【完結】勇者PTから追放された空手家の俺、可愛い弟子たちと空手無双する。俺が抜けたあとの勇者たちが暴走? じゃあ、最後に俺が息の根をとめる

岡崎 剛柔

文字の大きさ
13 / 104
第二章 ~この世はすべて因果応報で成り立っている~

道場訓 十三    勇者の誤った行動 ⑤

しおりを挟む
 ちょっと待て、俺たちのリーダーが誰だって?

 最初、俺はアゼルが何を言っているのか分からなかった。

 だが、アリーゼの「どうしてケンシンが私たちのリーダーなのよ!」という叫び声を聞いて、ようやく俺は事の重要性に気づくことができた。

 アリーゼの言う通りだ。

 何でケンシンが俺たちのリーダーとして認識されているんだよ。

「おい、オッサン! ふざけたこと言うんじゃねえぞ!」

 俺はアゼルの胸ぐらを空いていた左手でつかんだ。

「あんな無能のサポーター風情が俺たちのパーティーのリーダーだと? そんなわけねえだろうが! この【神竜しんりゅうノ翼のつばさ】のリーダーは俺――キース・マクマホンに決まってんだろ!」

 などと俺が口にした直後、後方から「その通りだ」という声が聞こえてきた。

「俺たちのリーダーはそこのキースのみ。断じてケンシンなどではない。おかしなことを言うのはやめてもらおうか」

 俺はハッとなって振り返る。

 そこには大刀を納刀のうとうした状態のカチョウが立っていた。

 しかし、どう見ても普通の状態ではない。

 オークの攻撃でアバラが何本か折れたのだろう。

 カチョウの額からは脂汗がにじみ出ていて、荒い呼吸をしながら左の脇腹を両手で押さえている。

「お前らのほうこそ、おかしなことを言っているな」

 アゼルは「はあ」と溜息ためいきを吐いた。

「あの闘神のような強さを持つ空手家からてかのケンシンが無能だと? それこそ馬鹿なことを言うなよ。あいつは正真正銘、本物の実力者だ。空手家からてかとしてもサポーターとしても……そして冒険者としてもな」

 アゼルは俺たちを交互に見まわしながら話を続ける。

「その証拠にお前ら【神竜しんりゅうノ翼のつばさ】は半年前まではCランクだったのに、今では国に認められるSランクの勇者パーティーになった。それはケンシンがお前たちのパーティーに入ったからじゃないのか?」

「そ、そんなわけねえだろ! 馬鹿も休み休み言いやがれ!」

 俺は腹の底から怒鳴どなり声を上げたものの、アゼルはまったく表情を変えることなくどこ吹く風であった。

 それどころか、俺を薄汚い虫けらみたいな目で見下ろしてくる。

「じゃあ、ご高名な勇者さまにたずねるがな。ケンシンがお前らのパーティーに入ってから色々と周りで不思議なことが起こるようにならなかったか? たとえば周囲の人間――特に裏社会の人間たちの態度が急に変わったとか、クエストの達成数は変わらないのに金銭面で豊かになったとか、ダンジョンの中で遭遇した魔物が急に弱くなったように思えた、とかな」

「…………」

 そう言われてみると、馴染みであった娼館しょうかんの連中の態度が明らかに弱腰になったかもしれない。

 待てよ、他にもまだあったな。

 ケンシンが入るまではクエストを達成して得た報酬よりも出て行く金のほうが多かったときもあったが、ケンシンが入ってからは俺たちの懐に入る金が多くなったような気がする。

 それにダンジョンで遭遇した魔物が弱くなったように思えたか、だと?

 確かにケンシンがパーティーに入ってから遭遇した魔物どもは、どいつもこいつも俺たちを見ておびえた小鹿のように身体を震わせていたっけ。

 だが、それがケンシンと何の関係がある?

 まさか、魔物どもはケンシンにビビッていたとでも言いたいのか。

 勇者である俺よりも、あんな闘えもしない空手家からてか風情ふぜいに?

 そんなことあるわけねえ。

 すべては偶然に決まってる。

 俺たちがCランクからSランクになれたのだって、このパーティーのリーダーである俺の実力がたまたまケンシンが入ったときに開花しただけだ。

 あんな無能で魔抜まぬけなサポーターをパーティーに入れなくても、どのみち俺は国から認められた勇者になれていただろうからな。

 そう思ったとき、アゼルは「その様子だと図星か?」といてくる。

「図星? 全然、何にも図星じゃねえよ……ってか、どのみちあいつはクビにしたから俺たちとはもう何の関係もないんだからよ」

 俺の言葉にアゼルたちは見るかに驚愕きょうがくした。

「今、何て言った? あいつを――ケンシンをクビにしただと?」

「ああ、そうさ。勇者パーティーになった俺たちに無能なサポーターなんて必要ねえからな」

「ケンシンくんがパーティーに必要ないですって?」

 続いて驚きの声を上げたのはファムだ。

あきれた。あの子がどれだけあんたたちのために身をにして働いていたのか知らないの?」

 はあ? この女は頭がいてんのか?

