異世界に迷い込んだら神子様と呼ばれてるけど、僕にはもったいないような気がする

hina

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「ん……」
窓から入ってくる光にぱちっと目を開く。
寝起きはいい方で、目の前にある紫陽さんの顔にちょっと驚いて、そうだった……と昨日の出来事を思い出す。

この人と恋人になってしまった……わあ! と叫び出したい気持ちを抑えながら、紫陽の腕の中で身動ぐ。

「おはよう、遊」
「あっ、起こしちゃった? おはよう……紫陽」
紫陽の方を見ると、藍色の瞳が僕を見ていた。

「さんは付けないんだな」
「学習くらいしますよ」

笑いながら怒ると、目覚めたばかりでちょっとぼーっとしてるのか、一拍おいて紫陽も笑った。

「でも恋人同士なんだから、口付けしてもいいだろう?」
「えっ」
「遊……朝の挨拶」
ちゅっと唇と唇が触れて、すぐに離れた。
「あ……あ、挨拶って毎日するの?」
唇の接触にびっくりして俯く。

「したい」
だけど至近距離で囁かれ目線を戻すと熱っぽい瞳に見つめられていて僕は息を呑んだ。

「……っ」
「毎日一緒に寝ような」
「む、無理!」
「いざという時、すぐ守れるから」

それを言われると僕は弱い。神術具の指輪はそのまましていてくれと言われたし、危機はまだ去っていない。
というか、これからは気をつけなきゃいけないんだと昨日思い知った。

「それは、その……」
「決まりだ」

また唇にキスされて、僕は黙り込んだ。

さっきの、唇へのファーストキスだったんだけどな……。
こちらにはファーストキスの概念はあるのかな?


「このまま遊を抱き締めていたいけど、もう起きなきゃな。鹿英と双葉が待っているだろうから部屋に入れよう」
「は、はい」

そう言って紫陽は僕を離して起き上がった。


「おはようございます! 今日も一日よろしくお願いします!」
「双葉くん」
「顔色は良いようですね。安心いたしました」

部屋の外に居たのだろう。紫陽が部屋の戸を開けると鹿英さんと双葉くんが入ってきて、双葉くんが僕に声をかけてくれた。

「お着替えをご用意しております。洗面室をお借りしましょう」
「あ、そうだね。ありがとう」
「はい」

お勤め用の白い上下の服を持った双葉くんが僕を洗面室に導く。

紫陽も衣装室に入って行った。

僕は今日も一日が始まっていくのを感じていた。
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