上 下
168 / 430
第6章 棘城編2

第168話 その後のドラゴ族

しおりを挟む
女族長ペルフメに会いに向かった。
前回同様に2人で郊外に転移する。
野生生物を捕まえて新しい”石化防止のお守り”を首に掛けた。

「さぁ、ベルフメ。石化の呪文を」
ペルフメが叫ぶ。
「ピエデラ!」

すると首に掛けたお守りがボンヤリと光った。
「石化しない。良し、成功だ!」
そしてお守りを10個ペルフメに手渡した。

「これをどうしろと?」
「一族で重要な者に与えるのだ。あと、一族の者が他種族の者と婚姻するならば、これを与えるが良いだろう。足りなくなったら言ってくれ」
するとペルフメが泣き出して抱き付いて来た。

「妾達の為にそこまで考えてくれていたとは・・・」
泣きじゃくるペルフメをなだめて一族の元へ帰る。

ほんの数日だが、チョット見ない間に言葉の壁はかなり無くなっているように見えた。
会話は獣人の共通語で話しているようだ。
ペルフメが一族を集めて魔法の事を説明している。
今までは石化したら戻らないと思っていたが解除する方法だ。
それと、この先他種族との婚姻に際しての黒龍王からの贈り物だ。
近くで買ってきた数羽の小鳥を石化させ、血を一滴垂らすと徐々に解除されて行く様子を見て驚く一族。

そしてお守りだ。
一羽の小鳥に巻き付けて全員で魔法を掛けた。
するとお守りを巻き付けた小鳥は変化無くそのままの状態だった。
石化した小鳥を元に戻して外に逃がしてやり、お守りを与える条件が言い渡される。
一族にとって重要だと認められた者と、他種族と婚姻した時に相手に渡すのだ。
これは黒龍王から一族繁栄の為で、一族で管理して欲しいと付け加えられた。
全員からエルヴイーノに対して心のこもった言葉の礼を頂いた。

硬い挨拶が終わりグラナダから提案が有った。
「陛下、彼女達を夜の店に出てもらうのは構わないかな?」

そう来たか。
確かにコメルベビーダ飲食関係で、それも高級店に出てもらえば、これだけの美貌なので簡単に客は付くだろう。
しかし、二つ心配な事があった。

「彼女達、酒は?」
「大丈夫」
「量は?」
「私達三人でも1人に負けちゃった」
(飲ませたのか!)

「酔っぱらいの相手だぞ」
「最初は他の女の子と一緒に座らせるわ」

グラナダはやらせる気満々の様だ。
だったら”これ”はどうだ

「フォーレには何と言う?」
一瞬たじろいたが真面目な表情で語り出すグラナダ。

「ペンタガラマで超高級店を出そうと思うの」
「それで?」
「フォーレは出入り禁止にするわ」
「分かった、俺からも伝えよう。お前が1人で仕切ってみたい事にするぞ」
「ありがとう陛下」

2人のやり取りは2人にしか理解出来ていない。
それはフォーレの浮気防止だ。
周りはグラナダが一人前になるので応援しているように聞こえているだろう。
頑張れと回りが騒いでいる。

確かに彼女達が自立する意味でも働く事は重要だ。
その類い稀な美貌を使い、お金を稼ぐことは反対では無い。
しかし、言葉も覚えたてで大丈夫か不安なのだ。
あらゆることを想定させるようにグラナダに考えさせよう。
やはり一番は彼女達がどんな理由で怒るかだ。
それを念入りに話し合わせて、接客の練習も必要だろう。
上手な誘い方と、断り方、あしらい方に、おねだりの仕方も練習させた方が良いな。
などとエルヴイーノは勝手に考えていた。

そうなるとグラナダの行動は早い。
プレテとチャルタランに引き続き会話の練習をお願いし、ラ・ノチェ・デル・カスティリオ・インペリオ向かった。
組織の幹部に説明して手の空いている者を総動員して準備する。
店の場所探しから専任の店員。
今回の場合は念の為ガトー族以外で構成された。
内装や調度品に価格設定まで全部グラナダが仕切っている。

「後は数人の女性よねぇ。ガトー族以外で考えないと。イグレシアから人族を連れてこようかしら。陛下に相談しよぉっと」

エルヴイーノは三ヵ国を転々としている。
だから”たまたま”寄ったイグレシアでゲレミオの幹部と会うことにした。

「フォーレ、ちょっと良いか?」
「おう、どうした?」
「たまには飯でもどうだ?」
そう言って外に連れ出した。
適当に食べた後、街中を歩く。

「フォーレ、俺は立場上グラナダの味方になる」
「どういう事だ」
「要はお前に浮気をさせない為に頑張っているのさ」
困った表情のフォーレだ。

「ただし、裏ではお前の味方だ」
「いいのか?」
「グラナダはお前の浮気を阻止したい。お前は浮気をしたい。俺はどちらも大切だ。だから表面上はグラナダ派で居るしかないが、お前にはアレをやったろ」
「ああ、助かってるよ」
アレとは変化の魔導具だ。

「だから今後もそのつもりで居てくれ。俺が何を言ってもだぞ」
「ああ、解っているさ友よ」
短いやり取りで全て理解したフォーレだ。
今はそれが三人の幸せの為だと。


ある日
「陛下ぁ相談したい事が有るんですけどぉ」
甘えた口調で聞いて来る。
それはイグレシアから高級店で働く女の子を一時的に連れて来る事だった。
新しい店でドラコ族の女性に接客を教えたりする為の事だ。
反対では無い。
むしろその方法が良いと思う。
グラナダが心配したのは遠く離れた異国に一時的とはいえ来てくれる女の子が居るかだ。

