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第9話 大事件の予感
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生徒会長権限について議論していると、秋兵が羽美の肩に軽く手を添えた。
「そういきり立つなよ。羽美だって本当のところは分かっているだろ? 連中に対して生徒会長権限なんて行使したら比喩じゃなくて本当に殺される危険性がある。何せ同じ生徒の1人に強制的に停学か退学を言い渡されるんだ。連中にしてみればプライドを踏み躙られるほどの屈辱だろうからな」
確かに秋兵の言うことは一理あると羽美は思った。
最近、また少年犯罪がアメリカ並みに激増している。
喧嘩沙汰や脅迫行為など日常茶飯事。徒党を組んでの強盗や凶器を使用した殺傷事件、ヤクザから仕入れているのだろう麻薬の使用など一昔では考えられなかった犯罪行為が目立ち、数ヶ月前にも隣町にあったライブハウスが警察の強制捜査を受けた折に大麻や覚醒剤などが大量に発見されたとのニュースが流れた。
そのような経緯が世間に横行していたため、近年では生徒会長権限が悪い方向に行使された事実は皆無であった。
理由は簡単だ。
生徒会長たちも六郎のように報復を恐れているからである。
「だからといって、このまま問題の生徒を野放しする理由にはならないはずです。ここは生徒会の面目を回復させるためにも会長が立つべきなのでは?」
「悪いけど何度言われようが僕には荷が重過ぎる。君は空手を習って腕に覚えがあり、さらにはこの学園の理事長の孫娘だから強気に言えるんだろう。けど僕は至って普通の生徒なんだ。それは生徒会長という立場であっても変わらない。それにそんなに連中を処分したければ、理事長に直訴するか君が次の生徒会長に立候補すればいい」
羽美は神妙な面持ちで両腕を緩く組んだ。
もちろん、次の生徒会長に羽美は立候補するつもりである。
どのみち1ヶ月も経たずに六郎は生徒会長の任を解かれ、再び全校生徒から会長が選抜されて新生徒会が発足される。
そして次の生徒会長は高確率で羽美が選ばれるだろう。
それは生徒たちから慕われているとか人気があるということではなく、ただ単に生徒会長に立候補する人間が誰もいないのだ。
前回もそうだった。
損な役回りを教職員たちから押しつけられる生徒会長など誰もなりたがらなかった結果、教職員たちが優秀な生徒たちから独断と偏見で生徒会長を選ぶという前代未聞の処置が取られた。
その末に抜擢されたのが真壁六郎である。
だが生来の大人しさと内気な性格が混同していた六郎は、教職員たちには重宝されていたが生徒たちからは密かに陰口を叩かれているという。
曰く――歴代で一番生徒会長に似つかわしくない男、と。
「そういうわけで僕はもう生徒会とはあまり関わりたくない。本音を言えばこうして生徒会で居残るよりも塾へ行って受験勉強したいんだ」
無気力にも程がある意見だ。
どういう理由があろうと今はまだ六郎が生徒会長なのは変わらない事実である。
ならば生徒会長最後の仕事として、現学園の問題解決に尽力しようという意志はないのだろうか。
(ないんだろうな……この人には)
羽美はちらちらと腕時計で時刻を確認している六郎を見た。
どうやら一刻も早く議題を終わらせて帰宅したいのだろう。
時刻を確認する所作があざと過ぎる。
はあ、と溜息を1つ。
羽美は副生徒会長として意見を述べた。
「分かりました。会長が任期を終了するまでは私が率先して問題解決に取り組みます。会長は各先生方に定期報告して頂くだけで結構です。それでよろしいですか?」
「う、うんうん。君がそう言ってくれるのなら僕としては何も言うことはないよ」
六郎は花が咲いたように表情を明らめた。
現金な男である。
自分に被害が及ばないと分かるとこうも態度と口調が豹変するのか。
心中で六郎に対する評価を極端に落としていくと、隣にいた秋兵も会議が佳境に迫ってきたことを明確に察したのだろう。
現時点で浮き彫りになっていた問題を発言した。
