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第7章 レース編

第194話 再就職と例の件

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翌日、ネブリナとカリマに連れられて”若いエルフ”が伯爵家にやって来た。
応接室に案内されて3人を待っていたのは、主のロザリーとメイド長のアメリアにグンデリックだった。
全てを知っているロザリーがアメリアとグンデリックの為に説明した。

「ブリンクス王の紹介で、本日から当家で働いてもらうナタリアです」
その名前にビクッとした2人は改めてナタリアを見るが、”知り合い”とは全く違い若い女性だった。
「始めましたナタリアと申します。宜しくお願いします」
正体を明かすまでは演技をするナタリアだ。
「始めましてアメリアです。解からない事は何でも聞いて下さいね」
「兵士長のグンデリックだ。宜しく」
(相変わらず素っ気ないわねぇ。それとも警戒しているのかしら)

「ナタリアにはメイド長補佐をしてもらいます。年齢もアメリアと同じですしね」
「そうなのですか! 良かったぁ。あ、まだ新人メイド長なので宜しくね」

(全くこの子は、もっと自信を持ちなさいと、あれ程言って聞かせたのに・・・まぁこの表裏の無さがこの子の良い所でしょうかねぇ)

「こちらこそ宜しくお願いします」
「では、早速ですが当屋敷の案内をしますね」
「では、我々はこれで失礼させて頂きます。ではナタリア、週末にお会いしましょう」
そう言ってネブリナとカリマは帰って行った。

屋敷の案内と人物の紹介。
物資や備品の置き場所などなど説明を受け、紙とペン用意していたが数日前とは何も変わっておらず全て記憶の中に存在していた。
だが、ナタリアの重要な事は別にあった。
それは私室だ。
事前にロザリーから知らせは有ったが、見て見ない事には始まらないと思っていた。

アメリアから自室を言い渡される。
「ナタリアさんは個室が与えられる事になりました」
それは以前の部屋で、中に入ると家財道具は変わっていないが狭くなっていた。
「隣には見習い騎士で、先日の3ヵ国同盟記念ブロエ・マルシベェーゴォで優勝者した少年のお部屋です」
「そうですか、御噂は聞き及んでおります」
(入口を2つにして奥が繋がるように改築したとロザリー様から聞いていた通りね)
「では、荷物の整理が出来たらリビングにいらしてください」
「畏まりました」

誰も居なくなった部屋で調べるナタリア。
「これね」
壁の額縁を動かすと、別の場所の壁が動き隣の部屋へと移動出来るようになった。
(ふふふっ、これで今夜は)
若返った肉体を思う存分フリオにぶつけようと考えるナタリアだった。

時は少しさかのぼりナタリーが屋敷を出て行った後、グンデリックとアメリアはロザリーに懇願していた。
「ナタリー様を連れ戻す事は出来ないのですか?」
アメリアの問いかけもさることながら、グンデリックもおかしいと思っていた。
それは「ナタリーとは二度と会えない」と言ったロザリーは何食わぬ顔でケロッとしているのだから。
生前から世話をしていたナタリーが居なくなるのに涙1つ見せないのは腑に落ちなかった。
「どうしてナタリーが辞めたのか、せめて理由だけでも教えてくれ」
溜息をついて話すロザリー。

「今は言えません。”あのナタリー”にはもう会えませんが、新しく勤めてもらう方とは仲良くしてくださいね」
ジッとグンデリックの目を見て話すロザリーを黙って見ているアメリア。
「解かった」
そう言ってアメリアを連れて部屋を出た2人だった。
「何故ロザリー様は教えくれないのでしょう」
「・・・その内解かるさ」
そう言ったグンデリックの口元は綻んでいた。

その夜、ナタリアの部屋をノックする者が居た。
「ハイ」
ドア越しに答えるナタリアに小声で答える少年。
「僕だよ」
「奥で」
「解かった」
秘密の扉を開けてフリオの部屋へ入るナタリア。
「ナタリー!」
「フリオ!」
2人は激しく唇を求めた。
「フリオ、私はナタリアよ。間違わないようにね」
「ゴメン、忘れてた」
「ふふふっ、準備するわ」
部屋から一切声が漏れない様に魔法を使い準備するナタリア。
産まれ変わった姿を見て言葉を重ねた。
「綺麗だよ」
「愛しているわ」
「僕も愛してるよ」
そして今夜の2人は激しく求め合った。