「大丈夫だろう。寝泊まりする場所と食事の心配が無ければ、旅行気分で来るんじゃないか?」
エルヴイーノは安易に考えていたが結果はそれで大丈夫だった。


グラナダはフォーレに説明した。
「陛下から聞いているが、お前に協力するのは当たり前だろ」
疑いつつも話を進めるグラナダの顔を見ながら(こいつ完全に俺を疑ってるな)と思うフォーレだった。

「開店の時には私も顔を出して良いか?」
拒否されると解ってはいるが確認の為に聞いてみる。

「今回は獣王国の者だけで開店したいの。こじんまりした店だし、あなたの手を煩わせないわ」
ここで追撃するとケンカになってしまうから一旦話を変えるフォーレ。

「どの店から何人連れて行くか教えてくれ」
しばらくしてから獣人に変化して、こっそり行ってやろうと考えた浮気者でした。

店の場所は超高級旅館エスピナの近くだ。
看板などは無い。
グラナダの提案で裕福な者だけを対象とした”会員制”にするらしい。
そんな店で客が来るのか心配だったが、任せると言った以上相談されるまでは口出ししない事にした。
事前に既存の店を利用する客に目を付けて案内状を渡している。

しかも、イグレシアの店でもだ。
イグレシアの店で女の子に説明した所、応募者が殺到したらしい。
違う意味で困ったらしいが、厳選して選ばれた5人だ。
ただし、応募者が多かったので定期的に交代させる事になる。
選ばれた子達は自分の”太い客”に獣王国まで来てくれとおねだりする訳だ。
ドラゴ族も約20人が交代で働く事になる。



※Cerounodostrescuatrocincoseissieteochonuevediez



そして開店を迎えた。
店の前には屈強な戦士の様な店員が入口の左右に立つ。
招待状を見せると筋骨隆々な店員が腰を折り”いらっしゃいませ”と言って扉を開けられ中に入れる。

店内に入るとイグレシアの超高級店とは雰囲気は違う豪華さで圧倒されるが、それよりも目が釘付けになる者達が居た。
この日の為に、そろえた衣装と練習した化粧。
言葉使いに気品漂う仕草のドラゴ族の女は来店客を歓喜させた。
そして、特別製の認識票が手渡される。

それは会員証でペンタガラマの住民と同じ仕組みの物だ。
店の名前と個人の名前が刻まれて有り魔石もハメ込まれている。
次回からはこの会員証を持って居なければ店に入れず、特典として連れを伴って入れるのだ。
この会員証が客に受けた! 
イグレシアでも扱って無いサービスに客の反応は上々だった。

より高級感を出し、特別待遇されていると認識してもらっているようだ。
そして、当然ながら一部の客から文句が出る。
イグレシアでも扱って欲しいと。
裕福な客は自分が特別だと誇示したいのだ。
返事を検討中で統一させて後日ゲレミオの会議に回す。

そして帰りの際も、小型だが店専用のブエロ・マシルベーゴォで送ってくれるのだ。
フラフラと歩いて帰らなくても良いのが客に受けたようだった。
裕福な客を酔って帰らすのは危険だと考えたグラナダは凄いと感心した。
結果的に安心して遊べる店の認識が付き、客が客を呼び寄せる様になる。
なにかグラナダにはご褒美を考えようと思った。



※Cerounodostrescuatrocincoseissieteochonuevediez



大分経ったある日、アンドレアから連絡がありドラゴ族の事で相談が有るらしいので会って話すことにした。

「その後どうですか、ドラゴ族は?」

簡単に共存出来るのか心配だったようだ。
エルヴイーノは彼女たちの奮闘を報告した。

「彼女達は自立する為に全員が働いていますよ。お客さんも付いているようですしね」
それを聞いて驚いたアンドレア。

「一体、どんな仕事なの?!」
「接客して、お酒を勧める夜のお店で働いています」
にわかには信じられないアンドレアだった。

「”あの”一族が、まさか接客だなんて!」
「まぁ、驚くのも仕方ないですよねぇ。俺もどうなるかハラハラしてたけど、何とかやっているみたいですよ」
「そうですか・・・じゃ、わたしが用意した仕事は必要無いかしらね」
「えっ! 一体どんな仕事ですか?」
心配してくれたのかアンドレアも考えてくれていたようだ。

「暗殺部隊よ」
「はぁ?」
「彼女達の魔法は他に無い物でしょ。それに処理が簡単だわ」

アンドレアの説明は、石化したら簡単に砕いて粉々にでき、血が出ないから後始末の必要が無いから便利と言う物だった。
確かにその通りだ。
切る、燃やすなど後が大変だからな。
粉々にしてしまえば大きな石だ。
まとめて何処かへ捨てても良いのかな? 
その位簡単に処理できる事に魅力を感じたのだろう。

「だけど、そんなに殺したい者が居るの?」
「ふふふっ、今は居ないわ。だけど切り札を持って居たいのよ」
なるほどと考えていたら扉を叩く音が聞こえた。

慌てた様子で駆けつけたのはビエルナスだった。
「大変です! パウリナ様に陣痛が始まりました!」





あとがき
またしても緊急事態の知らせが入った。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

続続源太捕物帖

歴史・時代 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

もふもふと一緒 〜俺は狙われているみたいだ〜

BL / 連載中 24h.ポイント:56pt お気に入り:1,192

【完結】お姉様の婚約者

恋愛 / 完結 24h.ポイント:411pt お気に入り:1,981

妹の妊娠と未来への絆

恋愛 / 完結 24h.ポイント:7,547pt お気に入り:28

私が王女です

恋愛 / 完結 24h.ポイント:46,522pt お気に入り:464

【R18】体に100の性器を持つ女

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:582pt お気に入り:2

処理中です...