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第十四話 宮本武蔵のステータス
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二階の奥にあった部屋へと案内された武蔵と伊織は、部屋の主人たる黄姫に「どうぞ、お掛けになってください」と椅子に座るように勧められた。
二人が案内された十畳ほどの簡素な部屋には、長机が一つ置かれていた。
その長机を挟むように、背もたれつきの椅子が二つずつ置かれている。
武蔵と伊織は勧められるままに入り口側の椅子に座った。
一方の黄姫は長机を挟んだ武蔵から見た対面の椅子の横に立っており、二人が先に座ったのを確認したあとに自分も椅子に座った。
「お二人とも身体の具合はいかがですか? あまりよろしくないのでしたら、私の知り合いの薬師を呼ぶこともできますよ。もちろん、その際に掛かった治療費はこちらで負担させていただきますのでご安心ください」
居住まいを正しながら尋ねてきた黄姫に、武蔵は両腕を組んだ状態で首を左右に振った。
「俺は結構だ。これでも痛みには慣れているのでな。あと四半時(約三十分)もすればまともに動けるようになるだろう。それに騒ぎの元を作ったのは他でもない俺のほうゆえ」
それよりも、と武蔵は緊張で畏まっていた伊織のほうを見る。
「俺ではなく、この弟子のほうを診てやってはくれんか。どこもぶつけたわけではないのに、急に体調が悪くなるなど普通ではありえん。何か大事になったあとでは遅い」
「お、お師匠様……」
伊織は目頭が熱くなった。
ほとんど強引に弟子となった自分に対して、本当の親のような気遣いをしてくれた武蔵の優しさがたまらなく嬉しかったからだ。
伊織は武蔵に深く頭を下げた。
「お心遣い、ありがとうございます。私もさっきよりは頭痛もかなり治まってきましたので、治療していただかなくても全然大丈夫です」
言うなり、「やはり、そうですか」と納得したように頷いたのは黄姫である。
「あなたは伊織さんと呼ばれていましたね。その頭痛は持病ではないでしょう?」
黄姫からの質問に、伊織はちょうどよい機会とばかりに素直に答えた。
アルビオン城内において、アルバートと武蔵が闘ったときから始まった頭痛のことをである。
それだけではない。
頭痛が起こっているときに見える、下丹田を中心とした不思議な発光現象のことも全部であった。
「お主……そのようなことが見えていたのか?」
これには張本人の一人である武蔵も驚きを隠せなかったようだ。
「え? お師匠様は見えていなかったのですか?」
そんなもの見えるか、と武蔵は強く言い放った。
「気とは大自然から生まれる生命のざわつきのことだ。そして俺たち人間もその自然に生きる生命の一つゆえ、見えなくとも確かに感じることができる。特に生きるか死ぬかの明暗を分けるほどの修羅場をくぐると、その気を感じ取る力が自然と身につくものよ」
武蔵は真剣な顔つきで言葉を続ける。
「しかし、その気が見えるとなると話は違ってくる。俺たち兵法者はあくまでも武術に長けた武術家であるべきであって、断じて気が見えるなどいうおかしなほうへ行ってはならん。おそらく、お主が見えたというのも幻か何かで――」
あろうな、と武蔵が断言しようとしたときだ。
「いいえ、伊織さんが見たものは幻ではありません。〈天理〉に覚醒した天理使いならば、普通の人間には見ることのできない気の流れが見えるようになるのです。いえ、流れどころか実際に存在そのものを物質として認識することもできます」
伊織は「ちい? てんりつかい?」と小首をかしげた。
あまりにも聞き慣れない専門用語ばかりで要領を得られない。
「失礼しました。気とは今ほど武蔵さんが言われていた気のことであり、そして天理使いとは魔力を使う魔法使いとは正反対の力である気を極限まで練り上げたことによる天理――いわゆる〝天掌板〟を顕現させることができた兵法者のこと。そして、他ならぬ私もそんな兵法者の一人なのです」
ちょっと待ってください、と伊織は驚きの声を上げた。
「黄姫さんは冒険者ギルドのギルド長なんですよね? だったら肩書きは冒険者なのでは?」
