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七月下旬、快晴の朝。山岳リゾートに行くために僕は泰雅と東都の中央部にある転移場に来ていた。
「B棟の三階51だって」
緑の街路樹が並ぶ外の通路を歩きながら、僕は泰雅と繋いだ手をくいくいと引っ張った。
転移場は巨大な施設で、転移陣がいっぱいあって、一つでも間違えると目的地とは違う場所に行ってしまう。
遠くに行く場合は魔力測定と行き先確認があるから、心配はいらないと思うけど、間違えたら東都に戻る魔法陣を新たに予約しなきゃいけないから面倒ではある。
近場だったら予約なしで行き来出来るんだけどね。
「昨日よく休んだから魔力はフルだし、一応回復薬も二瓶持ってきたから、もし違うところへ行っちゃっても大丈夫だよ」
「間違えないのが一番」
「だな」
泰雅の正確な魔力値は知らないんだけど、多分一万くらいあって、今回の移動は一回で一人当たり四百五十、二人で九百ぐらいだと思うから、泰雅にしてみたら余裕も余裕だろう。
魔法陣に注ぐ魔力は混ざらない方がいいから、僕の出番は無し。
僕の魔力値は三千五百ぐらいだし……。
「今日は日帰りだけど、次は泊まりにしような」
「次も日帰りで!」
「本当は貸切温泉も予約しようかと思ったんだけど、瑠衣のこと襲いそうだから、やめておいたんだ。褒めて」
「られるか!」
急に何を言い出すんだ。
僕は心臓のバクバクを落ち着けようと深呼吸をした。
「今は周りに人がいないからいいけど、人がいたら発言には気を付けろよ!?」
「そんなに怒るなよ。可愛いけど」
「可愛くない!」
「恥ずかしがり屋だな、瑠衣は」
「泰雅が度を越してるんだ!」
「それはすまない」
「もういい……」
泰雅が僕の前髪にそっと口付ける。
「泰雅!」
「これくらい許してくれ」
「疲れる……」
気にするだけ損なのかもしれない。僕はがっくりと肩を落として、泰雅と手を繋いだままB棟へと向かった。
本当は手を離してやろうかと思ったけど、がっちり恋人繋ぎで掴まれてて無理だった。無念。
七月下旬、快晴の朝。山岳リゾートに行くために僕は泰雅と東都の中央部にある転移場に来ていた。
「B棟の三階51だって」
緑の街路樹が並ぶ外の通路を歩きながら、僕は泰雅と繋いだ手をくいくいと引っ張った。
転移場は巨大な施設で、転移陣がいっぱいあって、一つでも間違えると目的地とは違う場所に行ってしまう。
遠くに行く場合は魔力測定と行き先確認があるから、心配はいらないと思うけど、間違えたら東都に戻る魔法陣を新たに予約しなきゃいけないから面倒ではある。
近場だったら予約なしで行き来出来るんだけどね。
「昨日よく休んだから魔力はフルだし、一応回復薬も二瓶持ってきたから、もし違うところへ行っちゃっても大丈夫だよ」
「間違えないのが一番」
「だな」
泰雅の正確な魔力値は知らないんだけど、多分一万くらいあって、今回の移動は一回で一人当たり四百五十、二人で九百ぐらいだと思うから、泰雅にしてみたら余裕も余裕だろう。
魔法陣に注ぐ魔力は混ざらない方がいいから、僕の出番は無し。
僕の魔力値は三千五百ぐらいだし……。
「今日は日帰りだけど、次は泊まりにしような」
「次も日帰りで!」
「本当は貸切温泉も予約しようかと思ったんだけど、瑠衣のこと襲いそうだから、やめておいたんだ。褒めて」
「られるか!」
急に何を言い出すんだ。
僕は心臓のバクバクを落ち着けようと深呼吸をした。
「今は周りに人がいないからいいけど、人がいたら発言には気を付けろよ!?」
「そんなに怒るなよ。可愛いけど」
「可愛くない!」
「恥ずかしがり屋だな、瑠衣は」
「泰雅が度を越してるんだ!」
「それはすまない」
「もういい……」
泰雅が僕の前髪にそっと口付ける。
「泰雅!」
「これくらい許してくれ」
「疲れる……」
気にするだけ損なのかもしれない。僕はがっくりと肩を落として、泰雅と手を繋いだままB棟へと向かった。
本当は手を離してやろうかと思ったけど、がっちり恋人繋ぎで掴まれてて無理だった。無念。
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