╣淫・呪・秘・転╠亡国の暗黒魔法師編

流転小石

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第4章 獣王国編2

第102話 親衛隊

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昼に王国の政務と、夜のゲレミオ(組合)の仕事をやり取りしながら各方面に報告等を管理するリカルドは、もはや国の中枢と言っても過言では無く、多方面から危険な場所への出入りを禁じられ護衛が付くようになっていた。

親衛隊長の護衛は親衛隊では無く王国の騎士で、新たに親衛隊を作る必要に迫られたリカルドは王国騎士団と教会関係者に信頼出来る人材の募集をしていた。

親衛隊の募集は、まず男性である事。
次に国王と王国に忠誠を誓う者。
最後に自信のある特技を持っている事だが、教会関係者の中から選考が始まった。


「俺にはお前以上のヤツが居るとは思えないから、誰だろうと不満が有る。だから選考はお前に一任する」


エルヴィーノはリカルドが一番だと言いながら面倒だから丸投げした。
親衛隊の最終選考に残ったのは三人で全員が真面目な教会関係者だ。

ブオはガッシリとした巨躯の頑固一徹タイプの武闘派で、ポヨォは小柄な男で几帳面でマメな性格だと書類には書いてあった。
ファイサンは”いわゆる色男”で一番普通の男だ。
全員が王国出身で身元の確かな者ばかりが集められた。
リカルドの研修をみっちり聞いたあとエルヴィーノと個人面談する事になった。


まず最初はブオだ。

王の執務室での面接だ。
「おおぉデカいなぁ」
「はっ身体だけが取り柄です」
なるほどと思い更に聞いた。

「おまえ、俺に望む事はあるか?」
「はっ国の平和です」
「下らん、そんな教会用語は使うな、お前の本心を聞かせろ!」
しばしの沈黙の後話し出すブオ。

「・・・私の力が何処まで通用するか陛下の胸をお借りしたいです」
エルヴィーノはニッコリと微笑んで答えた。

「だが、お前と俺とは戦い方が違うぞ? お前は見るからに剣や武術を使ったモノだろ? 俺は魔法だけだぜ?」
「ハッ王国最強のサガラド・エスクード(聖なる盾)をお使いになると聞き及んでおります」

(誰がそんな出鱈目をいっているんだろう)
「・・・誰が言ってんだ? そんな事」

「ハッ、私は直接ではありませんが、サンクタ・フェミナ(神聖女)様とマルソ様からだと人づてに聞きました」

(ああぁ確かにあの2人の前で見せたなぁ)

「それで? その魔法を打ち破りたいと? だが、お前の巨躯が体当たりしてきたら俺なんか吹き飛ばされるぞ」
「決してそのような事は無いはずです。何故ならばサガラド・エスクードは、重さに関係無く魔力の強さでガードしますので」

(知らなかった・・・他のエスクードも同じかな?) 

「そっそうか、では俺は防御すれば良い訳だな?」
「いえ、出来れば石のゴーレム100体を砕いた魔法と戦ってみたいです」

「・・・あのさ、そんな噂が出回ってるわけか?」
「決してデマでは無いと王宮や教会関係者の者は信じております」

「あのさ、ゴーレムだよ、石だぜ! スッゴイ硬いんだよ!」
「ハッ、サンクタ・フェミナ(神聖女)様が自慢げに話されたと、召使いから広がっているようです」

エルヴィーノは呆れていたが他にも無いか聞いてみた。
「この際だ、他にどんな噂があるのか全部言ってみろ」
「ハッ、私が聞き及んでいる事は・・・」

ロリと出会ってからの魔物退治? が全部知られていた。
流石に龍人の事は喋って無いようだが。
エルヴィーノは頭を抱えながら問題を先送りする。
「分かった、後の二人と面談した後で決めよう」


ポヨォと入れ替わり話し出す。

「わたくし聖魔法教会で修行途中ですが、陛下のお世話をさせて頂く為に志願したポヨォと申します」
「あぁ、よろしくなポヨォ」
「あ、ありがとうございます陛下」
「お前、俺に何を望む?」
「えっ!?」

突然の質問で頭が真っ白になったポヨォ。
黙ったまま固まった姿を見て助けてやる。

「まぁ今出ないなら構わない」
「もっ申し訳ございません」
膝を床につき、手と頭も床にひれ伏して小さくなるポヨォ。

「オイ!」
「ハッ如何なる処罰も謹んでお受けいたします」
「では、今後俺の許可無く”そのポーズ”で謝るのは禁止だ」
バッと顔を上げ立ち上がるポヨォ。

「お前は国王を見て俺を見ていないな。それはお前の心に壁が有るからだ。まずは己の壁を越えよ」
柄にも無く小説に書いてあった事を口走ってしまった。

「うおおぉぉ」
するとポヨォが号泣しだした。
ただただ泣いている。

「あぁ解ったから次の奴と代われ、俺の言葉を忘れるなよ」
泣きながら出て行くポヨォと、入って来た男は見るからに緊張しまくりのファイサンだ。



「初めまして、私は北の都市グリシナの出身で今回親衛隊に志願しましたファイサンと申します」
「あぁよろしく。一応確認だがファイサン、お前は女性の経験は有るよな?」

普通にカッコイイ青年だったので当然のように聞いたが意外な反応を示した。
「わわわたしは、まだ独身です!」

?? 真っ赤な顔で意味の分からない応えに聞こえたが瞬時に理解した。
(あぁなるほど教会の規律だな。リカルドもそうだったし)

「俺と行動すると誘惑が多いがお前は何日持つかな?」
笑顔で問いかけると「私は陛下の為なら一生女性とは縁を絶ちます」

(おいおい大それた事を言うなぁ。どこかの魔法剣士に聞かせたいセリフだぜ)
と自分の事は棚に上げて感心していた。

「まぁ一緒に行動すれば解る事だからな、楽しみにしてるよ」
どんな女に引っかかるのか楽しみになったエルヴィーノ。

「ハッ宜しくお願い致します」と答えるファイサン。
(どっちの意味にも取れるなぁ)
とクダラナイ事を考えながら「では先の2人を呼んでくれ」と指示されて三人で執務室にやって来た。



部屋に入るなりポヨォの顔を見たが先ほどとは違い目が輝いていた。
「三人とも合格だ!」

驚いた三人の1人が問いかけて来た。
「陛下! 何故私が合格なのでしょうか?」
「部屋に入るなりお前の目を見たからさ。最初とは違い輝いていたぞ」

クシャクシャの顔が真っ赤になり号泣しだすポヨォ。
「へいかぁ~一生ついて行きますぅ~」
(コイツ泣き上戸かな?)

「良く聴け3人よ、俺と行動を共にするならば、絶えず危険が付きまとう。お前たちがどれだけ修行してきたか解らないが、これから戦闘訓練を始める」

「これからですか! 準備しなくては」
「まて、良い事を教えよう。魔物はお前たちの準備を待ってはくれん。皆手を繋げ」
言われた通りにしたら、一瞬で周りの景色が変わった。

「「「こっここは!」」」

随分前にオークが集団で居た場所に転移したが説明などしない。

「良く聴け、俺に触れればお前たちの勝ち。お前たちが力尽きれば俺の勝ち。始めるぞ!」



そう告げると3人に分かるように魔素を放出して行った。
通常は魔素、魔力などは見える物では無いが、異常な程濃密で危険なエルヴィーノの魔素は冷気の様な冷たさと、身体の周りが歪んで見える風景で分かる。
しかし、それよりも足がすくんで動けない3人だった。
そんな事は無視して襲い掛かるエルヴィーノ。

ポヨォとファイサンには頭に”げんこつ”。ブオには腹に蹴りを入れようとしたが自分の足が痛くなりそうだったから寸止めして聞いた。

「何故戦わない? 防御はどうした?」
「あ、あの陛下、その闘気が凄すぎて足が言う事聞きません」
(闘気? 魔素のことか?)
ブオの情けない返事に仕方なく魔素の放出を止めて仕切り直す。

「じゃ、お前たちが掛ってこい。まずサガラド・エスクード(聖なる盾)を顕現させるから、どんな攻撃をしても構わん」

すると一斉に魔法を使いだした。
「お前たちの最大魔力で攻撃しろ! 」

ブオはフィロ・ディオス(神の刃)を、ポヨォはアルコ・サント(聖なる弓)で、ファイサンはアルコ・サントにフエゴ・マヒア(火の魔法)を付与している。

(なかなかやるなぁ)と感心しているとエルヴィーノ目掛けて一斉に飛んで来る。
が、突如現れた巨大なサガラド・エスクードに遮られてしまう。

「まっまさか、これほどとは」ブオが見上げる大きさだ。
「ではこちらから行くぞ。全員防御!」

そう言ってデストルクシオン・ディオス(神の破壊) (全体攻撃・大)を威力を弱めて放つ。

「「「 ! ! ! ! 」」」


※Cerounodostrescuatrocincoseissieteochonuevediez



教会の学校では魔法学も一通り知識として学ぶが、サント・マヒア(神聖の魔法)とディオス・マヒア(神撃の魔法)が聖魔法王国の十八番おはこなので徹底的に覚えさせられるのだが扱えるかは分からない。

ほとんどの者が努力して初期魔法を習得し、とても優秀な者でも次の段階へ行けないのが現実だった。
本でしか読んだことが無い。
教官からしか聞いた事が無い。
自分達には縁の無い魔法。
それがデストルクシオン・ディオスだった。