「長々と最近の学園で起こっている各問題点を議論してきたけど、実際に一般生徒はどう思っているか生徒の1人に訊いていみよう。名護君」
その名前が呼ばれた直後、四人の生徒会役員の視線はある一点に集中した。
位置的には部屋の奥、スチール製のロッカーが置かれている手前である。
椅子にぽつねんと座っていた男子生徒は両腕を組みながら頭を垂れていた。
名護武琉である。
「あいつ寝てるんじゃない? まったく動かないわよ」
羽美が指摘したように武琉は秋兵の声に反応しなかった。
肩が小さく上下に動いているので呼吸はしているのだろう。
だとすると夢幻の世界を彷徨っている可能性が高い。
「どうやらあまりにも詰まらないから寝ちゃったんだろう。それによく考えてみれば彼は今日転校してきたばかりでこの学園について何も知らない。生徒会だ〈ギャング〉だと言われても答えられないだろうね」
では、なぜ連れてきたのかという疑問を抱いている六郎と千鶴に羽美が言った。
「会長や千鶴ちゃんにも紹介しておくわ。あいつの名前は名護武琉。今日、私のクラスに沖縄から転校してきたのよ」
「付け加えると、羽美の婚約者でもある」
「えっ、どういうことですか?」
婚約者という括りに俄然食い付いてきた千鶴を強制的に黙らせるため、羽美は長机を破壊する勢いで掌を叩きつけた。
「そんなことはどうでもいいのよ! 私が彼を連れてきたのは新しい生徒会に引き入れるためなんです」
羽美は事情を知らない六郎と千鶴の顔を交互に見ながら言葉を発する。
「会長が任期を終了したとしても新会員が補充できるとは思えない。ならば手っ取り早くこちらから引き入れたほうが早いでしょう。幸いにも彼は自主的に生徒会に入会する意思を固めてくれました。今日連れてきたのは一種のお披露目みたいなものです」
そのとき、隣にいた秋兵が小声で「無理やり入会されるのは自主的とは言わないんじゃないのかな?」と漏らしたが、羽美は軽く無視して話を続けた。
「と言うわけで、明日より彼を加えた6人で活動することにします。大丈夫、すでに先生たちに許可は貰っていますから」
羽美はスカートのポケットに仕舞っていた紙切れを長机に置いた。
四つ折りだった紙切れを開くと、確かに名護武琉を生徒会役員として認める事柄が記されていた。
生活指導員教諭、学年主任、教頭、校長の実印付きである。
「ですが、彼はまだ本学園に入学してきたばかりです。そこで彼をしばらくは庶務係として扱いたいと思います……反対の意見をお持ちの方はいますか?」
生徒会室に微妙な沈黙が漂う。
誰も発言しないところを見ると、どうやら反対の人間はいないようだ。
「ありがとうございます。では彼――名護武琉君を明日より正式な生徒会・庶務係に任命致します」
本人の意思とは無関係に庶務係を任命された武琉は、他の3人から憐憫を含んだ眼差しを向けられていたというのに安らかな寝息を立てていた。
生徒たちから頻繁に苦情を受ける生徒会の中でも、特に厄介な雑用をすべて引き受けなければならない鷺乃宮学園生徒会・庶務係。
かつてはあまりの仕事の多さに過労で倒れた生徒もいたという恐怖の役職。
だが、転校してきたばかりの武琉にそのことを知る術はなかった。
やがて眠りから目覚めた武琉は羽美から「あんた明日から生徒会の庶務係になったからよろしくね」と言われた。
すると武琉は眠気眼のまま「マカチョーケー(任しておけ)」と返答した。
ほぼ条件反射だったことは誰の目に明らかだったほどに。
一方、訊き慣れない沖縄の方言を耳にした千鶴はなぜか喜び、庶務係を申し付けた本人である羽美は武琉の奔放さに半ば呆れた。
しかし武琉の方言により先ほどの険悪な雰囲気は見事に一掃され、生徒会室には和やかな空気が流れたのは事実である。
そして生徒会役員の誰もが今日はこの気持ちを保持したまま帰宅できると思っていた。
だが、不幸なことにその願いは叶わなかった。
羽美たちが帰り支度を整えていたとき、勉学に励む生徒たちの憩いの場として人気があった図書室では狂気と殺伐という名前の異質な空気が充満していた。
