破魔の魔術師

hina

文字の大きさ
5 / 5

5

しおりを挟む
「あー良く寝た」
泥のように眠った。魔力もほぼ全回復したのか、体が軽い。

食事の後「じゃあ、また」と言ってあっさり別れてから、宿に向かい、宿では役場の人が手をまわしてしてくれたのか、宿代無料と言われ申し訳なく思った昨日。

部屋備え付けのお風呂に入った後、ベッドにたおれこみ、そこから記憶がない。

思った以上に疲れていたらしい。夢も見なかった。


「準備しなくちゃな」

ぼーっとしている頭を働かせる。

今日はまず余分なお金を預けて、飲み水と保存食を買って、鞄の中を整理したら街を出よう。
その前に、一応杖を武器屋で見てもらった方がいいだろうか。

備えは必要だと昨日痛感したのだ。マジックポーションも瓶が重いけど、常備することにしたのだ。

「亜空間魔術を覚えようかな」
鞄を持たなくても良くなるし、大量の物が持てるようになる。
聖魔術との相性も悪くなかったはずだけど、コツを掴むのは難しいと言われている。

亜空間魔術の本を買うために、書店にも寄ろう。
旅をしながら少しずつ読んで、実践してみよう。


当面の目標も決まり、ベッドから出る。朝食はどうしよう。近くのカフェはもう開いてるだろうか。


「今日も一日頑張ろう」











「お」

伝達鳥ならぬ、伝達ドラゴンがやってきた。
街から出て一時間。魔獣ではなく家畜が草を食む長閑な風景。

手乗りサイズより少し大きい金色のドラゴンが宙を漂う。

「再生してくれ」

ドラゴンが声なく吼える。


『昨日はよく眠れただろうか。疲れは残っていないか? もう街は出たのかな。俺は今侍従の入れたお茶を飲みながら、このメッセージを吹き込んでいる。時間が合えば通話もしたい。もし良ければそのドラゴン、シスに魔力を与えてくれ』
「お前、シスって言うのか。アレクシスのシスかな。よろしくな」
俺はシスに手を差し出して指先から魔力を送る。

『ルトヴィア?』
「ああ。昨日ぶり」
『今どこだ? 話してても平気か?』
「オレアタルアから出てしばらく行った平原にいるよ。魔獣の気配もないし、大丈夫」
念のため防御結界を展開しながら、通話を続ける。

「体調はどうだ?』
「よく眠れたし、疲れも取れて体調は良好だよ。魔力もほぼ回復してる。今なら何が来ても負けない。昨日みたいのは流石に厳しいけど」
『それだけ言えるなら心配ないか。でも気をつけてくれよ。油断大敵だからな』
「この辺りは強い魔獣は出ないからな。昨日は例外として」
『ギルドマスターも言ってたけれど、第一級災害はそうそう起きないさ。二度も遭遇するならそれはもう呪われてるのかもな』
「ヤメテ。心のHPはゼロよ」
『意外と繊細だな』
「どういう意味だよ!」

まったく減らず口なんだから!


「殿下もお気をつけて!」
『アレク。アレクだ』
「でーんか」
『ルトヴィア』

アレクの真剣な声がする。

「なんだよ、アレク」
『いや、いい。また連絡する』
「分かった」
「では」



シスがくるっと上下に一回転して空に帰っていく。それを見送りながら、流していた魔力を止める。

俺の伝達鳥が帰ってくるのは見れないが、アレクシスの元からは戻ってきているだろう。
メッセージを伝えるために呼び出すこともあるけど、今ではない。


さあ、歩こう。
徒歩の旅。自分で歩かない限り、どこにも行けないのだ。
歩くのは好きだから、苦にはならない。夜になる頃には足が棒になっているかもしれないけど、一晩寝たらまた元気になる。

「こうかな」

街を出る前にざっと読んだ亜空間魔術を試しながら、次の街を目指す。
次の街に着く頃には亜空間魔術を習得したい。







分類としては聖魔術師だけど、生活魔術だって使える。火をおこすのだってお手のものだ。

「スープ、スープ、干し肉スープ」

リズムをつけながら小さく口遊む。一人旅をするようになってから、独り言が増えた気がする。
寂しいんだろうか。いや、一人旅は気楽だし、聞いてる人もいない。ただ、街中では気をつけよう。


野菜もたっぷり入れたい所だけど、三種類で我慢する。鞄の中がカオスにならないように、日持ちのする少ない量しか買ってこなかった、こられなかった。

健康は偏ってる気がする。でもそれも次の街に着く頃には解決する。
そう、亜空間魔術があるならね!


