能力者は現在に

合宿？ 5

「なんで向かい合わせで膳が置かれるのよ…｣
並べられた膳を見て杏が言う

「別にいいじゃん、合宿と思われたんだろ」
箸をつまんで航が答える

「ま、まあいいわ」
そう言い、杏も席につく
「正座…苦手なのよね…」



部屋にはマッサージチェアが一つある。
そこを杏が占領していた。
「おい、どけよ」
航が杏を見て言う

「嫌よ、誰があんたなんかに」
目をつぶり、リラックスしている杏

「ふーん、いいんだ」
そう言うと、航は右手を杏の目に当てる
「目を開けろよ」

そう言われ杏が目を開ける
「嫌ああぁぁぁぁっ！！！」
そう言い杏は飛び退いた

その瞬間を逃さず、航は腰掛ける

「航…能力使ったのか…」
「一体何を見せたんだ？」

「大したことじゃねえよ、手にゴキブリが乗っているのを見せただけ」
手を振りながら航は答える

「おま…エグいな…」

「大丈夫、5秒だけにしといたから」

目を真っ赤にした杏が航を睨む
「最っ低っ！！」
そう言い、近づこうとする

「いいのか？また見せるぞ」
航はリラックスしながら答える

「ぐ…っ…」
泣きそうになりながら後ずさる

「いいよな、お前だけだもんな、他人に能力の効果を出せるの」

「そうか？」

「だって俺は自分だけが遅くなるし」
「杏は感情を変えられる。」
「由紀は死んだ人の記憶が入ってくる」

「まあ、そうかもな…」
そう言い、少し俯いた


「そろそろ寝ようか」
直人が明かりを暗くする

「さすがに一緒には寝ないわよね」

「なんだ、当たり前だろ」

二つある座敷にそれぞれ別れ、布団をひく

杏と由紀は話していた
「由紀ちゃん、好きな人いるー？」
コソコソと杏が尋ねる

「修学旅行ですか…」
「そうね、どうだろ」
素っ気なく由紀は答える

「直人だったり～？」
杏は笑いながら冗談で言う

「そうかもね…一緒に居ていいし」
少し顔を赤くさせながら答える

「えっ、嘘」
思いがけない反応に困る
「そ、そう…」


男子では
「聞こえてんだよ…」
直人は布団にもぐりながら呟く

「おやおや直人さん、赤くなっちゃって」
航も布団にもぐり、からかう

「うるさいな…」

「良かったじゃないですか」

「別に、んなわけねえだろ…」
コソコソと返す



杏と由紀も布団にもぐっていた
「杏は航が好きなんじゃないの」
「いっつも話してるじゃない」

「そんなんじゃないわよ…！」
「あいつムカつくんだし！」

「本当に…？」

「ほ、本当よ！」
そう言い杏は布団を飛び出した

そして航のいる布団を蹴飛ばし
「ほ、ほら！！」
と言った

「て…てめ、なにすんだ…」
不意を突かれた航は腹を抑えて言う

「うっさいわね！」
少し顔を赤らめ、返す

「お前…また幻視させるぞ」
手を伸ばしながら言う

「おい、やめろって…」
直人は航の手を掴む

「杏も、ちゃんと寝ろよ」

そう言い、見ると由紀と目が合った
二人とも頬を赤くし、俯いた


朝、なかなか由紀が起きない。
杏が揺らすが、反応はない

「少し待っておけばいいんじゃないか」
「朝食はまだだし」

数分後、由紀が目を覚ました

「お、起きたか、朝食…」
そう言い、固まった

「由紀ちゃんはだけてる！浴衣はだけてるから！」
慌てて杏が言う

気付いた由紀が布団で隠し
「きゃあぁ！」

「あんたら、見てんじゃ無いわよ！」
そう言い枕を投げつけた

「見てねえよ！」

「朝から騒がしい…」
目的を忘れた様に皆はくつろいでいる。
(まあ、少しはいいか)


朝、もう一度大浴場に入った由紀は喉まで浸かる
「昨日の、聞こえてたのかな…？」
そう言い、恥ずかしくなって湯船に潜った


「さて、行くか」
そう言い、旅館を出た
2人同時になる事も有りうる。
初めての集団行動だ