【完結】ナチュラルキラー46 ~異世界転移から始まる、最強の強化少年と最硬の機人による復讐冒険譚~

ともボン

文字の大きさ
20 / 37

第二十話    真実

しおりを挟む
「私の本名はオルセイア・リズムナリ・バルセロナ。バルセロナ公国王位継承権第二位の資格を持っていたらしい」

「らしい?」

 まるで他人事のように答えたオリビアに四狼は小首を傾げた。

 オリビアはそんな四狼の態度を見てくすりと笑うと、四狼に問いかける。

「四狼、私は何歳に見える?」

 唐突に話の主旨が変わったことに四狼は目を細めたが、やがて思った年齢を答えた。

「……十七か十八?」

「二十五だ」

 明らかに四狼の目が点になった。

 さすがにこれは予想外なことだったのだろう。

 オリビアはふふふ、と笑った後に顔を上げて空を仰いだ。

 豪雨を降らせていた暗色の雲は流れ去り、今では夜空に宝石が散らばったように幾つもの星が浮かんでいた。

「お前には助けてもらった恩があるからな」

 オリビアは夜空から四狼に視線を移すと、ゆっくりと自分の過去を話し始めた。

「私はカルナゴルというバルセロナ公国領内と隣国であるアスナルド公国の国境にあった小さな山村で目覚めた。

 田畑を耕して小麦を栽培し、納屋で羊などの家畜を飼って生計を立てていた小さな村だった」

 オリビアの話を四狼は静かに聞いている。

「初めて目が覚めたとき、目の前に一人の女性がいた。美しい顔立ちの黒い髪が印象的な女性。十年以上の間、ずっと母親と思っていた人だった」

「実の母親じゃなかったのか?」

 四狼が聞き返すと、オリビアはこくりと頷いた。

「その人は目が覚めた私にこう言った。貴方は今までのことを覚えているか? と。咄嗟に聞かれた質問に私はしばらく考えた。すると不思議なことに、まったく何も思い出せなかった。自分の名前はもちろん何もかもだ」

 そう、今でもあのときのことは鮮明に覚えている。

 何も思い出せないと動揺した私を優しく抱きしめてくれた母親のことを。

「その人はこうも言った。貴方は五歳のときから五年間、ずっと眠り続けて成長が止まっていた。だから外見は五歳に見えるけど本当は十歳なのよ、と」

 ふふふ、とオリビアは笑った。

「それから私は十年間、そのカルナゴルで生活した。記憶を失っていた私は黒髪の女性を母親だと思い込むしかなかった。その人も私を本当の娘として育ててくれた。だが、いつも頭の片隅で思っていた。何故、私は記憶を失ってしまったのだろう? とな」

「訊く機会はなかったのか?」

「多分、あったんだろうな。でも恐ろしく怖かった。本当のことを聞くことで今の生活が壊れてしまうのではないかと子供心に何度も思った。それはそうだろう? 自分がどこで生まれてどんな生活をしていたのかすべて忘ていたんだ。オリビアという名前も育ててくれた母親がつけてくれた。何でも、祖母の名前から貰ったらしい」

 オリビアの話は続く。

「すべてを知ったのは十五歳のときだ。まあ、実年齢は二十歳だったが……すまん、話が逸れたな。その十五歳のときに、私は騎士になるために村を出ることを決意した。目が覚めてから村で過ごすうちにそう思ったこともあるし、その年から女性でも騎士団に入団できるとわかったことが大きかった。だが、一番の原因は母親が流行病にやられ、この世を去ってしまったことだ」

「じゃあ、オリビアはいつ記憶が戻ったんだ? その……自分が王族だったと」

「遺言だ」

 オリビアは簡素に答えた。

「記憶は今でも戻っていない。母親だと思っていた女性が死ぬ前に教えてくれた。私がバルセロナ公国王位継承権第二位の資格を持っているオルセイアという王女だということ、そして実の母親と護衛騎士に守られた馬車で移動中に何者かの襲撃を受けてしまったということ」

