1 / 5
1
しおりを挟む
「ルシェル……どうか気をつけて。寂しいわ。界渡りはなかなか許されない……めったに会えなくなるなんて……」
「母様……父様、兄様もどうかお元気で。帰れる時には帰ってきますので」
「待ってるよ、ルシェル」
「最後にもう一度抱きしめさせてくれ」
「はい」
僕は今日、夜の来ない陽の国から陽の昇らない夜の国の国王陛下に嫁ぐ。
数百年に一度花嫁を送り合う慣習があるのだけど、今回、陽の国の高位貴族家のオメガである僕が選ばれてしまった。
「では、行ってまいります」
「ルシェル、幸せになってね」
「はい」
僕は涙をぬぐって夜の国からの迎えの馬車に乗り込み、まず夕焼けまで向かうことになる。
陽の国も夜の国も国と定められているけど、実際は世界が違う。
国から国への移動は夜明けと夕焼けからでしかないと渡れない。
世界を渡るから界渡りと呼ばれている。
「夜の国に馴染めるだろうか……。国王陛下と仲良く出来るかな……」
不安が募る。
努力はするつもりだけど、界渡りをする人は少ない。
だから見当がつかないのだ。
どんな不便があるのか、どんなことに困るのか、どんなことに心動かされるのか────。
不安九割、期待一割。
そんなところだろうか。
夜の国の国王陛下はどんな人なのだろう。
アルファだと聞いているけど、フェロモンはどんな香りなんだろう。
これから分かることだけど、分かるころには僕は逃げられない環境にいることになる。
もし相性が悪かったらどうなるんだろうと思ったら、楽観視は出来なかった。
「母様……父様、兄様もどうかお元気で。帰れる時には帰ってきますので」
「待ってるよ、ルシェル」
「最後にもう一度抱きしめさせてくれ」
「はい」
僕は今日、夜の来ない陽の国から陽の昇らない夜の国の国王陛下に嫁ぐ。
数百年に一度花嫁を送り合う慣習があるのだけど、今回、陽の国の高位貴族家のオメガである僕が選ばれてしまった。
「では、行ってまいります」
「ルシェル、幸せになってね」
「はい」
僕は涙をぬぐって夜の国からの迎えの馬車に乗り込み、まず夕焼けまで向かうことになる。
陽の国も夜の国も国と定められているけど、実際は世界が違う。
国から国への移動は夜明けと夕焼けからでしかないと渡れない。
世界を渡るから界渡りと呼ばれている。
「夜の国に馴染めるだろうか……。国王陛下と仲良く出来るかな……」
不安が募る。
努力はするつもりだけど、界渡りをする人は少ない。
だから見当がつかないのだ。
どんな不便があるのか、どんなことに困るのか、どんなことに心動かされるのか────。
不安九割、期待一割。
そんなところだろうか。
夜の国の国王陛下はどんな人なのだろう。
アルファだと聞いているけど、フェロモンはどんな香りなんだろう。
これから分かることだけど、分かるころには僕は逃げられない環境にいることになる。
もし相性が悪かったらどうなるんだろうと思ったら、楽観視は出来なかった。
10
あなたにおすすめの小説
神父様に捧げるセレナーデ
石月煤子
BL
「ところで、そろそろ厳重に閉じられたその足を開いてくれるか」
「足を開くのですか?」
「股開かないと始められないだろうが」
「そ、そうですね、その通りです」
「魔物狩りの報酬はお前自身、そうだろう?」
「…………」
■俺様最強旅人×健気美人♂神父■
オメガ修道院〜破戒の繁殖城〜
トマトふぁ之助
BL
某国の最北端に位置する陸の孤島、エゼキエラ修道院。
そこは迫害を受けやすいオメガ性を持つ修道士を保護するための施設であった。修道士たちは互いに助け合いながら厳しい冬越えを行っていたが、ある夜の訪問者によってその平穏な生活は終焉を迎える。
聖なる家で嬲られる哀れな修道士たち。アルファ性の兵士のみで構成された王家の私設部隊が逃げ場のない極寒の城を蹂躙し尽くしていく。その裏に棲まうものの正体とは。
隊長さんとボク
ばたかっぷ
BL
ボクの名前はエナ。
エドリアーリアナ国の守護神獣だけど、斑色の毛並みのボクはいつもひとりぼっち。
そんなボクの前に現れたのは優しい隊長さんだった――。
王候騎士団隊長さんが大好きな小動物が頑張る、なんちゃってファンタジーです。
きゅ~きゅ~鳴くもふもふな小動物とそのもふもふを愛でる隊長さんで構成されています。
えろ皆無らぶ成分も極小ですσ(^◇^;)本格ファンタジーをお求めの方は回れ右でお願いします~m(_ _)m
巣作りΩと優しいα
伊達きよ
BL
αとΩの結婚が国によって推奨されている時代。Ωの進は自分の夢を叶えるために、流行りの「愛なしお見合い結婚」をする事にした。相手は、穏やかで優しい杵崎というαの男。好きになるつもりなんてなかったのに、気が付けば杵崎に惹かれていた進。しかし「愛なし結婚」ゆえにその気持ちを伝えられない。
そんなある日、Ωの本能行為である「巣作り」を杵崎に見られてしまい……
沈黙の至宝 その輝きを取り戻す迄
小葉石
BL
オメガバースをベースにしたお話です。
が、ほぼβの人々の中でαもΩも圧倒的に産まれる数が少なくほぼ絶滅種と思しき世界線です。
メイン 見習い士官α×見習い士官Ω
番となったレオドルナαとソワラΩだったが、レオドルナの任務上の理由と敵国ラドンナの奸計にはまりレオドルナの戦死を告げられ番のソワラは心を壊してしまう。ほぼ廃人と化したソワラをレオドルナは変わらず心から愛し、ソワラを守る為だけに活路を見出し奮闘していく。
オメガに転化したアルファ騎士は王の寵愛に戸惑う
hina
BL
国王を護るαの護衛騎士ルカは最近続く体調不良に悩まされていた。
それはビッチングによるものだった。
幼い頃から共に育ってきたαの国王イゼフといつからか身体の関係を持っていたが、それが原因とは思ってもみなかった。
国王から寵愛され戸惑うルカの行方は。
※不定期更新になります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる