短編物語パンドラ 【百合】

わまり

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弁明 14(回想)

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しかし今、きっと皆は私を疑ってる
いや、そんな気力もないかもしれない。
1人は壁にもたれかかり、1人は隅で毛布を被り、そして私は倉庫の扉から外の様子を伺っている。

晴天、何も無かったように空は微笑む。
しかしそれは苦しむ私達を見下し、何もせずに嘲っているようだった。

外には壁があるだけ。少しの隙間から瓦礫だらけの街が見える。
この工場で、この倉庫だけがほぼ被害が無い。未来の通りだ。
津波の威力は前の森林で弱まり、荒野の中に一つたっている小屋のような状態だ。

まだ余裕があった時、外に出てみた。
それは希望を無くす光景だった。
倉庫の両側は土砂で覆われ、土の壁が出来ていた。そこを登ると下が見えるが、そこからは広い景色に燃える街と倒れた木が見え、私達の場所に来るにはある程度物事が片付いてからになるだろう。
そもそも、ここに避難するなんて誰が思うのか。

前回私はここで救助された訳では無い。
ここの写真を見て決めただけなので、いつ救助が来るかなんてわからない。
浅い考えだった。

でも、またきっと私だけ生き残るのだ。
これは失敗する。そして私は死ねない。

私は知っている、私がいつも寝ている場所、タンクの下が安全だと。
あらかじめ、タンクの側面についているフタは剥がした。
両親は安全そうな場所については詳しく撮っていてくれたので、分かった。

2度目の地震が来るのは3月7日の午後4時20分、しかし時計は潰れてしまっていたので正確にはわからない。
最後に見た時計から、今が3月6日の午後3時辺りだろうと予想していた。

今からなら走ってどこかに行って逃げられるかもしれない。そう思ったが、被害は隣の県にも及び、そして安全とは言いきれない。

じっとここで地震を待つしかないのだ。
皆が助かる保証なんてない。でもここしかないんだ。他の避難所は二次災害で全て破壊され、そこにいた人はほぼ亡くなっている。

ごめん、ちっぽけな私1人が救えるのは、これくらいなんだ。
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