【完結】勇者PTから追放された空手家の俺、可愛い弟子たちと空手無双する。俺が抜けたあとの勇者たちが暴走? じゃあ、最後に俺が息の根をとめる

岡崎 剛柔

文字の大きさ
36 / 104
第五章 ~邂逅、いずれ世界に知れ渡る将来の三拳姫~

道場訓 三十六   継承スキルとオオガミの一族

しおりを挟む
「ケンシンさま、これは一体どういうことですか!」

 どういうこと?

 俺はリゼッタの言っている意味が分からなかった。

「落ち着け、リゼッタ。何がどういうことなんだ?」

「いやいやいやいや、こんなもん落ち着いていられますかいな! この金髪の見るからに弱そうな嬢ちゃんが一番弟子? そんなアホな! ケンシンさまの一番弟子はこのうちやないですか!」

 そうですやろ、とリゼッタはつばを飛ばしそうな勢いでたずねてくる。

 俺は自分のアゴ先を人差し指と親指でつかみながら記憶をよみがえらせた。

 ……ダメだ、記憶にない。

 リゼッタに出会ったのは六年前、師匠である祖父とアルビオン公国に立ち寄ったときのことだ。

 顔パスだった祖父と一緒にクレスト教の本部教会に通されたとき、クレスト教をたばねる大教皇だいきょうこうとその孫娘に出会った。

 その孫娘というのが、目の前にいるリゼッタ・ハミルトンだ。

 あのときは丸々と太っていて今とは体型も雰囲気ふんいきも別人だったが、それでも武術や医術の腕前は抜群ばつぐんで、10歳にして【拳聖けんせい】とうたわれていた祖父と10秒も組手くみてが出来たことに驚いた記憶がある。

 その後、とあることをキッカケに俺たちは仲良くなり、アルビオン公国から離れるまでは一緒に組手くみてをしたり武術の話をして交流を深めたものだ。

 だが、やはりそのときにリゼッタを弟子に取った記憶がなかった。

 あのときは俺自身も今よりもっと修行中であり、その時点で誰かを弟子に取るということをするはずがないのだが……。

 もしかすると、子供心にリゼッタを誤解ごかいさせてしまうようなことを言ったのかもしれない。

「すまん、リゼッタ。俺にはお前を弟子に取った記憶がないんだ」

 するとリゼッタは目を丸くさせて「そ、そんな……」と悲しそうにつぶやいた。

 それだけではない。

 両膝から崩れ落ちると、両手を地面につけて四つんいの体勢になる。

 あまりにもショックだったのだろう。

 リゼッタは四つんいのまま「そんなん殺生せっしょうやで」とむせび泣き始めた。

 おいおい、そんなに悲しむようなことなのか?

 俺がどう声をかけていいのか困っていると、エミリアがそっと近づいて来て耳打ちするようにいてくる。

「あのう……ケンシン師匠。こちらはどなたなんでしょう? クレスト教の関係者なのは分かるのですが」

 俺は隠す必要もないので正直に答えた。

「リゼッタ・ハミルトン。クレスト教の大教皇だいきょうこうの孫娘だ」

「だ、大教皇だいきょうこうさまの孫娘!」

 エミリアは信じられないと言った顔でリゼッタを見る。

「どうして大教皇だいきょうこうさまの孫娘さんがこんなところに……いえ、それよりもケンシン師匠はこちらの大教皇だいきょうこうさまの孫娘さんとお知り合いなのですか?」

 エミリアは「なぜ?」と目で問いかけてくる。

 まあ、エミリアが驚くのも無理はない。

 クレスト教の最高位聖職者である大教皇だいきょうこうの孫娘ともなれば、王家であるエミリアならともかく俺のような一般人と出会うことはまずない。

 それでも俺がリゼッタと顔見知りなのは、師匠であった祖父のおかげだ。

 俺の祖父と大教皇だいきょうこうは古くからの知り合いであり、互いによく殺し合い一歩手前まで行くほど武術の技を競った間柄あいだがらだったという。

 それ以外にも祖父と大教皇だいきょうこうはあと数人の仲間たちとともに、若い頃に俺たちが住む七大大陸のはるか海の向こうにある魔物の大陸――戦魔大陸せんまたいりくにも乗り込んだことがあるという逸話いつわを持っていた。

 そこから希少なアイテムをいくつも持ち帰り、なおかつ五体満足で帰ったこともあってか俺の祖父はヤマト国の上位層からは【拳聖けんせい】とうたわれるようになり、一方の大教皇だいきょうこうは今ではもう呼ばれないが昔は【賢聖けんせい】と呼ばれていたらしい。

