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第9章 魔王国編2

第248話 準備万端

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そのまま上機嫌のリアム殿とロリの所に行き、愛想を振りいて第二夫人のご機嫌を取るエルヴィーノだ。
一旦カスティリオ・エスピナに戻る事を告げたら、日時が決まったらエマスコしてくれと何度もお願いしてくるリアム殿に呆れていた。

一晩掛かりでパウリナの機嫌も取り、ノタルム国への同行を誤魔化しつつシオンを迎えにイグレシアにやって来た。
「陛下、待ちかねましたぞ」
「ああ、すまない。いろいろと問題が多発してな」
「陛下、我は母君からの指令を報告せねばなりませんので、一度ペンタガラマへ戻りたいのですが如何なものでしょうか?」
(ふぅん、何か命令されたのか。従者として試されたのかな?)
「分かった。戻るとしよう」

転移する前にエマスコで知らせると、デイビットにオリビアまでがともなって来ると言う。
待ち合わせは超高級旅館エスピナの料理店だ。
所定の時間に店に行くと、既に三人が座っていた。

「ゴメン待った?」
「申し訳ございません。我が先にお待ちしなければならない立場なのに」
丁寧な挨拶をするシオンに割って入るリーゼロッテだ。
「良いのです。私達の方が近いのですから」
「早速ですが、説明して下さるかしら」
「はっ」
エルヴィーノに教えていない指示の報告をするシオンだ。

「現在、ノタルム国においてダークエルフの総数は32人で、その内未成年が5名です。性別では成人の男性15人。女性12人。未成年の男子2人で女子3人でした。未成年の女子は101歳、30歳、20歳です」

リーゼロッテとオリビアがヒソヒソと話している。
デイビットは余り関心が無いようだ。
「その30歳と、20歳の子とご両親にお会いしたいわ」
その言葉を聞いてピンと来たエルヴィーノだ。

「母さん、もしかしてアロンソの」
「ええ、そうよ。未来の花嫁候補よ」
(やっぱり)
「未来って凄い先だぜぇ?」
「大事な事よ。同族が居ただなんて奇跡に近いのよ。今から子孫を残す事を考えて置かないと種族の存亡にかかわる事です」
(確かにアロンソは、ほぼ純潔の血統だからなぁ。あれ? 100%じゃないのは俺のせいか? でも一応王族だからなぁ。しかしまぁそんな事を考えていたんだ)
当然と言えば当然である。
種族の未来を見据える事は、亡国と言えども王族としての義務なのだ。

「会うって言ったって、どこで?」
「勿論来てもらうわ」
そうなると連れて来るのはエルヴィーノの仕事だ。
「シオンさん。アルコンさんにその旨を伝えて下さるかしら」
「はっ承知致しました」
どうやらシオンは、本来エルヴィーノが行うべき仕事を押し付けられている様だった。

楽しい昼食を済ませてゲレミオの打ち合わせに移動する。
次回ノタルム国へ行くのはゲレミオとして出向き、帰る時には例の四天王を連れて来るからだ。

フォーレとグラナダには産まれたばかりの子供がいる。
三人で話したが心配して反対する夫と「実家から家族を呼んで預けるから大丈夫です」と言い切る妻だ。
何と無く理由が解るエルヴィーノは余計な口出しはしなかった。
ゲレミオで幹部達と話をしている最中さなか、リアム殿の言葉を思い出していた。
それは・・・

【「聞いたぞ、国王。新しい嫁を貰うんだってな」
「なんか、そんな事になってしまいました」
「ところでその女性は国王とつり合いが取れているのか?」
「えっ?」
「ロリはサンクタ・フェミナと言う新たな位を頂戴した。パウリナ妃も聖戦士と言う立派な肩書きを頂戴しただろう? 新しい嫁はどんな肩書きなのか気になってな」】

(リアム殿も結構俗っぽいなぁ)
全く気にしていなかった事を問われて感じた。

だがしかし、のちのちそんな些細な事で妻達が言い争いになってはいけないと、心の隅に書き残していた事だった。
(インスティント聞こえますか?)
(聞こえているよモンドリアン)
(幾つか聞きたい事が有るけど良い?)
(シーラの事か?)
(ああ、リャーマ・デ・ラ・エクスプロシオン・アルマドゥラだけど、魔素の調整は出来るか? 今のままだと魔素の消費量が多くて長く使用できない様だ。ドンドン魔素が減って行く感じがするらしい)
(そうか)
(俺からの提案だけど、鎧を顕現するだけの状態と、魔素を三分の一程度解放する状態と、全開状態に出来ないか?)
(参考にしよう)

(それとさぁ、俺の妻達は他の龍人から称号を貰っているけどシーラには無いの?)
(何ぃぃっ?)
(カマラダからは群青の聖戦士と言う称号を貰ったし、とある白い龍人からはサンクタ・フェミナと言う聖女の頂点となる称号を貰ってるからさ、嫁の間で差別があると)

