【完結】ナチュラルキラー46 ~異世界転移から始まる、最強の強化少年と最硬の機人による復讐冒険譚~

ともボン

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第十三話    激闘

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 四狼と敵との距離が一瞬で詰まる。

 四狼を最初に迎え撃ったのは兵隊崩れの男だった。

 がっしりとした体格に合わせて選んだと見える長柄の戦斧を力任せに振り回してくる。狙いは足だ。

 右手一本で〈忠吉〉を握っていた四狼は、走る速度を緩めない。

 自分の足を刈り取ろうと向かってくる戦斧の軌道を正確に読み、地面を蹴って高らかに跳躍した。

 ぶおん! と重圧的な風切り音が響くと同時に、数十枚の枝葉が中空に舞い上がる。

 四狼は兵隊崩れの斬撃を跳躍することで綺麗にかわしていた。

 それだけではない。

 身体を自由に動かせない空中において、四狼は兵隊崩れの肩口に〈忠吉〉を振り下ろした。

 兵隊崩れの右鎖骨の部位がぱっくりと割れ、傷口から勢いよく鮮血が噴出す。

 兵隊崩れの男は戦斧を地面に落とし、自らも地面に倒れ込んだ。

 地面に着地した四狼は兵隊崩れの男には目も暮れず、次の相手に視線を見やる。

 続いて四狼に襲い掛かった男は、頭部と肩をすっぽりと覆うほどの頭巾を被っていた小柄な男だった。

 両手に持った短剣を自在に操り、四狼の顔面や首筋などの急所に向かって目にも止まらぬ連続攻撃を繰り出してくる。

「ふっ――」

 短く呼気を吐いた四狼は、小柄な男の連続攻撃に臆することなく右手を跳ね上げた。

 虚空に煌く一条の閃光。

 真下から真上に跳ね上げた四狼の〈忠吉〉は、小柄な男の右手を肘の辺りから斬り飛ばしていた。

 すかさず追撃。

 小柄な男の腕を斬り飛ばした四狼は、唖然としている小柄な男の顔面に向かって強烈な蹴りを放った。

 小柄な男は面白いように吹っ飛び、後方にあった大木に激突した。

 そのままずるずると地面に倒れ込む。

 オリビアは鮮やかな手練を見せた四狼から金剛丸に視線を移す。

 こちらも四狼に負けないほどの実力を遺憾なく発揮していた。

 圧倒的な体格を誇る金剛丸にさすがの盗賊たちも少し怖気ついたのか、一人の金剛丸に対して盗賊たちは三人同時に襲い掛かった。

 三人とも同じように頭と肩を覆う頭巾を被っていたが、それぞれ手に持つ武器は違う。

 両刃の長剣に鎌のように湾曲している短剣、先端に金属の塊が取り付けられた珍しい棍棒を持った者もいた。

 やられるか。

 三人の盗賊に囲まれた金剛丸を見て一瞬そう思ってしまったオリビアだったが、その考えがいかに浅はかだったかはすぐに気がついた。

 三人の盗賊たちが金剛丸の胴体を狙って攻撃を仕掛けたとき、金剛丸は成人男性の胴体ほどもある巨腕を水平に薙いだ。

 ただそれだけである。

 たったそれだけの行動で三人の盗賊たちは暴風に煽られた紙切れの如く空中に舞った。

 時間差に地面に次々と叩きつけられた三人の盗賊たちは、全員が頭から落ちたので即死だったのだろう。

 地面に落ちたその後は、誰一人としてピクリとも動きを見せなかった。

「何だ……こいつらの強さは……」

 思わずオリビアは呟いた。

 片手で特殊な意匠を凝らした長剣を操る四狼の腕も見事だったが、それ以上に金剛丸の強さは異常であった。

 片手を振り回しただけで大の男三人を空中に舞い上がらせるなど尋常な力ではない。

 本当に同じ人間なのだろうか。

 そう思ったとき、オリビアの視界に盗賊の姿が飛び込んできた。

 鉄兜を被った口髭の男が長剣を突きつけながら突進してくる。

 オリビアはふと目が覚めた。

 あまりにも凄まじい四狼と金剛丸の力量に目が釘付けになってしまっていたが、よく考えれば今は戦闘の真っ最中なのである。

(くっ、負けてはいられない)

 オリビアは長剣を中段に構えて口髭の男を迎え撃った。

 相手は一人。

 獲物は同じ長剣。

 ならば近衛騎士団の騎士が負けるはずはない。

 口髭の男は無造作に突進しながら長剣を上段に構えた。

 そのまま体重移動を利用してオリビアの頭上目掛けて真っ直ぐ振り下ろしてくる。

 型も意外と堂に入っていたのでやはり兵隊崩れなのだろう。

 しかし、甘い。

 頭上に振り下ろされてくる長剣の軌道を読んだオリビアは、身体をさっと半身に移行して紙一重で斬撃をかわした。

「ちぇい!」

 裂帛の気合からオリビアは反撃に打って出た。

 身体を半身にした時点で中段に構えていた長剣を下段に構えなおしていたオリビアは、鋭い踏み込みから水平に長剣を走らせる。

 斬! 

 と、オリビアが薙いだ長剣は口髭の男の首半分を掻き斬った。

 両手でしっかりと握っていた柄から感じられる致命傷の手応え。

 オリビアは後方を振り返った。

 首半分を斬られた口髭の男が、大地に血溜まりを作ってうつ伏せに倒れていた。

 気がつくと盗賊団六人は全滅。

 一方、こちらは損害なし。

 大勝利である。

「ふうう……」

 長剣に付着した血油をハンカチで綺麗に拭き取ったオリビアは、安堵の息を漏らしながら長剣を鞘に納めた。

 こうして剣はきちんと血油を拭き取って鞘に納めないと、鞘の中で血がべたつき下手をすると二度と使い物にならなくなる。

 そして長剣を納めたオリビアは、自分が斬った口髭の男や四狼、金剛丸が倒した他の盗賊たちを一望した。

(こいつら、本当にセシリア様を連れ去った盗賊団なのか)

 それはオリビアの素直な本音であった。

 はっきり言って、護衛を務めていた近衛騎士団を全滅させてセシリアを連れ去った盗賊たちとはとても思えなかった。

 戦闘の技量はそこそこにあるが、やはりそれでも近衛騎士団には敵わない。

 この程度の盗賊団ならばセシリアを護衛していた騎士たちだけでも難なく撃退していただろう。

 何か腑に落ちない。

 それに妙な胸騒ぎもする。

 心臓の辺りがじくじくと痛み、まるで身体全体が言い知れぬ警告を発しているかのように。

 オリビアはまだ剣を納めない四狼に向かって近づいていく。

「おい、きさ……し、四狼」

 つい貴様と言いそうになってオリビアはすぐさま訂正した。

 本当ならば「おい」や「貴様」で事足りるのだが、よく考えれば騎士ともあろう者が他人を見下すような言い方をするのは恥だ。

 わずかな期間ではあるが、名前で呼んで欲しいのならば名前で呼ぼう。

 おほん、と小さく咳き込んだオリビアは、もう一度きちんと呼ぼうと口を開いた。

 その刹那――。

「オリビア、剣を抜け。まだ終わっていない」

 四狼は真剣な表情でつぶやいた。
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