後宮の中で目立たず生きてます

hina

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「ラーナ、困ってることはない? それか、欲しいものはない?」

眉を寄せて聞いてくるゼファー様にソファで膝抱っこされながら、僕は無心を心がけて……撃沈していた。

ゼファー様からは爽やかなのにどこか色っぽさを含む良い匂いがしていて、僕の脳を揺さぶる。
その熱い手も、身近で感じる吐息も、抱きしめてくる逞しい身体にも、端正な顔にも僕は参っていた。


「今はとくに無いかな……」
「サフィーユ妃の訪問があったそうだね? 何か言われたりした?」
フィルさんのことだ。僕は首を振ってにこりと笑顔を浮かべた。

「お茶の話をしただけだよ」

そういえば、影の話もしたなと思い至って、この場にもいるのかな? とちょっと不安になって震えてしまった。

「ラーナ? 震えてる……やっぱりあいつ消しておこうか……」
「やっ!? なんでもない! 僕は大丈夫! フィルさんも関係ないから……!」

とてもゼファー様の言葉とは思えない呟きが聞こえてきて、僕はゼファー様の腕の中で慌てた。

どうでも良いけど、ゼファー様の膝は痺れないのかな……と思いつつ、僕は喉を潤わせたくてテーブルの上のグラスを取ろうとゼファー様の膝の上から下りようとした……けど、それは阻まれてしまった。

「ラーナ? なぜ私の膝の上から下りようとするんだい?」
「あ、飲み物を飲みたくて……」
「なら、私が……」
「とりあえず、いったんおろして下さい」
「ラーナ……」

捨てられた子犬みたいな顔をされても僕は動じない! 動じないんだから……。

膝から下りてごくごくと果実いっぱいの果実水を飲んだ僕は、またゼファー様の膝に戻ろうとも思えず、ちょっとゼファー様から距離を取った。

「ラーナ、綺麗な肌だね。輝いてる」

距離を取ったからか、僕をまじまじと見つめたゼファー様が肌をほめてくれた。

「あ、従者のハルムが丹念にお手入れしてくれて……」
「そうか……優秀な従者なんだね」
「ちょっと口が悪いんですけどね」

クスクス笑うと、ゼファー様も一緒に笑う。
それからは膝には乗せられなかったけど、昨晩と同じようにまた手を取られた僕は、それ以上拒まず、その夜も健全に過ぎていったのだった。
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