(分かった。シーラに似合う特別な物を用意しよう)
差別があると俺が困ると言いかけたが、さえぎられてしまった。
(良かったぁ、ありがとうインスティント)
(所で、例の白いヤツは他にも何か与えたのか?) 
シーラの事よりラソンが何をしたのか気になっている様だ。

ラソンとカマラダの与えた特別な魔法を教えると。
(あいつ等っ、何考えているんだ)
(そんなに身分不相応かなぁ?)
(そうでは無い。だが、やり過ぎだ)
(あのさ、シーラには実用的なのをお願いできるかな?)
(・・・準備が出来たら連絡しよう)
ちょっと間が有ったのが気になったが、エルヴィーノにはどうする事も出来なかった。

インスティントと念話を終えて考え込んでいると
「陛下、以上でゲレミオの用意も具体的に終わりましたが・・・陛下?」
「えっ? あ、すまんすまん。ガンソに任せてあるから、安心して考え事をしてたよ」
自分の事を棚に上げ部下を褒める上司だ。
本来は諫言かんげんすべき立場だが嬉しかったガンソ。
「勿体ないお言葉、恐悦至極です」
ガチガチの丁寧語で帰って来た。
「それで、いつ行く?」
「陛下のお言葉を待つだけです」

準備万端でいつでも良いと言う。
例の義父の件もあるし無視すると、それはそれで面倒だ。
プリマベラには貸が沢山あるから、もしもバレても怒られてお仕置きされるのは義父だけになるはずだ。
(一応約束だからエマスコするか)

イグレシアの王宮でリアムのエマスコが点滅した。
正確に言うと取り付けてある魔石が光ったのだ。
慌てて中を確認するリアム。
すると満面の笑みを浮かべて、メイド達に気持ち悪く思われる。

手紙の内容は
【明日、昼前にペンタガラマのゲレミオからノタルム国へ転移します。数人で出向き、ゲレミオで必要な機材も運ぶために遅れない様にしてください。打ち合わせ通り無理やり飛び込んで来るようにしてくださいね。また、この手紙は即座に焼却処分してください】
と言う内容だった。

全て指示の通りに行動するリアム。
得意である火の魔法で瞬時に灰にしてしまった。

「問題は数日間留守にする嘘だなぁ。さてと、どんな言い訳にするか・・・」
ブツブツと独り言をつぶやきながら自室に戻って行った。
リアムの用意した”予定”は、ブロエ・マルシベェーゴォのレースで敵国の現状と視察だった。
バリアンテでは国内数か所に学校を作ったと情報を入手しているので、表敬訪問して探って来る。と言う嘘だ。

実際には子飼いの間諜に調べさせるのだが、プリマベラには前回のレースでの事も有り、今後自身がレースに出る事を親族に硬く禁止されている為、自国の学校に訓練内容を反映させる為にもレース経験者である自らが確認して来る。と言うもっともらしい嘘だ。

「完璧だ! これならば全く怪しまれないだろう」

一方、とある場所では可愛く装飾されたエマスコに着信があった。
「明日、昼前に機材と一緒に転移する。場所は・・・」
愛くるしく微笑む彼女は護衛の者に伝えた。
「2人共、明日の朝から準備よ」
夫婦で言い争いになり、夜は力づくで手籠めにされて話が有耶無耶になってしまった事に腹を立てて一大決心をしたパウリナだった。
要するにコッソリと荷物の中に隠れて付いて行く作戦だ。

既に内容を教えられて、予想外の大冒険になる事にワクワクするペルフメと冷静さを失わないカメルシーだ。
勿論三人は対アンドレア策を講じたのだ。
基本的にパウリナはどれだけ怒られても問題は無い。
重要な事はドラゴ族の護衛2人が”共謀している事”を隠さなければならない。
三人はいろんな嘘を考えた。
もっともらいし嘘や意表を突く嘘。
だが、それらを説明する為には嘘で嘘を誤魔化す事になり、説明が複雑になってしまう事で覚えられなくなってしまった。

結局はパウリナが突然付いて行くと言いだして、2人の護衛が引き止め説得したが無駄で「どうしても行くならば護衛としてお供します」と申し立てた事にした。
「それよペルフメェ!」
回りくどい嘘も覚えなくて良いし、帰って来て怒られてもへっちゃらのパウリナだ。

護衛2人は「御1人で行動させる訳にもいかず、急遽同行しました」とパウリナの安全第一に取った行動をアピールする。
多少の説教は覚悟の上だが、ドラゴ族としても”国から出る”と言う行動に猛烈に感動している2人だ。
元々セルビエンテ族として山奥の暮らしが長かったし、先祖から他種族との交流も無かったのだ。
それが他国などと想像を絶するペルフメとカメルシーだった。






予定外の同行者も準備を整えているようです。
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