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「あー良く寝た」
泥のように眠った。魔力もほぼ全回復したのか、体が軽い。
食事の後「じゃあ、また」と言ってあっさり別れてから、宿に向かい、宿では役場の人が手をまわしてしてくれたのか、宿代無料と言われ申し訳なく思った昨日。
部屋備え付けのお風呂に入った後、ベッドにたおれこみ、そこから記憶がない。
思った以上に疲れていたらしい。夢も見なかった。
「準備しなくちゃな」
ぼーっとしている頭を働かせる。
今日はまず余分なお金を預けて、飲み水と保存食を買って、鞄の中を整理したら街を出よう。
その前に、一応杖を武器屋で見てもらった方がいいだろうか。
備えは必要だと昨日痛感したのだ。マジックポーションも瓶が重いけど、常備することにしたのだ。
「亜空間魔術を覚えようかな」
鞄を持たなくても良くなるし、大量の物が持てるようになる。
聖魔術との相性も悪くなかったはずだけど、コツを掴むのは難しいと言われている。
亜空間魔術の本を買うために、書店にも寄ろう。
旅をしながら少しずつ読んで、実践してみよう。
当面の目標も決まり、ベッドから出る。朝食はどうしよう。近くのカフェはもう開いてるだろうか。
「今日も一日頑張ろう」
「お」
伝達鳥ならぬ、伝達ドラゴンがやってきた。
街から出て一時間。魔獣ではなく家畜が草を食む長閑な風景。
手乗りサイズより少し大きい金色のドラゴンが宙を漂う。
「再生してくれ」
ドラゴンが声なく吼える。
『昨日はよく眠れただろうか。疲れは残っていないか? もう街は出たのかな。俺は今侍従の入れたお茶を飲みながら、このメッセージを吹き込んでいる。時間が合えば通話もしたい。もし良ければそのドラゴン、シスに魔力を与えてくれ』
「お前、シスって言うのか。アレクシスのシスかな。よろしくな」
俺はシスに手を差し出して指先から魔力を送る。
『ルトヴィア?』
「ああ。昨日ぶり」
『今どこだ? 話してても平気か?』
「オレアタルアから出てしばらく行った平原にいるよ。魔獣の気配もないし、大丈夫」
念のため防御結界を展開しながら、通話を続ける。
「体調はどうだ?』
「よく眠れたし、疲れも取れて体調は良好だよ。魔力もほぼ回復してる。今なら何が来ても負けない。昨日みたいのは流石に厳しいけど」
『それだけ言えるなら心配ないか。でも気をつけてくれよ。油断大敵だからな』
「この辺りは強い魔獣は出ないからな。昨日は例外として」
『ギルドマスターも言ってたけれど、第一級災害はそうそう起きないさ。二度も遭遇するならそれはもう呪われてるのかもな』
「ヤメテ。心のHPはゼロよ」
『意外と繊細だな』
「どういう意味だよ!」
まったく減らず口なんだから!
「殿下もお気をつけて!」
『アレク。アレクだ』
「でーんか」
『ルトヴィア』
アレクの真剣な声がする。
「なんだよ、アレク」
『いや、いい。また連絡する』
「分かった」
「では」
シスがくるっと上下に一回転して空に帰っていく。それを見送りながら、流していた魔力を止める。
俺の伝達鳥が帰ってくるのは見れないが、アレクシスの元からは戻ってきているだろう。
メッセージを伝えるために呼び出すこともあるけど、今ではない。
さあ、歩こう。
徒歩の旅。自分で歩かない限り、どこにも行けないのだ。
歩くのは好きだから、苦にはならない。夜になる頃には足が棒になっているかもしれないけど、一晩寝たらまた元気になる。
「こうかな」
街を出る前にざっと読んだ亜空間魔術を試しながら、次の街を目指す。
次の街に着く頃には亜空間魔術を習得したい。
分類としては聖魔術師だけど、生活魔術だって使える。火をおこすのだってお手のものだ。
「スープ、スープ、干し肉スープ」
リズムをつけながら小さく口遊む。一人旅をするようになってから、独り言が増えた気がする。
寂しいんだろうか。いや、一人旅は気楽だし、聞いてる人もいない。ただ、街中では気をつけよう。
野菜もたっぷり入れたい所だけど、三種類で我慢する。鞄の中がカオスにならないように、日持ちのする少ない量しか買ってこなかった、こられなかった。
健康は偏ってる気がする。でもそれも次の街に着く頃には解決する。
そう、亜空間魔術があるならね!