「そう思われても仕方ありませんが、私はあくまでも冒険者ギルド連盟からギルド長を任されているだけの立場であって、冒険者そのものを生業としているわけではないのです。そもそも、先ほどから疑問に思っていたのですが、お二人はどこの大陸の何という国からやってきたのですか?」
黄姫はさらに冷静な口調で言葉をつなげていく。
「髪の色や身なりからして、このアルビオン王国でないことはわかります。けれども、少なくとも冒険者ギルド連盟が存在する大陸の国に生まれた者ならば、冒険者登録すらしていない素人が堂々と冒険者ギルドでSランクの仕事を要求するという行為をするはずがありません」
これには伊織も気恥ずかしさのあまり委縮してしまった。
自分がやったことではなかったものの、親同然になった武蔵がやってしまったことは子同然になった自分にも少なからず責任があると伊織は思ったからだ。
などと伊織が口ごもっている間に、黄姫の問いに答えたのは武蔵である。
「俺と伊織は日ノ本という国の生まれだ。しかし、その国はこの世界のどこにも存在しない」
「存在しない、とは?」
「そのままの意味だ。俺と伊織は魔法でこの世界に連れて来られた異世界人だ」
さすがの黄姫もこのときばかりは大きく目を見張った。
だが黄姫が驚いたのは一瞬のことであり、すぐに「なるほど、お二人は異世界人だったのですか」と元の冷静な表情へと戻る。
「あのう、やっぱりこの世界で異世界人は珍しくないのですか?」
あまりにも早く落ち着きを取り戻した黄姫に、伊織はおそるおそる尋ねた。
「はっきり言ってしまえば珍しいですね。普通に暮らしていればまず会うことはないでしょう。そもそも誰が異世界人なのかわからないでしょうし、自分から自分のことを異世界人だと触れ回る異世界人もあまりいませんので」
言われてみればその通りである。
現代の日本に住んでいて、街中を歩いていたら見知らぬ外国人に声をかけられ「私は異世界から召喚魔法でこの世界に来た異世界人です」と言われて信じるかどうかの話に似ていた。
正直、誰も信じないし信じる判断材料がない。
頭がおかしい精神異常者だな、の一言で終わりである。
「ですが、私たちエルフ族は他の種族よりも長命のため、異世界人を目にする機会は多少なりともあります。私も三百年ほど生きていますが、本物の異世界人に会ったのはあなた方を入れて十六人です。ただし、他の十四人は〝天掌板〟を顕現する天理使いではなく、ステータスを顕現する魔法使いでしたが」
その意味深な言葉を伊織は聞き逃さなかった。
「〝天掌板〟って何ですか? それにステータスを顕現する魔法使いって……」
ステータスならば伊織にも理解できる。
異世界転移物の作品の必須事項とも言うべき、自分の能力値などが可視化しやすいように表示される半透明上の板のことだ。
「基本的にステータスというのは魔法使いが使う言葉であって、自分の素性や経歴を確認できる板状体のことです。けれども私たち天理使いは、天より与えられた神通力を掌上に顕現させる文字板――天掌板と呼んでいますけどね」
「すみません、違いがよくわからないのですが……」
「詳しく説明すると長くなりますが、この世界においてどちらの板状体を顕現できるかによって境遇は大きく変わります。特に魔法を絶対視する国においては、どれだけ実力が高くても天掌板を出せる天理使いは認められません。なぜなら、天掌板とステータス――つまり天理と魔法を同時に使える者は一人として存在しないからです」
そう言うと黄姫はおもむろに右手の掌を上に向ける。
すると黄姫の掌の上に半透明な板が出現した。
紛れもないステータスだったが、右手で出せるのは天掌板と言うらしい。
黄姫は天掌板を出現させたまま、伊織に真剣な眼差しを向けた。
「伊織さん……あなたは左手のステータスではなく、右手の天掌板を顕現したことがありますね?」
伊織は反射的に「あ、あります」と答えた。
「見せていただけませんか? 出し方はお任せいたします」
有無を言わせない黄姫の迫力に負けた伊織は、本当に今も出せるのだろうかと困惑しながら右手の掌を上に向けた。
「ステータス・オープン」
