短編物語パンドラ 【百合】

わまり

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みゆりこ 15

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りこを見つけた。
フラフラになりながら走っている。
彼女は運動が得意ではない。

私と交代出来るだろうか?
1人を追うなら、私に目標を交代させれば…

「りこ!」
走る背中に呼び掛ける
「歩いてっ!」

りこが走りながら振り返る
目は真っ赤になっていた
「みーちゃん…」

「私が代わるから!そいつは1人しか追わないの!私が…私が走ってあなたが歩けばもしかしたら…」
黒い影に少し近付く

「だめっ!」
りこが走りながら言った
「近付かないで、みーちゃんはにげて!大丈夫…だから…!」
りこが目を擦った
「だから…はやくどっかいってよ!」
目にいっぱい涙をためて私を見た
恐怖した顔だった。
大丈夫なわけないじゃない…っ!

相手との距離はさほど変わってないように見えた。そこまで距離が縮むのは早くないのか…?

「早く、今なら距離が離せるから…!」
最後の言葉は小さくなっていた


「だからっ!」
りこに叫ぶ
「歩いてって、言ってるでしょ!!死に急がないでよっ!」

私はさっきよりも強く踏み込んだ。
喉が枯れて苦しい。
黒い影に近付いていく。

私が逃げるなんて思ってるの?りこはほんとに分かってないんだから。
ほんと、鈍感なんだよりこは。
好きな人を放っておくなんて、するわけ…

私に付いてこなくて、りこの方へ行ってしまうかもしれないが、このままではりこが死んでしまう。少しでも可能性があるなら賭けるしかない。

影へ近付いた。光を一切反射しないような、真っ黒な影。それが目前にあった。
そこで一気に速度を上げる。
影が目の前に来た。
そして追い越す…

影と並んだ瞬間、肩に感覚が無くなった様な感じがした。腕に氷の塊がくっ付いているようだ。あまりにも冷たくて悲鳴を上げる。肩から段々全身に広がってゆく。
寒い。今まで味わった事なんてない程の苦痛に顔を歪める

思わず転びそうになった。
意識が薄れていくようだったが、それを耐えて追い抜く。

目の前にりこの背中があった。精一杯手を伸ばしてりこに触れようとするが、まだ届かない。体力の限界で、これ以上走れない…
「りこ!」
呼び掛けると、僅かにスピードが遅くなった。それを見逃さず、最大限の力でりこの肩を掴んでそのまま右に押した。

りこが「うわぁぁ!」と言いながら転んで、斜面を滑った後木にぶつかって止まった。すぐに顔を上げる。
そして何をしたか理解し、目が見開かれた
「なにしてるの!逃げてって…言ったのにっ!!」

影は私の方へ来ている。
良かった、賭けに勝ったのだ。
見下ろすとりこが私に叫んでいた。
「私があなたを置いて逃げるって本気で思ってたの?」
そう答えて笑った。りこから遠ざかる
りこはまだ叫んでいたが、その声も聞こえなくなっていった。

影との距離が少しだが開いている。
りこがいない事に寂しさを感じたが、その感情を振り払う。
もっと一緒にいたかったな…

私はどこまで生きられるのかな。
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