受験勉強をしていた女子生徒の1人がトイレから帰ってきた途端、まるで狐に取り憑かれたような奇声を発しながら暴れ始めたのだ。
それだけではない。
5分以上も暴れ回った末、何とその女子生徒は意味不明な言葉を吐きつつ開放されていた窓から飛び降りてしまった。
午後5時12分。
この出来事がこれから巻き起こる大事件の序章だということを、このときの羽美は知る由もなかった。
「そういきり立つなよ。羽美だって本当のところは分かっているだろ? 連中に対して生徒会長権限なんて行使したら比喩じゃなくて本当に殺される危険性がある。何せ同じ生徒の1人に強制的に停学か退学を言い渡されるんだ。連中にしてみればプライドを踏み躙られるほどの屈辱だろうからな」
確かに秋兵の言うことは一理あると羽美は思った。
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生徒会長たちも六郎のように報復を恐れているからである。
「だからといって、このまま問題の生徒を野放しする理由にはならないはずです。ここは生徒会の面目を回復させるためにも会長が立つべきなのでは?」
「悪いけど何度言われようが僕には荷が重過ぎる。君は空手を習って腕に覚えがあり、さらにはこの学園の理事長の孫娘だから強気に言えるんだろう。けど僕は至って普通の生徒なんだ。それは生徒会長という立場であっても変わらない。それにそんなに連中を処分したければ、理事長に直訴するか君が次の生徒会長に立候補すればいい」
羽美は神妙な面持ちで両腕を緩く組んだ。
もちろん、次の生徒会長に羽美は立候補するつもりである。
どのみち1ヶ月も経たずに六郎は生徒会長の任を解かれ、再び全校生徒から会長が選抜されて新生徒会が発足される。
そして次の生徒会長は高確率で羽美が選ばれるだろう。
それは生徒たちから慕われているとか人気があるということではなく、ただ単に生徒会長に立候補する人間が誰もいないのだ。
前回もそうだった。
損な役回りを教職員たちから押しつけられる生徒会長など誰もなりたがらなかった結果、教職員たちが優秀な生徒たちから独断と偏見で生徒会長を選ぶという前代未聞の処置が取られた。
その末に抜擢されたのが真壁六郎である。
だが生来の大人しさと内気な性格が混同していた六郎は、教職員たちには重宝されていたが生徒たちからは密かに陰口を叩かれているという。
曰く――歴代で一番生徒会長に似つかわしくない男、と。
「そういうわけで僕はもう生徒会とはあまり関わりたくない。本音を言えばこうして生徒会で居残るよりも塾へ行って受験勉強したいんだ」
無気力にも程がある意見だ。
どういう理由があろうと今はまだ六郎が生徒会長なのは変わらない事実である。
ならば生徒会長最後の仕事として、現学園の問題解決に尽力しようという意志はないのだろうか。
(ないんだろうな……この人には)
羽美はちらちらと腕時計で時刻を確認している六郎を見た。
どうやら一刻も早く議題を終わらせて帰宅したいのだろう。
時刻を確認する所作があざと過ぎる。
はあ、と溜息を1つ。
羽美は副生徒会長として意見を述べた。
「分かりました。会長が任期を終了するまでは私が率先して問題解決に取り組みます。会長は各先生方に定期報告して頂くだけで結構です。それでよろしいですか?」
「う、うんうん。君がそう言ってくれるのなら僕としては何も言うことはないよ」
六郎は花が咲いたように表情を明らめた。
現金な男である。
自分に被害が及ばないと分かるとこうも態度と口調が豹変するのか。
心中で六郎に対する評価を極端に落としていくと、隣にいた秋兵も会議が佳境に迫ってきたことを明確に察したのだろう。
現時点で浮き彫りになっていた問題を発言した。
「長々と最近の学園で起こっている各問題点を議論してきたけど、実際に一般生徒はどう思っているか生徒の1人に訊いていみよう。名護君」
その名前が呼ばれた直後、四人の生徒会役員の視線はある一点に集中した。
位置的には部屋の奥、スチール製のロッカーが置かれている手前である。
椅子にぽつねんと座っていた男子生徒は両腕を組みながら頭を垂れていた。
