後宮の中で目立たず生きてます

hina

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「んーっ。身体鈍ってるや」
「私ではラーナ様のお相手がつとまらず、申し訳ありません……」
「ハルムが殊勝なこと言うなんて珍しいね」
「失礼ですね。私は無理なんてしませんし、見栄もはりません」

よく晴れた日に王宮の庭に出て身体を動かす。
僕の生家は辺境伯家で、武に優れている。
でもいくら鍛えても僕には筋肉はつかなかったので、悲しくなったのも苦い思い出。
それは今も変わらないだろう。
だから、運動が好きとは言い難い部分もあるのも本当だけど、それでも不得意というわけでもなかったりする。

「真剣はもちろん、木刀も持たせてもらえないのが後宮という場所なんだよね」
「間違いがおきては大変ですからね」
「僕はそんなことしないけどなあ」
「例外は認められないのが後宮ですよ」

剣がないと鍛錬も出来ないけど、動きを浚うことは有用だろう。

筋肉がつかないなりの戦い方も剣がないときの対処法も辺境伯家には伝わっている。


僕は自分でも気が付かないうちに薄っすらと笑みを浮かべながら思う存分運動不足を解消した。


そんな僕を見つめる目があったなんて気が付きもせず。







「レジェ。あそこで舞う、あれは誰だったか……」

王宮での用を済まし、城に戻る途中。

庭で舞うように身体を動かす小さな影を見つける。

「確か三ヶ月くらい前に後宮に入った辺境伯子息かと」
私が取りこぼしていることでも覚えている頼りになる宰相は、顎に手を当てて小首を傾げた。
美貌の宰相と呼ばれているレジェ。
私も綺麗だなとは思うが、それだけだ。

だが、あの彼……、微笑みながら楽しそうに美しく舞う彼からはなぜか目が離せない。

この感情は何だろう……。

熱くなる胸に手を当てて、初めての感覚に戸惑う。

「彼の名はわかるか?」
「ラーナ・フェイマールだったかと」
「そうか……。今夜、私の部屋に呼べるか?」
「それは可能ですが……。彼の部屋を訪ねるのではなく、部屋にお呼びになるのですか?」
「部屋を訪ねれば、他の妃達に目をつけられるだろう。そうならないように気を配ってくれ」
「承知しました」

一度深く頷いたレジェに私も頷いて、後ろ髪を引かれながらもその場をあとにした。
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