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第五話 王子さまの登場
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「ここにいる全員――特にシグルド・カスケードとミーシャ・フィンドラル! お前たちは絶対に余計な抵抗はするな! お前たちには俺を暗殺しようとした容疑がかかっている!」
明らかに動揺したシグルドに対して、ミーシャは小さく舌打ちしたあとに表情を一変させた。
急に全身をしおらしくさせ、私はか弱い少女ですアピールを始めたのだ。
「誤解です、アストラルさま! 私もシグルドさまもあなたさまの暗殺など企てておりません! 暗殺を企てたのはそこにいるセラス・フィンドラルです!」
何て白々しいの!
私は怒りを通り越して呆れた。
盗人猛々しいとは、まさにミーシャのことを言うのだろう。
だけど、まさかということもある。
アストラルさまはミーシャの言葉を信じてしまうのだろうか。
「お前がミーシャ・フィンドラルだな?」
アストラルさまはミーシャを睨めつける。
「今回の俺の暗殺計画の首謀者がお前だということは、すでに俺の子飼いであるシノビたちの情報で発覚している。他人を意のままに操る、禁術の類のような力を持っていることもな。おそらく、その力を使ってシグルド・カスケードを操っているのだろう」
違います、アストラルさま。
シグルドのカスは、何も操られていない状態で妹を手助けしているんです。
「だが、そのような力は俺たちには通用しない。俺たちにはあらかじめそのような力を相殺させる特殊な魔法を王宮の専属魔術師たちに施してもらったからな。どちらにせよ、ミーシャ・フィンドラル――お前だけは厳しい尋問を受けてもらうから覚悟しろ」
その言葉を聞いた瞬間、ミーシャは肩をすくめてため息を吐いた。
「……あっそ。さすがは麒麟児と謳われていたアストラルさまですね。この短時間でそこまでお調べになられたんですか」
「この私の力と情報網を馬鹿にするな……それに見たことろ、お前は実の姉であるセラス・フィンドラルに罪を着せようとしていたようだな」
「どうしてそう思うのですか?」
「知れたこと。セラス・フィンドラルがそのようなことをするものか。セラスは学院の中でも誰に対しても分け隔てなく接し、生徒たちはもちろん教師たちからも慕われていたのだ。そして学院内の人気のない場所でも武術の鍛錬をこなし、一方で淑女としての振る舞いも欠かさなかった。そのような立派な女性が一国の王子の暗殺など企てるはずがない」
「おやおや、アストラルさまはずいぶんとセラスお姉さまのことに詳しいのですね……もしや、学院内でセラスお姉さまをずっと気にかけていたのですか?」
え? 嘘?
だってアストラルさまはこの国の第1王子よ。
たかが男爵家の令嬢を気にかけるはずがないじゃない。
私はアストラルさまをじっと見つめた。
すると私と目が合ったアストラルさまは、両頬を赤らめながら気まずそうに顔を少しだけ背けた。
待ってください、アストラルさま。
その表情と態度は何なのですか?
もしかして、本当に私を気にかけていらしたのですか?
アストラルさまは咳払いをすると、「それはともかく」と腰の長剣を抜いてミーシャに切っ先を突きつける。
「余計な話はもう終わりだ。ミーシャ・フィンドラル、大人しく投降してもらう。いいな?」
「嫌です」
ミーシャはあっさりと断った。
「このまま捕まったら尋問どころか処刑ですよね? だったら投降ではなく別のことをいたします」
別のことって何?
私がそう思ったとき、アストラルさまも同じことを思ったのか「別のこととは何だ?」とミーシャに問いかけた。
「皆殺しです」
ミーシャはゾッとするほどの凶悪な笑みを浮かべた。
「ここにいる全員、1人残らず皆殺しにいたします」
明らかに動揺したシグルドに対して、ミーシャは小さく舌打ちしたあとに表情を一変させた。
急に全身をしおらしくさせ、私はか弱い少女ですアピールを始めたのだ。
「誤解です、アストラルさま! 私もシグルドさまもあなたさまの暗殺など企てておりません! 暗殺を企てたのはそこにいるセラス・フィンドラルです!」
何て白々しいの!
私は怒りを通り越して呆れた。
盗人猛々しいとは、まさにミーシャのことを言うのだろう。
だけど、まさかということもある。
アストラルさまはミーシャの言葉を信じてしまうのだろうか。
「お前がミーシャ・フィンドラルだな?」
アストラルさまはミーシャを睨めつける。
「今回の俺の暗殺計画の首謀者がお前だということは、すでに俺の子飼いであるシノビたちの情報で発覚している。他人を意のままに操る、禁術の類のような力を持っていることもな。おそらく、その力を使ってシグルド・カスケードを操っているのだろう」
違います、アストラルさま。
シグルドのカスは、何も操られていない状態で妹を手助けしているんです。
「だが、そのような力は俺たちには通用しない。俺たちにはあらかじめそのような力を相殺させる特殊な魔法を王宮の専属魔術師たちに施してもらったからな。どちらにせよ、ミーシャ・フィンドラル――お前だけは厳しい尋問を受けてもらうから覚悟しろ」
その言葉を聞いた瞬間、ミーシャは肩をすくめてため息を吐いた。
「……あっそ。さすがは麒麟児と謳われていたアストラルさまですね。この短時間でそこまでお調べになられたんですか」
「この私の力と情報網を馬鹿にするな……それに見たことろ、お前は実の姉であるセラス・フィンドラルに罪を着せようとしていたようだな」
「どうしてそう思うのですか?」
「知れたこと。セラス・フィンドラルがそのようなことをするものか。セラスは学院の中でも誰に対しても分け隔てなく接し、生徒たちはもちろん教師たちからも慕われていたのだ。そして学院内の人気のない場所でも武術の鍛錬をこなし、一方で淑女としての振る舞いも欠かさなかった。そのような立派な女性が一国の王子の暗殺など企てるはずがない」
「おやおや、アストラルさまはずいぶんとセラスお姉さまのことに詳しいのですね……もしや、学院内でセラスお姉さまをずっと気にかけていたのですか?」
え? 嘘?
だってアストラルさまはこの国の第1王子よ。
たかが男爵家の令嬢を気にかけるはずがないじゃない。
私はアストラルさまをじっと見つめた。
すると私と目が合ったアストラルさまは、両頬を赤らめながら気まずそうに顔を少しだけ背けた。
待ってください、アストラルさま。
その表情と態度は何なのですか?
もしかして、本当に私を気にかけていらしたのですか?
アストラルさまは咳払いをすると、「それはともかく」と腰の長剣を抜いてミーシャに切っ先を突きつける。
「余計な話はもう終わりだ。ミーシャ・フィンドラル、大人しく投降してもらう。いいな?」
「嫌です」
ミーシャはあっさりと断った。
「このまま捕まったら尋問どころか処刑ですよね? だったら投降ではなく別のことをいたします」
別のことって何?
私がそう思ったとき、アストラルさまも同じことを思ったのか「別のこととは何だ?」とミーシャに問いかけた。
「皆殺しです」
ミーシャはゾッとするほどの凶悪な笑みを浮かべた。
「ここにいる全員、1人残らず皆殺しにいたします」
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