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◇
『明けましたね』
『明けたね。今年もよろしくね』
『はい。先輩と過ごす一年が楽しみです』
『一年だけじゃなくて、これから先ずっと楽しみだよ』
『先輩……』
目の前にいたら触れられるのにな……。
夕方まで一緒にいたのに、もう会いたい。
切ないのに幸せで、物足りない気もするのに満たされてる。
先輩に買ってもらった熊のぬいぐるみをぎゅっと抱き締めて、僕はぼんやりと先輩の匂いが嗅ぎたいと思った。
『先輩』
『ん?』
『今度、先輩の匂いがついたもの貸してください……』
『分かった』
クスクスと笑う先輩は甘く蕩けた声で了承の返事をくれた。
『俺にも由鶴の匂いがついたもの貸して欲しいな』
『パーカーでいいですか?』
『なんでもいいよ』
『じゃあ持ってきます』
『うん、お願い』
それからまた明日会うので待ち合わせを確認して電話を切った。
「先輩、好き……」
もう一回ぬいぐるみを抱き締めて、僕はベッドに横になった。
早く会いたいと思う気持ちは止められそうになかった。
◇
「わあ、想像以上に凄い人」
「由鶴、手を離さないようにね」
「はい!」
初詣に少し大きな神社に来たらさすがに凄い人だった。
先輩はマスクに帽子で完全防備で、僕も今日はマスクをしている。
この人混みだし。
こんなに沢山の人の願いを聞く神様も大変だよなあなんて思いつつ、きつく握られた手に頬が緩む。
マスクで匂いはちょっと鈍ってはいるものの、先輩のフェロモンに守られているので、人混みでも怖くない。
先輩と自然とくっつけるのが嬉しくて、僕は上機嫌だった。
「由鶴、大丈夫?」
「はい。これくらいなら」
波に乗って歩けてるし、とくに押されることとかもないので気にならない。
先輩に手を引かれながら、本殿を目指す。
「お願い事決めてきましたか?」
「由鶴は?」
「僕ですか? ふふ、はい」
「俺ももう決まってる」
「でもお互い秘密にしておきましょう」
「由鶴がそう言うなら」
マスク越しにこめかみにキスされて、その感触に僕は目を瞑ってしまった。
「キスは直にしたいな、やっぱり」
「そうですね。直にされたいです」
僕は困ったように笑って同意した。
『明けましたね』
『明けたね。今年もよろしくね』
『はい。先輩と過ごす一年が楽しみです』
『一年だけじゃなくて、これから先ずっと楽しみだよ』
『先輩……』
目の前にいたら触れられるのにな……。
夕方まで一緒にいたのに、もう会いたい。
切ないのに幸せで、物足りない気もするのに満たされてる。
先輩に買ってもらった熊のぬいぐるみをぎゅっと抱き締めて、僕はぼんやりと先輩の匂いが嗅ぎたいと思った。
『先輩』
『ん?』
『今度、先輩の匂いがついたもの貸してください……』
『分かった』
クスクスと笑う先輩は甘く蕩けた声で了承の返事をくれた。
『俺にも由鶴の匂いがついたもの貸して欲しいな』
『パーカーでいいですか?』
『なんでもいいよ』
『じゃあ持ってきます』
『うん、お願い』
それからまた明日会うので待ち合わせを確認して電話を切った。
「先輩、好き……」
もう一回ぬいぐるみを抱き締めて、僕はベッドに横になった。
早く会いたいと思う気持ちは止められそうになかった。
◇
「わあ、想像以上に凄い人」
「由鶴、手を離さないようにね」
「はい!」
初詣に少し大きな神社に来たらさすがに凄い人だった。
先輩はマスクに帽子で完全防備で、僕も今日はマスクをしている。
この人混みだし。
こんなに沢山の人の願いを聞く神様も大変だよなあなんて思いつつ、きつく握られた手に頬が緩む。
マスクで匂いはちょっと鈍ってはいるものの、先輩のフェロモンに守られているので、人混みでも怖くない。
先輩と自然とくっつけるのが嬉しくて、僕は上機嫌だった。
「由鶴、大丈夫?」
「はい。これくらいなら」
波に乗って歩けてるし、とくに押されることとかもないので気にならない。
先輩に手を引かれながら、本殿を目指す。
「お願い事決めてきましたか?」
「由鶴は?」
「僕ですか? ふふ、はい」
「俺ももう決まってる」
「でもお互い秘密にしておきましょう」
「由鶴がそう言うなら」
マスク越しにこめかみにキスされて、その感触に僕は目を瞑ってしまった。
「キスは直にしたいな、やっぱり」
「そうですね。直にされたいです」
僕は困ったように笑って同意した。
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