※Cerounodostrescuatrocincoseissieteochonuevediez


書類仕事をしていたアンドレアのエマスコに着信が有った。
(相談したい事が有ります)
「あら、何かしら」
(いつでも良いわよ)
(今から行きます)
暫くして現れたのは黒龍王だった。

「どうしたの、改まって」
「実は・・・」
当時の説明をする。
「あぁぁ何か聞いたような気がしますが忘れていました」
(その程度か)とあの2人を可哀想だと思ったが直ぐに撤回した。
次から次へと面倒事を起こすからだ。
「本人達も忘れているかな? だったら好都合だけど」
「何か言ってきたら対処すれば良いでしょう?」
「分かりました。では、その対処方法ですが、パウリナのデビュー戦にしようと思っています」
アンドレアの手が止まり、わざわざ席を立ってエルヴィーノの横に来て問いただした。
「詳しく聞かせて」
「ルブルム・ディアボリスとエクソシズモが闘うのは、ロリとパウリナです」
真剣な眼差しで聞いているアンドレアだ。

「ロリにはサンクタ・フェミナ神聖女の称号とサント・アルマドゥラ神聖魔闘鎧が有るし、パウリナには群青ぐんじょうの聖戦士の称号と神獣降臨が有ります。2人では戦力が過剰すぎるから遊び程度にじゃれてもらいますが、ロリがサント・アルマドゥラを纏い、パウリナが神獣降臨してロリが上に乗る。そしてエスクード・サガラド聖なる盾を使いパウリナが空を駆ける。まずこれで2人からの攻撃は受けないでしょう。そこにロリがディオス系の魔法を使っても良いし、パウリナがイラ・デ・ディオス神の怒りと言う広域電撃魔法で痺れさせても構わないが、魔法の出力を調整出来る事が前提です」
「凄いわねぇ」

「だが重要なのはパウリナの神獣降臨です。それをどのように演出するかです。2人を痺れさせるのは容易いですが、国民にもっと強さをアピールしたいので案を考えて欲しいのです」
「何故パウリナを目立たせるの?」
「今のバリアンテは黒龍ばかりが目立っていますが、獣人本来の力を目立たせる為ですよ。龍騎士隊もその一環です」
「頑張れば神獣降臨は出来るのですか?」
「出来ません。ですが獣神変化であれば、それぞれの種族から出てもおかしくは無いと思いますが?」
「そうねぇ、国力を増やすにはそれが手っ取り早いわ。今や黒龍信仰は絶対の物になっているしね。それに神獣降臨となれば王家は安泰だわ」

「ところで神獣降臨は子供達も仕えるのかしら?」
「それは分かりません。本来であれば獣人が自力で辿り付けない力です」
「それは・・・」
「龍人の加護です」
秘密を知ったアンドレアは残念そうに「そうですか」と答えたが気持ちを入れ替えて演出を考えるそうだ。

「勝敗の条件は俺が召喚した大陸最強の者達に勝てたならば、今後一切何をしても妻や一族から御咎め無しは、どうでしょう?」
「負けた場合は?」
「全ての行動を一族に監視されるのは如何ですか?」
「それはプリマベラさんと相談した方が良さそうね。後、あの子達の練習を見たいわ」
「分かりました。五人で違う場所に行きますか」
「お願いね。プリマベラさんには私から説明するわ」
「お願いします」

とりあえず、準備だけは整えておくエルヴィーノだった。
実際あの2人が忘れているのならばそれでも構わないと思っている。
話しだけの準備と具体的な行動は労力が大きく違うからだ。
(これ以上振り回されるのは嫌だし、今回で最後にして欲しいよなぁ)







実はヤル気満々のサンクタ・フェミナと群青の聖戦士だ。
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