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第一話 転移してきた本物の剣聖
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最初に目が覚めたとき、その男は眼前に広がる光景を見て唖然とした。
(ここはどこだ? 俺はどこに迷い込んだ?)
つるつるとした白く硬い地面の大広間。
天井に吊るされた、巨大な行灯のような照明具。
金属の甲冑を着た、南蛮国の侍と思しき人間たち。
まったく見知った光景がないことに男は驚き、もしかすると自分は冥府に落ちてしまったのではないかと激しく戸惑う。
男は鍛え上げられた肉体を持っていた。
背丈は六尺(180センチ)はあるだろう。
精悍な顔つきである。
無造作に伸ばされていた長髪を後頭部の位置でまとめ、放浪生活が長かったことを感じさせるほど皮膚の色が赤銅色をしていた。
雰囲気はどこか悟りを開いた僧侶のようだ。
だが、断じて男の生業は僧侶ではない。
墨染の着古した上衣に、折り目のついた袴姿。
腰帯に差した存在感のある二本の大小刀から、男が一流の剣士であることが窺い知れる。
そして、その男――宮本武蔵は背中に冷や汗を感じながら、自分がなぜこんなところにいるのか必死に記憶を蘇らせた。
(そうだ……俺はあの光の滝に飲まれたのだ)
確か自分は郷里である播磨国(兵庫県)に続く山中を歩いていたとき、突如として天から降り注いできた光の滝に飲まれてしまった。
避けようと思ってもあまりの不可思議な出来事に足が動かず、阿呆のように口を開けながら光の滝に飲まれたのを覚えている。
「よくぞ参った、異世界からの来訪者たちよ! そなたたちこそ、この世界を救う勇者である!」
突如、広々とした室内に腹の底まで響くほどの声が響き渡った。
声を発した主は、白髪の頭に金の冠を被っている老人だ。
日ノ本では見られない重厚そうな椅子に座り、あご先まで伸びている白髪の髭を弄んでいる。
「ふざけんな! 何が勇者だ! そんなことより、ここはどこなんだよ!」
「ぼ、僕たちはどこに連れてこられたんですか! これは誘拐ですよ!」
「ねえ、これってテレビの撮影? そうよね? きっとそうよね? 現実じゃないよね? ね?」
そして武蔵がいた大広間には十数人の少年少女たちもいたのだが、老人の一声をきっかけに少年少女たちは大声でわめき始めたのだ。
武蔵が見たところ、少年少女たちは同じ日ノ本の人間であることは間違いない。
年齢は十五から十七ほどだろうか。
男は身体にぴったりと合った上下とも揃いの黒服を着ており、女は生足が剥き出しのひらひらとした布切れが印象的な服を着ている。
「ふむ、やはり見せねば納得せぬか……アリーゼ」
老人は隣にいた少女にあごをしゃくった。
「かしこまりました」
アリーゼと呼ばれた少女が数歩前に出た。
すると少年少女たちのわめき声がぴたりと止んだ。
それほど少女の風貌と〝気〟の圧力が凄まじかったのだろう。
外見はまさに天女と呼ぶに相応しい美貌の持ち主であった。
年齢は日ノ本の少年少女たちよりも少し上だろうか。
一本一本が上等な絹を思い浮かばせる金色の髪をしており、瞳の色はどこまでも吸い込まれそうな澄んだ碧色である。
またアリーゼと呼ばれた金髪碧眼の少女は、花の刺繍が入った青色の貫頭衣を身に着けていた。
どことなく僧職を感じさせる格好だ。
「異世界から来た〈勇者の卵〉たちよ、とくとご覧なさい」
アリーゼはそう呟くと、壁に向かって開いた左手を突き出した。
その方向に立っていた南蛮の侍が、慌ててその場から離れる。
次の瞬間、少年少女たちと武蔵は激しく動揺した。
アリーゼが何やら呪文を唱えた直後、開いていた左手の先に〝人間の頭部ほどの大きさの火玉〟が出現したのだ。
それだけではなかった。
さらにアリーゼが「火竜の焔」と言い放つと、火玉は強弓から放たれた矢のような速さで飛んだのである。
やがて室内全体に爆音が轟き、壁に衝突したことで弾け飛んだ火玉の火の粉が周囲に霧散していく。
(馬鹿な! そんなことがあるのか!)
