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第一話
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「これで彼女もこれからの魔物討伐で大怪我や死なずに済みます。テリーさん、あなたのしたことはパーティーにとってもアリスさんにとっても大英断でしたよ」
アリスが去ったあと、隣にいたマイアがにこやかな笑みで言ってくる。
マイアは俺と同じ、18歳の金髪碧眼の僧侶だ。
僧侶と言っても回復魔法のみならず、攻撃魔法や補助魔法、それに精神異常の魔法なども使いこなす逸材だった。
容姿もとても良い。
いや、良すぎると言っても過言ではない。
男前と形容できたアリスと違って、可愛いと表現できる猫のような愛嬌を持つ少女だった。
「でも、本当にこれでよかったのだろうか? 別にパーティーから追放させなくても、それこそサポーターとしていてくれれば……」
「ダメです!」
マイアはテーブルを叩いて言い放った。
「私はこれまでに数多くのパーティーで働いてきましたが、そういう実力のない者に対する憐れみを見せたことで、憐れみをかけられた人たちが不幸になっていく様をたくさん見てきました」
マイアは言葉を続ける。
「テリーさん、あなたはアリスさんをそんな人たちと同じ目に遭わせたいんですか? 違いますでしょう? 彼女が今後も五体満足で幸せに暮らしていくためには、ここでリーダーであるテリーさんが心を鬼にしてもアリスさんを追放させるしかなかった」
マイアは悲しそうな目で俺を見つめてくる。
ああ……何て魅力的な瞳なんだ。
いつから、このマイアの瞳を美しいと思ったのだろう。
マイアがこのパーティーに入って早2週間。
いつの間にか俺はこの瞳に見つめられるとどうしようもなく高揚し、いつしか恋人だったアリスよりもマイアのことしか考えられなくなった。
だからこそ、俺はつい数日前に決心したのだ。
アリスと別れてこの先はマイアを愛そうと。
そんなマイアは人目もはばからず俺に抱き着いてくる。
「本当にごめんなさい。お辛かったでしょう。いくら私から提案したこととはいえ、幼馴染であり元恋人にあんなことを言うのは」
俺があたふたしていると、他の仲間たちは「あとはお2人でご勝手に」と言って部屋から出ていく。
きっと俺たちに気を利かせてくれたのだろう。
ならば、俺がやることは1つだ。
俺はマイアを強く抱きしめた。
「アリスを追放したのは心苦しい。だが、ここには君がいる。君さえ傍にいてくれれば、もう今はそれでいい……マイア、君のことを愛している」
「アリスさんよりも?」
「ああ、アリスよりも今は君を愛しているよ」
「嬉しい」
俺たちはこのあと冒険者ギルドを出ると、他の仲間たちが泊っている宿屋とは別な宿屋へと向かった。
そして――。
俺たちは朝まで互いに愛を確かめ合った。
今ならばはっきりと言える。
ありとあらゆる魔法を使いこなす僧侶マイア。
年齢とは裏腹に多くのパーティーを渡り歩き、実戦経験とは別な意味での経験も豊富だった僧侶マイア。
容姿も抜群で守ってやりたくなるほど愛くるしかった僧侶マイア。
今ならばはっきりと言える。
この女に出会ったことが、俺の人生の中で最大最凶の汚点だったことに。
アリスが去ったあと、隣にいたマイアがにこやかな笑みで言ってくる。
マイアは俺と同じ、18歳の金髪碧眼の僧侶だ。
僧侶と言っても回復魔法のみならず、攻撃魔法や補助魔法、それに精神異常の魔法なども使いこなす逸材だった。
容姿もとても良い。
いや、良すぎると言っても過言ではない。
男前と形容できたアリスと違って、可愛いと表現できる猫のような愛嬌を持つ少女だった。
「でも、本当にこれでよかったのだろうか? 別にパーティーから追放させなくても、それこそサポーターとしていてくれれば……」
「ダメです!」
マイアはテーブルを叩いて言い放った。
「私はこれまでに数多くのパーティーで働いてきましたが、そういう実力のない者に対する憐れみを見せたことで、憐れみをかけられた人たちが不幸になっていく様をたくさん見てきました」
マイアは言葉を続ける。
「テリーさん、あなたはアリスさんをそんな人たちと同じ目に遭わせたいんですか? 違いますでしょう? 彼女が今後も五体満足で幸せに暮らしていくためには、ここでリーダーであるテリーさんが心を鬼にしてもアリスさんを追放させるしかなかった」
マイアは悲しそうな目で俺を見つめてくる。
ああ……何て魅力的な瞳なんだ。
いつから、このマイアの瞳を美しいと思ったのだろう。
マイアがこのパーティーに入って早2週間。
いつの間にか俺はこの瞳に見つめられるとどうしようもなく高揚し、いつしか恋人だったアリスよりもマイアのことしか考えられなくなった。
だからこそ、俺はつい数日前に決心したのだ。
アリスと別れてこの先はマイアを愛そうと。
そんなマイアは人目もはばからず俺に抱き着いてくる。
「本当にごめんなさい。お辛かったでしょう。いくら私から提案したこととはいえ、幼馴染であり元恋人にあんなことを言うのは」
俺があたふたしていると、他の仲間たちは「あとはお2人でご勝手に」と言って部屋から出ていく。
きっと俺たちに気を利かせてくれたのだろう。
ならば、俺がやることは1つだ。
俺はマイアを強く抱きしめた。
「アリスを追放したのは心苦しい。だが、ここには君がいる。君さえ傍にいてくれれば、もう今はそれでいい……マイア、君のことを愛している」
「アリスさんよりも?」
「ああ、アリスよりも今は君を愛しているよ」
「嬉しい」
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俺たちは朝まで互いに愛を確かめ合った。
今ならばはっきりと言える。
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年齢とは裏腹に多くのパーティーを渡り歩き、実戦経験とは別な意味での経験も豊富だった僧侶マイア。
容姿も抜群で守ってやりたくなるほど愛くるしかった僧侶マイア。
今ならばはっきりと言える。
この女に出会ったことが、俺の人生の中で最大最凶の汚点だったことに。
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