βからΩになったなら

hina

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「瑞希さん!」

昼休み。那月と詩とΩ校舎の外に出ると、松平くんが僕に声をかけてきた。
渚よりも早く来ていたこともそうだけど、言っていない僕の名前をすでに知っていることで、詩が言っていたことが間違いじゃなかったことを知る。

「瑞希さんって……」
「あ、瑞希先輩の方がいいですか? でもそれだと僕を意識して貰いづらいかなって……」
「いや、そういう問題じゃなくて……」
「ちょっと! 瑞希には運命の番がいるんだから、君はお呼びじゃないんだよ!」
詩が僕と松平くんの間に入って松平くんに忠告する。


「都《みやこ》さんでしたっけ。僕は瑞希さんに本気です。運命の番と言われても、僕には関係ありませんし、それで瑞希さんを諦める理由にはなりません」
「俺達を引き裂こうとしても無駄だし、瑞希はお前には靡かない。早く諦めた方が傷が浅くてすむよ?」
「渚!」
「出ましたか……。門脇渚さん、僕はそう簡単には引きませんよ。これから瑞希さんを振り向かせますのでそのつもりで」
「そんなことはさせないし、そうはならない」

悠々とやってきた渚が僕の肩を引き寄せる。僕も渚にぎゅっと抱きつくと、渚は優しく笑った。

「瑞希、愛してるよ」
「うん、僕も……」
「瑞希さん、僕は貴方に好きになってもらえるように努めます! きっと門脇さんより僕を好きになりますよ」
「松平くん、ごめんね。それはないと思う……早く僕以外の良い人を見つけてくれると嬉しい……」
「そんなこと言わないで下さい……」
そう言ったきり、黙って俯いてしまった松平くんは、それでも僕たちのあとをついてきた。

なんだか面倒な事になっちゃったな……。




松平くんは事あるごとに僕の前に現れた。
渚はイライラしてて松平くんを追い払おうとしたけど、松平くんも宣言通り引かなくて、那月と幸哉さんも困ったように僕達を見ていた。

「でも那月にも松平みたいなやつが現れたらと考えたら穏やかじゃないな」
珍しく松平くんがついてきてないある日の放課後。幸哉さんがそう言って那月の肩を抱いた。

「僕には幸哉だけだよ?」
「でも俺達は運命じゃないしな。もし那月に運命が現れてしまったらどうしよう」
「それを言ったら僕だって」
「運命が現れたとしても愛してるのは那月だけだ」
「僕もさっき言った通り幸哉だけ……」

盛り上がる二人の横で気まずい僕は、渚を見上げて首を傾げた。

「僕達は運命じゃなかったらどうなってたんだろうね?」
前にもそんなことを考えたことがあったなと思いながら、渚に聞いた。

「俺達は運命として出会ったんだから、起きなかったもしものことはいいだろう? だけど、運命じゃなかったとしても瑞希を知ったなら、瑞希に惹かれてたと思うよ」
「うん、僕も」

額にキスされて、僕は蕩けて渚の腕に擦り寄った。
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