を務めあげればよい。アロン島に何者がいるかは知らぬが、我らが鉄壁を築けばいかなる魔物もそなたらの詠唱を止めることはできんだろう!」
「・・・そのように、よく連携できればよろしいでしょうね。」
バルティス王国は必ずしも一枚岩とは言えないようだが、前線に赴く者たちの間では少しずつ信頼関係が築かれているようであった。
「・・・で、あたいに何の用だい?」
冒険者ギルドの事務室に一人の使者が人を訪ねて来ていた。呼ばれて来場した女傭兵のセラフィーナは、そうぶっきらぼうに声をかけて来客室の席に着座した。
「アロン島に潜入した経験を持つあんたにお願いしたいことがある。」
使者は宰相の花押が押された書簡を差し出し、そう返事をした。荒れくれ者が集う冒険者ギルド。貴族の世界とは無縁であるその社会にこのような使者が訪れるのは異例中の異例だ。若干の緊張をたたえながら、彼女は使者に話を続けるように促した。
──────────
リアムやリリカの魔術の描写に比べると、なんかしょぼく感じたかもしれませんが。そういうことです。
「俺らしょせんモグリの魔術師だからな。ちょっといろいろできるようになったからって自惚れは禁物だ。彼ら本場の魔術師が本気になったら、雑魚の俺たちは一瞬で消し飛ばされるに違いない!!(リアム談)」
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