武蔵は目の前の光景に大きく目を見張った。
(ここはどこだ? 俺はどこに迷い込んだ?)
つるつるとした白く硬い地面の大広間。
天井に吊るされた、巨大な行灯のような照明具。
金属の甲冑を着た、南蛮国の侍と思しき人間たち。
まったく見知った光景がないことに男は驚き、もしかすると自分は冥府に落ちてしまったのではないかと激しく戸惑う。
男は鍛え上げられた肉体を持っていた。
背丈は六尺(180センチ)はあるだろう。
精悍な顔つきである。
無造作に伸ばされていた長髪を後頭部の位置でまとめ、放浪生活が長かったことを感じさせるほど皮膚の色が赤銅色をしていた。
雰囲気はどこか悟りを開いた僧侶のようだ。
だが、断じて男の生業は僧侶ではない。
墨染の着古した上衣に、折り目のついた袴姿。
腰帯に差した存在感のある二本の大小刀から、男が一流の剣士であることが窺い知れる。
そして、その男――宮本武蔵は背中に冷や汗を感じながら、自分がなぜこんなところにいるのか必死に記憶を蘇らせた。
(そうだ……俺はあの光の滝に飲まれたのだ)
確か自分は郷里である播磨国(兵庫県)に続く山中を歩いていたとき、突如として天から降り注いできた光の滝に飲まれてしまった。
避けようと思ってもあまりの不可思議な出来事に足が動かず、阿呆のように口を開けながら光の滝に飲まれたのを覚えている。
「よくぞ参った、異世界からの来訪者たちよ! そなたたちこそ、この世界を救う勇者である!」
突如、広々とした室内に腹の底まで響くほどの声が響き渡った。
声を発した主は、白髪の頭に金の冠を被っている老人だ。
日ノ本では見られない重厚そうな椅子に座り、あご先まで伸びている白髪の髭を弄んでいる。
「ふざけんな! 何が勇者だ! そんなことより、ここはどこなんだよ!」
「ぼ、僕たちはどこに連れてこられたんですか! これは誘拐ですよ!」
「ねえ、これってテレビの撮影? そうよね? きっとそうよね? 現実じゃないよね? ね?」
そして武蔵がいた大広間には十数人の少年少女たちもいたのだが、老人の一声をきっかけに少年少女たちは大声でわめき始めたのだ。
武蔵が見たところ、少年少女たちは同じ日ノ本の人間であることは間違いない。
年齢は十五から十七ほどだろうか。
男は身体にぴったりと合った上下とも揃いの黒服を着ており、女は生足が剥き出しのひらひらとした布切れが印象的な服を着ている。
「ふむ、やはり見せねば納得せぬか……アリーゼ」
老人は隣にいた少女にあごをしゃくった。
「かしこまりました」
アリーゼと呼ばれた少女が数歩前に出た。
すると少年少女たちのわめき声がぴたりと止んだ。
それほど少女の風貌と〝気〟の圧力が凄まじかったのだろう。
外見はまさに天女と呼ぶに相応しい美貌の持ち主であった。
年齢は日ノ本の少年少女たちよりも少し上だろうか。
一本一本が上等な絹を思い浮かばせる金色の髪をしており、瞳の色はどこまでも吸い込まれそうな澄んだ碧色である。
またアリーゼと呼ばれた金髪碧眼の少女は、花の刺繍が入った青色の貫頭衣を身に着けていた。
どことなく僧職を感じさせる格好だ。
「異世界から来た〈勇者の卵〉たちよ、とくとご覧なさい」
アリーゼはそう呟くと、壁に向かって開いた左手を突き出した。
その方向に立っていた南蛮の侍が、慌ててその場から離れる。
次の瞬間、少年少女たちと武蔵は激しく動揺した。
アリーゼが何やら呪文を唱えた直後、開いていた左手の先に〝人間の頭部ほどの大きさの火玉〟が出現したのだ。
それだけではなかった。
さらにアリーゼが「火竜の焔」と言い放つと、火玉は強弓から放たれた矢のような速さで飛んだのである。
やがて室内全体に爆音が轟き、壁に衝突したことで弾け飛んだ火玉の火の粉が周囲に霧散していく。
(馬鹿な! そんなことがあるのか!)
武蔵は目の前の光景に大きく目を見張った。
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