見上げる空は光り輝いていて3人とも呆然と見上げていた。

「馬鹿! 腹に力を入れろ! 防御ぉぉ!」
チュドドドドドトォォォォーーン!・・・
(ちょっとやりすぎたかな? でも1回使ってみたかったんだよなぁ)

砂埃をビエント・マヒア(風の魔法)ではらい、3人を見えると悲惨な状況だった。
服はボロボロ、アチコチから血を流し、ブオの足は千切れ、ファイサンの両腕は無かった。

「あーあ、お前らもう少し耐えられなかったのか?」
エルヴィーノは愚痴を言いながら足と腕を集めていると。

「もう、陛下のお役に立てません」
などと言って来るポヨォの内臓が飛び出していた。

「バーカが、鍛え直しだ」
そう言ってトドス・マキシモ・クラール(全体に全回復)を使うと3人が元通りになって行く。
「「「あれ?」」」

「お前達、俺の役に立つ気はあるのか? さっきの攻撃を耐えて立っていられるまで全体責任とする!」
そして繰り広げる魔法の攻防。



(最初の手足が吹き飛んだのは秀逸だったなぁ。おかげで3人のやる気が出たみたいだ)
夕暮れになるとフラフラの3人は”助け合いながら”、なんとか立っていた。
もっとも、最初よりもかなり威力を弱めた魔法だが三人の使命感と連帯感を持たせるには十分だった。

「よぉーし。今日はおしまい」
最後にトドス・マキシモ・クラールを使い回復させて元居た執務室に戻り解散となった。
後日エルヴィーノの地獄の特訓を生きて帰れた事が話題となり、親衛隊最強伝説が始まる事となった。


※Cerounodostrescuatrocincoseissieteochonuevediez


一応リカルドから手加減の要望が有ったが無視して鍛える日々だが今日は趣向を変えた。

「今日は食事に行くぞ! 着替えて準備してきなさい」

連れて行くのはゲレミオ(組合)のコメルベビーダ(飲食関係)でも低価格の店だ。
(徐々にゲレミオにも顔を出さないとな。だからと言って高い店には連れて行かない。まずは全てに置いて、この等級からだ) 

正式に採用が決まってからはリカルドからゲレミオについての説明も有ったが現場での挨拶はこれからだ。
だが、ブルデール(娼館関係)のトバラオン夫婦にはまだ会わせない。
一応節度を保って置こう。

親衛隊は王国の関係者に紹介はしなくても良いが、ゲレミオ(組合)のフェーレとグラナダ、リリオ、ラゴスタに大使代表でガンソと挨拶してから、実家に転移しリーゼロッテ、アロンソ、オリビア、デイビットを紹介する。

その後エルフ国に転移したが、どうも親衛隊の態度がおかしい。
リリオにも恐縮したような感じだったし、公爵家に来てからもそうだ。


ロザリー、グンデリック、ナタリーにメイド達と挨拶もカチカチだった。
リカルドの例も有るしまさかと思っていたが今は無視しよう。

そしてブリンクス王とエアハルトとの挨拶を済ませ、翌日の朝に最終目的地の獣王国に目指すが、三人には港街リベルタの教会経由で王都アレグリアにある高級旅館ビクトリアに「自分達だけの知識と行動力で来い」と伝え、先に行って”汗をかく” エルヴィーノだった。


三人が来る数日間は獣王達と結婚式をどのようにするか会議に参加していた。
会議の内容は”聖魔法王国の三倍派手で盛大な結婚式にする”って内容で、特に獣王夫婦が張り切っていた。

パウリナは楽しそうにしているがエルヴィーノはゲンナリだった。
一時間に一度、着替えたり、暗黒龍を呼び出せないかとか、向こうは10日間だからこっちは一ヶ月だとか、誓いの口づけは1分以上しろだとか、大体教会も無いのにどうするつもりなんだか知らないけど、パレードも王都アレグリアを一周するとか言いだすし、エルヴィーノとパウリナの事よりも、国として見栄の張り合いみたいな感じで嫌気がさしていた。

ロディジャと、ビエルナスにエルヴィーノの要望だけ伝えてパウリナと息抜きに”散歩”に出た。
勿論向かう先は高級旅館だ。
無駄だと分かっているがエルヴィーノの要望は”地味で質素なモノ”が希望で、ビエルナスに伝えてもらうと無視されたらしく、後から”あきらめてください”と慰められた。
そんなやり取りをしていると忘れたころに親衛隊が高級旅館に到着した。
ブオが代表して挨拶する。