と、呟くなり伊織の掌の上に半透明な板が出現した。
伊織は内容をざっと確認してみる。
中身は依然とまったく変わっていない。名前、年齢、身長、体重、職業、備考の欄など履歴書のような事柄が見やすいように記されているのみだ。
「頭痛の正体はそれですよ」
黄姫はきっぱりと断言した。
「伊織さん、あなたは本来であるなら正しい師匠について長年にわたり修行を積まなければ顕現させることができない天掌板を、異世界召喚という歪んだ形で強制的に顕現させられてしまった結果、天理の気の存在に脳が追いつかず頭痛という形で痛みを引き起こしているのです。そして、これらは身近な人間が使う、天理の気の力にも敏感に反応してしまうものなのです」
この説明を受けて伊織は何となく納得した。
よく思い出してみれば急な頭痛が起こったときというのは、武蔵が誰かと闘う際に起こるものだった。
だとすると、武蔵も天掌板を顕現できる天理使いになるのだろうか。
そのとき、伊織は肝心なことに気がついた。
あのときはあまりにも色々なことが一度に起こったせいで気づかなかったが、未だに宮本武蔵のステータスを確認していないことにようやく気がついた。
そんな伊織の疑問を代弁したのは黄姫であった。
「武蔵さん、あなたの天掌板も見せていただいてよろしいでしょうか? この天掌板は明確な身元保証の役割もありますので、万が一、本人の言葉と天掌板の内容に食い違いがあった場合には、ギルド長としてお二人の冒険者登録を認知するわけにはいきません」
「すてえたす・おおぷん……と、決まった所作をして唱えればいいのか?」
「掌を上に向けることは必要ですが、言葉に関して本来は何も言わなくとも念ずれば出せます。魔法使いたちは詠唱気分で唱えるそうですが」
ふむ、と武蔵は一つ頷いて右手の掌を上に向けた。
やはり武蔵も伊織と同じく天理使いだった。
武蔵が何かを念ずるように真剣な表情を作った直後、天掌板が空中にありありと出現したからだ。
だが、武蔵は自分の天掌板を見つめながら、「二刀を使う者として一つでは心許ないな」とおもむろに今度は左手の掌を上に向けて目を閉じる。
次の瞬間、伊織と黄姫は椅子から飛び上がるほど慌てふためいた。
武蔵の左手の掌の上には、もう一つのステータスがはっきりと出現した。
二人が案内された十畳ほどの簡素な部屋には、長机が一つ置かれていた。
その長机を挟むように、背もたれつきの椅子が二つずつ置かれている。
武蔵と伊織は勧められるままに入り口側の椅子に座った。
一方の黄姫は長机を挟んだ武蔵から見た対面の椅子の横に立っており、二人が先に座ったのを確認したあとに自分も椅子に座った。
「お二人とも身体の具合はいかがですか? あまりよろしくないのでしたら、私の知り合いの薬師を呼ぶこともできますよ。もちろん、その際に掛かった治療費はこちらで負担させていただきますのでご安心ください」
居住まいを正しながら尋ねてきた黄姫に、武蔵は両腕を組んだ状態で首を左右に振った。
「俺は結構だ。これでも痛みには慣れているのでな。あと四半時(約三十分)もすればまともに動けるようになるだろう。それに騒ぎの元を作ったのは他でもない俺のほうゆえ」
それよりも、と武蔵は緊張で畏まっていた伊織のほうを見る。
「俺ではなく、この弟子のほうを診てやってはくれんか。どこもぶつけたわけではないのに、急に体調が悪くなるなど普通ではありえん。何か大事になったあとでは遅い」
「お、お師匠様……」
伊織は目頭が熱くなった。
ほとんど強引に弟子となった自分に対して、本当の親のような気遣いをしてくれた武蔵の優しさがたまらなく嬉しかったからだ。
伊織は武蔵に深く頭を下げた。
「お心遣い、ありがとうございます。私もさっきよりは頭痛もかなり治まってきましたので、治療していただかなくても全然大丈夫です」
言うなり、「やはり、そうですか」と納得したように頷いたのは黄姫である。
「あなたは伊織さんと呼ばれていましたね。その頭痛は持病ではないでしょう?」
黄姫からの質問に、伊織はちょうどよい機会とばかりに素直に答えた。
アルビオン城内において、アルバートと武蔵が闘ったときから始まった頭痛のことをである。
それだけではない。
