異世界に迷い込んだら神子様と呼ばれてるけど、僕にはもったいないような気がする

hina

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「神子殿、お名前を伺っても?」
「あ、僕は水藤遊です。水藤が家名です」
「遊殿……。私のことは紫陽とお呼び下さい」
「はい、紫陽さん」
「遊様、紫陽殿下は我が国の王太子殿下でございます。私鹿英は紫陽殿下の従者をしております。どうぞよろしくお願いいたします」
「は、はい。よろしくお願いします」
「私達には敬語は無用でございます」
「はぃ……あ、う、うん」

鹿英さんは敬語はいいと言うけど、良いのかな……? 僕より確実に歳上っぽいけど……。

いつの間にか、紫陽さんと鹿英さん以外の人は二人の後ろで片膝を立てて頭を下げていた。

「双葉、私達に着替えを」
「はい、ただいま!」

紫陽さんが後ろで頭を下げていた人の一人に声をかけると、エメラルドグリーンの髪をした僕と同じ歳くらいの少年が脇に置いていた荷物の中から新しい白い服を取り出して、乾いた布と一緒に僕と紫陽さんに渡してくれた。

「あ、あの、着替えるので後ろを向いていて下さい……」
「手伝いましょうか?」
「い、今のところは大丈夫です! 紫陽さんも着替えて下さい!」
服は上下にわかれてるみたいだし、まずは見様見真似で着てみて、それから仕上げだけ手伝ってもらおう。うん。

にこりと笑って手伝いを申し出てくれた紫陽さんの背中を押して後ろを向いてもらう。

制服はびしょ濡れで肌に張り付いている。
僕は難儀しながら、服を脱いでいった。





「ふぁー……凄いですね」
紫陽さんが手綱を握る馬に一緒に乗せてもらってやってきた王都は広く、王都に入ってからも馬で駆けてやっとついた王城は広く大きな御殿だった。

上が見えないほどの外階段を登り、主殿に入るとそこは板張りの広間だった。
奥の高い位置に王の御座があって、臣下はその下に並ぶそうだ。

街も城も規模が大きくて圧倒されてしまう。


「湯殿を用意しますので、まずは湯浴みをして下さい。泉に浸かり身体も冷えているでしょうし」
「あ、あの。僕ここに置いてもらえるんでしょうか? 神子って一体……」
「その話はまた後で。双葉が遊殿について案内しますので」
「え、あ、はい……」
「遊様、参りましょう」

御座を見上げていた僕の肩を抱いていた紫陽さんに呼ばれた双葉くんが優しく微笑んで僕を促す。

「では、また後ほど」
「あっ……」

紫陽さんが僕から離れて奥に消えていく。

僕は紫陽さんの温もりがなくなったことに心細さを覚えながら、その背中を見送った。
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