主人公だったはずの少年は追放された隣国で運命と出会う

hina

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「ただいま、ノア。寂しくなかったか?」
「はっ……ま、また?」
レーゼルが部屋に入ってきた途端、僕は再び発情した。
「やはり、何度かひどい発情状態になるらしいな」
「な、なんで」
「運命とはそう言うものらしい。出会ってから二、三度発情を繰り返すとフェロモンが馴染んで落ち着くらしいが」
「何で僕が、こんな目に」
「出会ってしまったんだ、仕方ない」

宮廷魔法師のマントを脱いだレーゼルが僕のいるベッドに近付いてくる。
美しい身体を見せつけるかのように制服も脱ぎ出したレーゼルのそこは、既に臨戦態勢だった。

「えっ……!」
「今日も良い声を聞かせてくれ」

朝みたいにレーゼルのフェロモンで力が抜けて、酔ってしまう。

「やだ……」

運命なんて毒だ。


でもその毒にどうしても逆らえなかった。







「いつの間にかレーゼル様と仲良くなっていたなんてねえ。隅に置けないねえ」
「仲良くなったわけでは……。どうやら運命……らしいです」
四日後にようやく復帰した僕は、食堂の女将さんに感心されていた。


「結婚して王都で暮らすんだろう? 寂しくなるけど、幸せになるんだよ」
「えっ!? 結婚なんて……!」
「でも運命なんだろう? 番とは離れられないらしいじゃないか。αとΩの感覚はβの私には分からないけれどねえ」
「僕はまだここで働きたいんですが……」
「そう言ってくれるのは嬉しいけど、無理しなくていいんだよ」
「いえ、無理とかではなく……」

運命に振り回されている。自分の意志とは関係なく物事が進んでいく。


「やめてもいつでも来ておくれよ」
「もしやめたとしたら、そのつもりですけど……でも、やめたくないです。まだこの街に居たいです」
「大丈夫だよ。王都は怖くないし、何かあってもレーゼル様がどうにかしてくださるさ」
「や、あの……」

もしかしたらレーゼルに何か言われていたのか、女将さんの中では僕がやめることはもう決定事項のようで、その後も、続けたいという僕の主張は流されてしまった。

運命とは本当に離れられないものなんだろうか。
確かにフェロモンには抗えないけど、運命というものをまだ信じられない、信じたくない自分がいた。
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