「ん、こんなものかな。いただきます」
小さい鍋から木の器に移し、スプーンを手に取る。朝しっかり食べたから昼は軽めに済ますつもりだ。
スープの味は薄い。でももう慣れた。街に立ち寄った時に美味しい料理が食べられたらそれでいい。贅沢は言わない。
でも亜空間魔術を覚えたら調味料も揃えよう。どうせなら美味しい方が良いに決まってる。
「どうしてもっと早く思い付かなかったんだろう。一年近く時間を無駄にしてしまった」
鞄の中から本を取り出して、溜息をついた。
泥のように眠った。魔力もほぼ全回復したのか、体が軽い。
食事の後「じゃあ、また」と言ってあっさり別れてから、宿に向かい、宿では役場の人が手をまわしてしてくれたのか、宿代無料と言われ申し訳なく思った昨日。
部屋備え付けのお風呂に入った後、ベッドにたおれこみ、そこから記憶がない。
思った以上に疲れていたらしい。夢も見なかった。
「準備しなくちゃな」
ぼーっとしている頭を働かせる。
今日はまず余分なお金を預けて、飲み水と保存食を買って、鞄の中を整理したら街を出よう。
その前に、一応杖を武器屋で見てもらった方がいいだろうか。
備えは必要だと昨日痛感したのだ。マジックポーションも瓶が重いけど、常備することにしたのだ。
「亜空間魔術を覚えようかな」
鞄を持たなくても良くなるし、大量の物が持てるようになる。
聖魔術との相性も悪くなかったはずだけど、コツを掴むのは難しいと言われている。
亜空間魔術の本を買うために、書店にも寄ろう。
旅をしながら少しずつ読んで、実践してみよう。
当面の目標も決まり、ベッドから出る。朝食はどうしよう。近くのカフェはもう開いてるだろうか。
「今日も一日頑張ろう」
「お」
伝達鳥ならぬ、伝達ドラゴンがやってきた。
街から出て一時間。魔獣ではなく家畜が草を食む長閑な風景。
手乗りサイズより少し大きい金色のドラゴンが宙を漂う。
「再生してくれ」
ドラゴンが声なく吼える。
『昨日はよく眠れただろうか。疲れは残っていないか? もう街は出たのかな。俺は今侍従の入れたお茶を飲みながら、このメッセージを吹き込んでいる。時間が合えば通話もしたい。もし良ければそのドラゴン、シスに魔力を与えてくれ』
「お前、シスって言うのか。アレクシスのシスかな。よろしくな」
俺はシスに手を差し出して指先から魔力を送る。
『ルトヴィア?』
「ああ。昨日ぶり」
『今どこだ? 話してても平気か?』
「オレアタルアから出てしばらく行った平原にいるよ。魔獣の気配もないし、大丈夫」
念のため防御結界を展開しながら、通話を続ける。
「体調はどうだ?』
「よく眠れたし、疲れも取れて体調は良好だよ。魔力もほぼ回復してる。今なら何が来ても負けない。昨日みたいのは流石に厳しいけど」
『それだけ言えるなら心配ないか。でも気をつけてくれよ。油断大敵だからな』
「この辺りは強い魔獣は出ないからな。昨日は例外として」
『ギルドマスターも言ってたけれど、第一級災害はそうそう起きないさ。二度も遭遇するならそれはもう呪われてるのかもな』
「ヤメテ。心のHPはゼロよ」
『意外と繊細だな』
「どういう意味だよ!」
まったく減らず口なんだから!
「殿下もお気をつけて!」
『アレク。アレクだ』
「でーんか」
『ルトヴィア』
アレクの真剣な声がする。
「なんだよ、アレク」
『いや、いい。また連絡する』
「分かった」
「では」
シスがくるっと上下に一回転して空に帰っていく。それを見送りながら、流していた魔力を止める。
俺の伝達鳥が帰ってくるのは見れないが、アレクシスの元からは戻ってきているだろう。
メッセージを伝えるために呼び出すこともあるけど、今ではない。
さあ、歩こう。
徒歩の旅。自分で歩かない限り、どこにも行けないのだ。
歩くのは好きだから、苦にはならない。夜になる頃には足が棒になっているかもしれないけど、一晩寝たらまた元気になる。
「こうかな」
街を出る前にざっと読んだ亜空間魔術を試しながら、次の街を目指す。
次の街に着く頃には亜空間魔術を習得したい。
分類としては聖魔術師だけど、生活魔術だって使える。火をおこすのだってお手のものだ。
「スープ、スープ、干し肉スープ」
リズムをつけながら小さく口遊む。一人旅をするようになってから、独り言が増えた気がする。
寂しいんだろうか。いや、一人旅は気楽だし、聞いてる人もいない。ただ、街中では気をつけよう。
野菜もたっぷり入れたい所だけど、三種類で我慢する。鞄の中がカオスにならないように、日持ちのする少ない量しか買ってこなかった、こられなかった。
健康は偏ってる気がする。でもそれも次の街に着く頃には解決する。
そう、亜空間魔術があるならね!
「ん、こんなものかな。いただきます」
小さい鍋から木の器に移し、スプーンを手に取る。朝しっかり食べたから昼は軽めに済ますつもりだ。
スープの味は薄い。でももう慣れた。街に立ち寄った時に美味しい料理が食べられたらそれでいい。贅沢は言わない。
でも亜空間魔術を覚えたら調味料も揃えよう。どうせなら美味しい方が良いに決まってる。
「どうしてもっと早く思い付かなかったんだろう。一年近く時間を無駄にしてしまった」
鞄の中から本を取り出して、溜息をついた。
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