頭痛が起こっているときに見える、下丹田を中心とした不思議な発光現象のことも全部であった。
「お主……そのようなことが見えていたのか?」
これには張本人の一人である武蔵も驚きを隠せなかったようだ。
「え? お師匠様は見えていなかったのですか?」
そんなもの見えるか、と武蔵は強く言い放った。
「気とは大自然から生まれる生命のざわつきのことだ。そして俺たち人間もその自然に生きる生命の一つゆえ、見えなくとも確かに感じることができる。特に生きるか死ぬかの明暗を分けるほどの修羅場をくぐると、その気を感じ取る力が自然と身につくものよ」
武蔵は真剣な顔つきで言葉を続ける。
「しかし、その気が見えるとなると話は違ってくる。俺たち兵法者はあくまでも武術に長けた武術家であるべきであって、断じて気が見えるなどいうおかしなほうへ行ってはならん。おそらく、お主が見えたというのも幻か何かで――」
あろうな、と武蔵が断言しようとしたときだ。
「いいえ、伊織さんが見たものは幻ではありません。〈天理〉に覚醒した天理使いならば、普通の人間には見ることのできない気の流れが見えるようになるのです。いえ、流れどころか実際に存在そのものを物質として認識することもできます」
伊織は「ちい? てんりつかい?」と小首をかしげた。
あまりにも聞き慣れない専門用語ばかりで要領を得られない。
「失礼しました。気とは今ほど武蔵さんが言われていた気のことであり、そして天理使いとは魔力を使う魔法使いとは正反対の力である気を極限まで練り上げたことによる天理――いわゆる〝天掌板〟を顕現させることができた兵法者のこと。そして、他ならぬ私もそんな兵法者の一人なのです」
ちょっと待ってください、と伊織は驚きの声を上げた。
「黄姫さんは冒険者ギルドのギルド長なんですよね? だったら肩書きは冒険者なのでは?」
「そう思われても仕方ありませんが、私はあくまでも冒険者ギルド連盟からギルド長を任されているだけの立場であって、冒険者そのものを生業としているわけではないのです。そもそも、先ほどから疑問に思っていたのですが、お二人はどこの大陸の何という国からやってきたのですか?」
黄姫はさらに冷静な口調で言葉をつなげていく。
「髪の色や身なりからして、このアルビオン王国でないことはわかります。けれども、少なくとも冒険者ギルド連盟が存在する大陸の国に生まれた者ならば、冒険者登録すらしていない素人が堂々と冒険者ギルドでSランクの仕事を要求するという行為をするはずがありません」
これには伊織も気恥ずかしさのあまり委縮してしまった。
自分がやったことではなかったものの、親同然になった武蔵がやってしまったことは子同然になった自分にも少なからず責任があると伊織は思ったからだ。
などと伊織が口ごもっている間に、黄姫の問いに答えたのは武蔵である。
「俺と伊織は日ノ本という国の生まれだ。しかし、その国はこの世界のどこにも存在しない」
「存在しない、とは?」
「そのままの意味だ。俺と伊織は魔法でこの世界に連れて来られた異世界人だ」
さすがの黄姫もこのときばかりは大きく目を見張った。
だが黄姫が驚いたのは一瞬のことであり、すぐに「なるほど、お二人は異世界人だったのですか」と元の冷静な表情へと戻る。
「あのう、やっぱりこの世界で異世界人は珍しくないのですか?」
あまりにも早く落ち着きを取り戻した黄姫に、伊織はおそるおそる尋ねた。
「はっきり言ってしまえば珍しいですね。普通に暮らしていればまず会うことはないでしょう。そもそも誰が異世界人なのかわからないでしょうし、自分から自分のことを異世界人だと触れ回る異世界人もあまりいませんので」
言われてみればその通りである。
現代の日本に住んでいて、街中を歩いていたら見知らぬ外国人に声をかけられ「私は異世界から召喚魔法でこの世界に来た異世界人です」と言われて信じるかどうかの話に似ていた。
正直、誰も信じないし信じる判断材料がない。
頭がおかしい精神異常者だな、の一言で終わりである。
「ですが、私たちエルフ族は他の種族よりも長命のため、異世界人を目にする機会は多少なりともあります。私も三百年ほど生きていますが、本物の異世界人に会ったのはあなた方を入れて十六人です。ただし、他の十四人は〝天掌板〟を顕現する天理使いではなく、ステータスを顕現する魔法使いでしたが」