名護武琉である。
「あいつ寝てるんじゃない? まったく動かないわよ」
羽美が指摘したように武琉は秋兵の声に反応しなかった。
肩が小さく上下に動いているので呼吸はしているのだろう。
だとすると夢幻の世界を彷徨っている可能性が高い。
「どうやらあまりにも詰まらないから寝ちゃったんだろう。それによく考えてみれば彼は今日転校してきたばかりでこの学園について何も知らない。生徒会だ〈ギャング〉だと言われても答えられないだろうね」
では、なぜ連れてきたのかという疑問を抱いている六郎と千鶴に羽美が言った。
「会長や千鶴ちゃんにも紹介しておくわ。あいつの名前は名護武琉。今日、私のクラスに沖縄から転校してきたのよ」
「付け加えると、羽美の婚約者でもある」
「えっ、どういうことですか?」
婚約者という括りに俄然食い付いてきた千鶴を強制的に黙らせるため、羽美は長机を破壊する勢いで掌を叩きつけた。
「そんなことはどうでもいいのよ! 私が彼を連れてきたのは新しい生徒会に引き入れるためなんです」
羽美は事情を知らない六郎と千鶴の顔を交互に見ながら言葉を発する。
「会長が任期を終了したとしても新会員が補充できるとは思えない。ならば手っ取り早くこちらから引き入れたほうが早いでしょう。幸いにも彼は自主的に生徒会に入会する意思を固めてくれました。今日連れてきたのは一種のお披露目みたいなものです」
そのとき、隣にいた秋兵が小声で「無理やり入会されるのは自主的とは言わないんじゃないのかな?」と漏らしたが、羽美は軽く無視して話を続けた。
「と言うわけで、明日より彼を加えた6人で活動することにします。大丈夫、すでに先生たちに許可は貰っていますから」
羽美はスカートのポケットに仕舞っていた紙切れを長机に置いた。
四つ折りだった紙切れを開くと、確かに名護武琉を生徒会役員として認める事柄が記されていた。
生活指導員教諭、学年主任、教頭、校長の実印付きである。
「ですが、彼はまだ本学園に入学してきたばかりです。そこで彼をしばらくは庶務係として扱いたいと思います……反対の意見をお持ちの方はいますか?」
生徒会室に微妙な沈黙が漂う。
誰も発言しないところを見ると、どうやら反対の人間はいないようだ。
「ありがとうございます。では彼――名護武琉君を明日より正式な生徒会・庶務係に任命致します」
本人の意思とは無関係に庶務係を任命された武琉は、他の3人から憐憫を含んだ眼差しを向けられていたというのに安らかな寝息を立てていた。
生徒たちから頻繁に苦情を受ける生徒会の中でも、特に厄介な雑用をすべて引き受けなければならない鷺乃宮学園生徒会・庶務係。
かつてはあまりの仕事の多さに過労で倒れた生徒もいたという恐怖の役職。
だが、転校してきたばかりの武琉にそのことを知る術はなかった。
やがて眠りから目覚めた武琉は羽美から「あんた明日から生徒会の庶務係になったからよろしくね」と言われた。
すると武琉は眠気眼のまま「マカチョーケー(任しておけ)」と返答した。
ほぼ条件反射だったことは誰の目に明らかだったほどに。
一方、訊き慣れない沖縄の方言を耳にした千鶴はなぜか喜び、庶務係を申し付けた本人である羽美は武琉の奔放さに半ば呆れた。
しかし武琉の方言により先ほどの険悪な雰囲気は見事に一掃され、生徒会室には和やかな空気が流れたのは事実である。
そして生徒会役員の誰もが今日はこの気持ちを保持したまま帰宅できると思っていた。
だが、不幸なことにその願いは叶わなかった。
羽美たちが帰り支度を整えていたとき、勉学に励む生徒たちの憩いの場として人気があった図書室では狂気と殺伐という名前の異質な空気が充満していた。
受験勉強をしていた女子生徒の1人がトイレから帰ってきた途端、まるで狐に取り憑かれたような奇声を発しながら暴れ始めたのだ。
それだけではない。
5分以上も暴れ回った末、何とその女子生徒は意味不明な言葉を吐きつつ開放されていた窓から飛び降りてしまった。
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