「あいつは何の働きもしてねえよ。それどころか、ダンジョンに潜る前日には必ず行方不明になっていたんだからな。それにいちいち俺たちに指図するような真似ばかりしていたから、ちょうどクビにするキッカケができて良かったと喜んでいたところだ」

 マジでか、とアゼルは大きく目を丸くした。

「ずっと一緒にパーティーを組んできたのに、お前らはケンシンが前もってダンジョンの魔物どもを無力化させていたことも気づいていなかったのか? それを他の冒険者たちに見られたときは、自分の金を冒険者たちに渡して口止めしていたことも知らなかったと?」

 ダンジョンの魔物どもを無力化させていた?

 このオッサンは何を寝ぼけたことを言ってんだ。

 あの戦士もどきの雑魚ざこ空手家からてかのケンシンにそんな力があるわけねえだろ。

「おい、オッサン」

 俺は胸ぐらをつかんでいた左手に力を込める。

「ベラベラといい加減なことを抜かしてやがると――」

 ぶっ殺すぞ、と言い放とうとした直後だった。

「〈痙攣パラライズ〉!」

 バチッと俺の全身に強烈なしびれが走る。

「あがッ!」

 そして俺はしびれに耐え切れず膝から崩れ落ちた。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

魔力ゼロで出来損ないと追放された俺、前世の物理学知識を魔法代わりに使ったら、天才ドワーフや魔王に懐かれて最強になっていた

黒崎隼人
ファンタジー
「お前は我が家の恥だ」――。 名門貴族の三男アレンは、魔力を持たずに生まれたというだけで家族に虐げられ、18歳の誕生日にすべてを奪われ追放された。 絶望の中、彼が死の淵で思い出したのは、物理学者として生きた前世の記憶。そして覚醒したのは、魔法とは全く異なる、世界の理そのものを操る力――【概念置換(コンセプト・シフト)】。 運動エネルギーの法則【E = 1/2mv²】で、小石は音速の弾丸と化す。 熱力学第二法則で、敵軍は絶対零度の世界に沈む。 そして、相対性理論【E = mc²】は、神をも打ち砕く一撃となる。 これは、魔力ゼロの少年が、科学という名の「本当の魔法」で理不尽な運命を覆し、心優しき仲間たちと共に、偽りの正義に支配された世界の真実を解き明かす物語。 「君の信じる常識は、本当に正しいのか?」 知的好奇心が、あなたの胸を熱くする。新時代のサイエンス・ファンタジーが、今、幕を開ける。

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした

有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました

かにくくり
ファンタジー
 魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。  しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。  しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。  勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。  そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。  相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。 ※小説家になろうにも掲載しています。

S級パーティを追放された無能扱いの魔法戦士は気ままにギルド職員としてスローライフを送る

神谷ミコト
ファンタジー
【祝!4/6HOTランキング2位獲得】 元貴族の魔法剣士カイン=ポーンは、「誰よりも強くなる。」その決意から最上階と言われる100Fを目指していた。 ついにパーティ「イグニスの槍」は全人未達の90階に迫ろうとしていたが、 理不尽なパーティ追放を機に、思いがけずギルドの職員としての生活を送ることに。 今までのS級パーティとして牽引していた経験を活かし、ギルド業務。ダンジョン攻略。新人育成。そして、学園の臨時講師までそつなくこなす。 様々な経験を糧にカインはどう成長するのか。彼にとっての最強とはなんなのか。 カインが無自覚にモテながら冒険者ギルド職員としてスローライフを送るである。 ハーレム要素多め。 ※隔日更新予定です。10話前後での完結予定で構成していましたが、多くの方に見られているため10話以降も製作中です。 よければ、良いね。評価、コメントお願いします。励みになりますorz 他メディアでも掲載中。他サイトにて開始一週間でジャンル別ランキング15位。HOTランキング4位達成。応援ありがとうございます。 たくさんの誤字脱字報告ありがとうございます。すべて適応させていただきます。 物語を楽しむ邪魔をしてしまい申し訳ないですorz 今後とも応援よろしくお願い致します。

世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~

aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」 勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......? お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?

処理中です...