その意味深な言葉を伊織は聞き逃さなかった。
「〝天掌板〟って何ですか? それにステータスを顕現する魔法使いって……」
ステータスならば伊織にも理解できる。
異世界転移物の作品の必須事項とも言うべき、自分の能力値などが可視化しやすいように表示される半透明上の板のことだ。
「基本的にステータスというのは魔法使いが使う言葉であって、自分の素性や経歴を確認できる板状体のことです。けれども私たち天理使いは、天より与えられた神通力を掌上に顕現させる文字板――天掌板と呼んでいますけどね」
「すみません、違いがよくわからないのですが……」
「詳しく説明すると長くなりますが、この世界においてどちらの板状体を顕現できるかによって境遇は大きく変わります。特に魔法を絶対視する国においては、どれだけ実力が高くても天掌板を出せる天理使いは認められません。なぜなら、天掌板とステータス――つまり天理と魔法を同時に使える者は一人として存在しないからです」
そう言うと黄姫はおもむろに右手の掌を上に向ける。
すると黄姫の掌の上に半透明な板が出現した。
紛れもないステータスだったが、右手で出せるのは天掌板と言うらしい。
黄姫は天掌板を出現させたまま、伊織に真剣な眼差しを向けた。
「伊織さん……あなたは左手のステータスではなく、右手の天掌板を顕現したことがありますね?」
伊織は反射的に「あ、あります」と答えた。
「見せていただけませんか? 出し方はお任せいたします」
有無を言わせない黄姫の迫力に負けた伊織は、本当に今も出せるのだろうかと困惑しながら右手の掌を上に向けた。
「ステータス・オープン」
と、呟くなり伊織の掌の上に半透明な板が出現した。
伊織は内容をざっと確認してみる。
中身は依然とまったく変わっていない。名前、年齢、身長、体重、職業、備考の欄など履歴書のような事柄が見やすいように記されているのみだ。
「頭痛の正体はそれですよ」
黄姫はきっぱりと断言した。
「伊織さん、あなたは本来であるなら正しい師匠について長年にわたり修行を積まなければ顕現させることができない天掌板を、異世界召喚という歪んだ形で強制的に顕現させられてしまった結果、天理の気の存在に脳が追いつかず頭痛という形で痛みを引き起こしているのです。そして、これらは身近な人間が使う、天理の気の力にも敏感に反応してしまうものなのです」
この説明を受けて伊織は何となく納得した。
よく思い出してみれば急な頭痛が起こったときというのは、武蔵が誰かと闘う際に起こるものだった。
だとすると、武蔵も天掌板を顕現できる天理使いになるのだろうか。
そのとき、伊織は肝心なことに気がついた。
あのときはあまりにも色々なことが一度に起こったせいで気づかなかったが、未だに宮本武蔵のステータスを確認していないことにようやく気がついた。
そんな伊織の疑問を代弁したのは黄姫であった。
「武蔵さん、あなたの天掌板も見せていただいてよろしいでしょうか? この天掌板は明確な身元保証の役割もありますので、万が一、本人の言葉と天掌板の内容に食い違いがあった場合には、ギルド長としてお二人の冒険者登録を認知するわけにはいきません」
「すてえたす・おおぷん……と、決まった所作をして唱えればいいのか?」
「掌を上に向けることは必要ですが、言葉に関して本来は何も言わなくとも念ずれば出せます。魔法使いたちは詠唱気分で唱えるそうですが」
ふむ、と武蔵は一つ頷いて右手の掌を上に向けた。
やはり武蔵も伊織と同じく天理使いだった。
武蔵が何かを念ずるように真剣な表情を作った直後、天掌板が空中にありありと出現したからだ。
だが、武蔵は自分の天掌板を見つめながら、「二刀を使う者として一つでは心許ないな」とおもむろに今度は左手の掌を上に向けて目を閉じる。
次の瞬間、伊織と黄姫は椅子から飛び上がるほど慌てふためいた。
武蔵の左手の掌の上には、もう一つのステータスがはっきりと出現した。
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