 そこまで話すと、オリビアは大きく息を吸い込み静かに吐き出した。

「私がずっと母親だと思い込んでいた女性は実の母親の侍女だった。馬車が襲撃にあった際に幼かった私を連れて命からがら逃げ出せたらしい」

「だからだった」とオリビアは言葉を繋げた。

「母親だと思っていた侍女は、私に白銀色の髪は決して他人に見られてはいけないと言い続けた。その理由は――」

「オリビアが生きていることが知れたら、実の母親や護衛たちを殺した襲撃者がまた命を狙いにくる。だから身を隠す必要があった。何故なら、襲撃者を雇ったのは他の王位継承権を持つ人間だった……とか?」

 今度はオリビアの目が点になった。まさしくその通りである。

 母親だと思っていた侍女は、馬車を襲った人間たちに心当たりがあった。

 いや、厳密に言うと雇った人間に心当たりがあったと言った。

 クレイネル・リズムナリ・バルセロナ。

 王位継承権第三位の資格を持つ、オリエンタ・リズムナリ・バルセロナの実母である。

 四狼はオリビアの驚いた表情を見てふっと鼻で笑った。

「別にそんなに驚くことじゃないだろう。これだけ話を聞けば誰だって予想はできる」

 そう言うと四狼は、隣に置いてあった生木を手に取って焚き火にくべた。

「それで、オリビアはどうしたいんだ?」

 一拍の間を空けて、オリビアは聞き返した。

「どうしたいとは?」

「決まってるだろう。オリビアが王位継承権第二位の資格を持っているのなら、次の女王はアンタで決まりだ」

 一瞬、オリビアは四狼の言っていることがわからなかった。

 しかし時間が経つにつれてその意味が理解でき、オリビアは憤然と声を上げた。

「き、貴様! セシリア様がもう生きていないとでも言うつもりか!」

 歯を食い縛って全身から殺意を滲み出したオリビアだったが、四狼はちらりと顔を向けただけで平然としていた。無表情と言ってもいい。

「じゃあ逆に訊くが、半年以上も盗賊団に拉致された一国の女王が無事でいるとでも本気で思っているのか?」

 その言葉を聞いた瞬間、ぐらり、とオリビアの視界が歪んだ。

 思いたくなかった。思わないようにしていた。否定していた。否定し続けていた。

 だが、本当は気づいていた。セシリアの生存が最早絶望的だということぐらい。

「それでも」

 喉の奥から必死に言葉を搾り出し、オリビアは四狼に言った。

「それでも私はセシリア様を助けにいく」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

文字変換の勇者 ~ステータス改竄して生き残ります~

カタナヅキ
ファンタジー
高校の受験を間近に迫った少年「霧崎レア」彼は学校の帰宅の最中、車の衝突事故に巻き込まれそうになる。そんな彼を救い出そうと通りがかった4人の高校生が駆けつけるが、唐突に彼等の足元に「魔法陣」が誕生し、謎の光に飲み込まれてしまう。 気付いたときには5人は見知らぬ中世風の城の中に存在し、彼等の目の前には老人の集団が居た。老人達の話によると現在の彼等が存在する場所は「異世界」であり、元の世界に戻るためには自分達に協力し、世界征服を狙う「魔人族」と呼ばれる存在を倒すように協力を願われる。 だが、世界を救う勇者として召喚されたはずの人間には特別な能力が授かっているはずなのだが、伝承では勇者の人数は「4人」のはずであり、1人だけ他の人間と比べると能力が低かったレアは召喚に巻き込まれた一般人だと判断されて城から追放されてしまう―― ――しかし、追い出されたレアの持っていた能力こそが彼等を上回る性能を誇り、彼は自分の力を利用してステータスを改竄し、名前を変化させる事で物体を変化させ、空想上の武器や物語のキャラクターを作り出せる事に気付く。

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

処理中です...