 ただしこれらは各国のトップシークレットであり、世界中において一部の上位層をのぞいて表沙汰おもてざたには一切なっていなかった。

 それもそのはず。

 数人で戦魔大陸せんまたいりくに乗り込むこと自体が異例いれいのことで、未だかつて戦魔大陸せんまたいりくに乗り込んだ数千とも数万とも呼ばれる人間たちの中において、命からがらとはいえ五体満足で帰ってきた人間は祖父たちだけなのだ。

 それほど戦魔大陸せんまたいりくとは恐ろしい場所だという。

 祖父いわく、「俺たちがいる大陸のSランクの魔物が、戦魔大陸せんまたいりくではスライム以下の魔物」と言わしめたほどだ。

 ちなみに半年前に大陸を震撼しんかんさせた大災害――戦魔大戦せんまたいせんという名称は戦魔大陸せんまたいりく彷彿ほうふつとさせるぐらい魔物の強さと数があったからというものだった。

 だが、もしも祖父が生きていたら戦魔大戦せんまたいせんの魔物の強さと数など戦魔大陸せんまたいりくにいる魔物どもに遠くおよばないと一刀両断いっとうりょうだんしたことだろう。

 俺はそのことをいつまんでエミリアに話した。

 するとエミリアの顔色が見る見ると青ざめていく。

「け、ケンシン師匠は……いいえ、ケンシン師匠の一族は一体何者なんですか?」

 何者も何も、俺の一族は昔から何も変わらない。

「お前が思っているほど大層たいそうなものじゃないぞ。ただ遠い昔にとやらから空手の技とスキルをもらった、素手で誰よりも強くなることを望んできた馬鹿な一族だ。それ以上でもそれ以下でもない」

 そう俺がはっきりと告げた直後だ。

「う……うう……」

 キキョウがゆっくりと目を覚ました。

 そして――。

しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

魔力ゼロで出来損ないと追放された俺、前世の物理学知識を魔法代わりに使ったら、天才ドワーフや魔王に懐かれて最強になっていた

黒崎隼人
ファンタジー
「お前は我が家の恥だ」――。 名門貴族の三男アレンは、魔力を持たずに生まれたというだけで家族に虐げられ、18歳の誕生日にすべてを奪われ追放された。 絶望の中、彼が死の淵で思い出したのは、物理学者として生きた前世の記憶。そして覚醒したのは、魔法とは全く異なる、世界の理そのものを操る力――【概念置換(コンセプト・シフト)】。 運動エネルギーの法則【E = 1/2mv²】で、小石は音速の弾丸と化す。 熱力学第二法則で、敵軍は絶対零度の世界に沈む。 そして、相対性理論【E = mc²】は、神をも打ち砕く一撃となる。 これは、魔力ゼロの少年が、科学という名の「本当の魔法」で理不尽な運命を覆し、心優しき仲間たちと共に、偽りの正義に支配された世界の真実を解き明かす物語。 「君の信じる常識は、本当に正しいのか?」 知的好奇心が、あなたの胸を熱くする。新時代のサイエンス・ファンタジーが、今、幕を開ける。

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした

有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました

かにくくり
ファンタジー
 魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。  しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。  しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。  勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。  そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。  相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。 ※小説家になろうにも掲載しています。

S級パーティを追放された無能扱いの魔法戦士は気ままにギルド職員としてスローライフを送る

神谷ミコト
ファンタジー
【祝!4/6HOTランキング2位獲得】 元貴族の魔法剣士カイン=ポーンは、「誰よりも強くなる。」その決意から最上階と言われる100Fを目指していた。 ついにパーティ「イグニスの槍」は全人未達の90階に迫ろうとしていたが、 理不尽なパーティ追放を機に、思いがけずギルドの職員としての生活を送ることに。 今までのS級パーティとして牽引していた経験を活かし、ギルド業務。ダンジョン攻略。新人育成。そして、学園の臨時講師までそつなくこなす。 様々な経験を糧にカインはどう成長するのか。彼にとっての最強とはなんなのか。 カインが無自覚にモテながら冒険者ギルド職員としてスローライフを送るである。 ハーレム要素多め。 ※隔日更新予定です。10話前後での完結予定で構成していましたが、多くの方に見られているため10話以降も製作中です。 よければ、良いね。評価、コメントお願いします。励みになりますorz 他メディアでも掲載中。他サイトにて開始一週間でジャンル別ランキング15位。HOTランキング4位達成。応援ありがとうございます。 たくさんの誤字脱字報告ありがとうございます。すべて適応させていただきます。 物語を楽しむ邪魔をしてしまい申し訳ないですorz 今後とも応援よろしくお願い致します。

世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~

aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」 勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......? お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?

処理中です...