「ん、こんなものかな。いただきます」

小さい鍋から木の器に移し、スプーンを手に取る。朝しっかり食べたから昼は軽めに済ますつもりだ。

スープの味は薄い。でももう慣れた。街に立ち寄った時に美味しい料理が食べられたらそれでいい。贅沢は言わない。
でも亜空間魔術を覚えたら調味料も揃えよう。どうせなら美味しい方が良いに決まってる。

「どうしてもっと早く思い付かなかったんだろう。一年近く時間を無駄にしてしまった」

鞄の中から本を取り出して、溜息をついた。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

【短編】乙女ゲームの攻略対象者に転生した俺の、意外な結末。

桜月夜
BL
 前世で妹がハマってた乙女ゲームに転生したイリウスは、自分が前世の記憶を思い出したことを幼馴染みで専属騎士のディールに打ち明けた。そこから、なぜか婚約者に対する恋愛感情の有無を聞かれ……。  思い付いた話を一気に書いたので、不自然な箇所があるかもしれませんが、広い心でお読みください。

隊長さんとボク

ばたかっぷ
BL
ボクの名前はエナ。 エドリアーリアナ国の守護神獣だけど、斑色の毛並みのボクはいつもひとりぼっち。 そんなボクの前に現れたのは優しい隊長さんだった――。 王候騎士団隊長さんが大好きな小動物が頑張る、なんちゃってファンタジーです。 きゅ~きゅ~鳴くもふもふな小動物とそのもふもふを愛でる隊長さんで構成されています。 えろ皆無らぶ成分も極小ですσ(^◇^;)本格ファンタジーをお求めの方は回れ右でお願いします~m(_ _)m

乙女ゲームのサポートメガネキャラに転生しました

西楓
BL
乙女ゲームのサポートキャラとして転生した俺は、ヒロインと攻略対象を無事くっつけることが出来るだろうか。どうやらヒロインの様子が違うような。距離の近いヒロインに徐々に不信感を抱く攻略対象。何故か攻略対象が接近してきて… ほのほのです。 ※有難いことに別サイトでその後の話をご希望されました(嬉しい😆)ので追加いたしました。

幽閉王子は最強皇子に包まれる

皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。 表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

魔王を倒した勇者の凱旋に、親友の俺だけが行かなかった理由

スノウマン(ユッキー)
BL
スラム育ちの少年二人は、15歳になり神の祝福でスキルを得た事で道をたがえる。彼らはやがて青年となり、片方は魔王討伐に旅立つ勇者として華々しい活躍をし、もう片方はただ彼の帰還を待つ相変わらずスラム暮らしの存在となる。 これは何も持たない青年がただ勇者の帰りを待つ日常を描いた作品です。 無自覚両片想いの勇者×親友。 読了後、もう一度だけ読み直して頂けると何か見える世界が変わるかもしれません。

婚約破棄された悪役令息は従者に溺愛される

田中
BL
BLゲームの悪役令息であるリアン・ヒスコックに転生してしまった俺は、婚約者である第二王子から断罪されるのを待っていた! なぜなら断罪が領地で療養という軽い処置だから。 婚約破棄をされたリアンは従者のテオと共に領地の屋敷で暮らすことになるが何気ないリアンの一言で、テオがリアンにぐいぐい迫ってきてーー?! 従者×悪役令息

拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件

碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。 状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。 「これ…俺、なのか?」 何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。 《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》 ──────────── ~お知らせ~ ※第3話を少し修正しました。 ※第5話を少し修正しました。 ※第6話を少し修正しました。 ※第11話を少し修正しました。 ※第19話を少し修正しました。 ※第22話を少し修正しました。 ※第24話を少し修正しました。 ※第25話を少し修正しました。 ※第26話を少し修正しました。 ※第31話を少し修正しました。 ※第32話を少し修正しました。 ※第33話を少し修正しました。 ──────────── ※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!! ※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。

処理中です...