「只今到着しました」
「お疲れ! どうだったか男三人のむさ苦しい旅は? 俺も初めてこの街に来たのはリカルド達と同じ道を辿ったものさ」

「「「おお、そうでしたか!」」」
「あっ獣王の姫でパウリナだ」
「パウリナです。皆さんの事はロリ姉様から聞いていますよ」
「「「ハハッ宜しくお願い致します」」」
「じゃ行こうか」

ゾロゾロと歩き出し、ビエルナスに伝えてとパウリナに言うと、サラサラと文字を書きエマスコに入れた。
獣王国ではエマスコも聖魔法王国から仕入れているらしいが、ロリがレプリカ・マヒア(複製、複写の魔法)で複製を作っているようだ。
抜け目のないマルソ殿だと感心していた。

向う先は親父さんの宿だ。

(既に名前が親父さんになっているが本当の名前は・・・何だっけ? ・・・思い出した、ガルガンダだ。だが今更呼びづらいなぁ) 

エルヴィーノが1人で悩んでいると「どちらに向われるのですか?」
ポヨォが聞いて来たので「今夜お前たちが泊まる所兼、皆で食事する所だ」

しばらく異国の王都の街並みを見ながら歩いていると見えてきた宿。

「あれ? 看板が付いてる」
そこには旅の宿エスピナと大きな看板が付いており中に入ると結構賑わっていた。

「親父さん居るか!」大きな声で宿に入る。
「おっお前は! モンドリアンじゃねーか! やっぱり生きてやがったなぁ」
エルヴィーノの頭をグシャグシャにして喜ぶ親父さん。

「紹介するよ、リカルドの後任で俺の親衛隊となるブオ、ポヨォ、ファイサンだ。俺が以前お世話になった宿の親父さんでガルガンダだ。皆も挨拶しろ」

一通り紹介して話し出す。

「実は親父さんに渡したい物が有るけど使ってくれるかな?」
「何だ?どうした、改まって」

エスパシオ・ボルサ(空間バック)からベルトの付いた金属の義手を取り出した。

「これ使ってみてよ」
「おめぇこれは」

親父さんの義手は”かぎ爪”が先端に着いた単純な物だったのをずっと覚えていて、少しずつ作っていた魔導具だった。
親父さんは左腕の肘の上からが無いのでガッチリ付くようにベルトで身体に固定するようにしてあり、当然ながら肘の場所で曲がるようにしてある。

何故そんな面倒な仕様にしたかと言うと
「親父さん、良く聴いてくれ。これは微量の魔素でも動く仕様になっていて、”魔法”も使えるようにしてある」

「なにー! 本当か!」
一緒に裏庭に行く。

「この義手の先を動かす様に念じて見て」
カキンカキンと二つの爪が動いた。

「この部分から回すと先端が取れるのさ、魔素を集中してフエゴ・グロボ(火の玉)と唱えて見て」

集中する親父さんは空き地の木に向ってフエゴ・グロボと叫ぶと、義手の先端から火の玉が勢いよく飛んで行った。

「おおおおおおぉすげぇ!」
「他にもアグア・マヒア(水の魔法)と、グラキエース・マヒア(氷の魔法)を使えるようにしてあるが試して見るか?」

うなずく親父さんは残りの魔法も試した。

元々魔法は使えなかった親父さんは自らが魔法を使った事に感動してエルヴィーノを力いっぱい抱きしめた。

「しかし、どうしてだ?」
「あの時俺の大切な友を看病してくれたお礼さ」
「おめぇ・・・」
涙ぐむ”厳つい獣人”は当たり前のように問いかけた。
「今日は泊まってくんだろうな!」

「ああ泊まるよ。あと、この義手で注意する事が有る。この義手は魔石を使わずに体内の魔素だけを使って魔法を放つ事が出来る、普通の人族が1だとすると親父さんは0.1程しか魔素が無いのさ。だからこの義手には魔力増幅魔法陣を組み込んである。それは100倍にまで出来るが元々の魔素量が少ないから魔素が無くなると気絶するからな。威力の調節は肩側目盛を回せば10倍ずつ調節出来る。まぁ調理する親父さんの事を考えて調整したつもりだけどね」

「ありがとうよ」
泣きながら礼を言って来る”厳つい顔の獣人”は、エルヴィーノ、パウリナ、後から来たビエルナスに、ブオ、ポヨォ、ファイサンの三人に吠えた。

「今日は俺の奢りだ! みんな喰って飲めぇ!」と有頂天になっていた。

獣王国名物で泡の出る酒の洗礼を受ける親衛隊だったが、エルヴィーノがリカルドの思い出話をしてやるとブオだけがグラキエース・マヒア(氷の魔法)を使えなかったので、翌日から特訓するようだった。










あとがき
親衛隊は交代で1人が付き従うようになる予定です。
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