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第七章 ~華やかで煌びやかな地下の世界・武士団ギルド編~
道場訓 六十一 ヤマトタウンの武士団ギルド ②
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ドンッ!
その音の正体は腹部への衝撃音だった。
サムライの一人がいきなりキキョウの腹を蹴ったのだ。
「かはッ!」
キキョウの身体がくの字に曲がって後方に吹き飛ばされる。
俺は瞬時に動いてキキョウの身体を抱き止めた。
一体どうなっているんだ?
俺が頭上に疑問符を浮かべた直後、エミリアが「いきなり何をするのですか!」とサムライたちに食ってかかった。
けれども、サムライたちはエミリアを無視してキキョウを睨みつける。
「よくもおめおめと武士団ギルドに顔を出せたな、この恥さらしの妹が!」
そう叫ぶとサムライたちは大刀を抜き放った。
「は、恥さらしの妹だと……それは一体どういうことか!」
俺から離れたキキョウが問いかけると、サムライたちは「何も知らんのか?」と怒りを含んだ目を向けてくる。
「カチョウのいる勇者パーティーがBランク程度のダンジョン攻略に失敗したのだ。それだけではない。あろうことか奴らは低ランクの魔物にも遅れを取り、おめおめと逃げ出したという」
もう一人のサムライが「まったくもって情けない」と同意する。
あいつら、ダンジョン攻略に失敗したのか。
どういう経緯でBランクのダンジョンに潜ったのかは知らないが、話の内容から察するに準備や計画をかなり怠ったのだろう。
そしてサムライたちはBランク程度と馬鹿にしたが、どのようなランクのダンジョンだろうと最初から舐めてかかるのは三流の証だ。
それはダンジョン以外の人間にも言えることだった。
「兄上が……嘘を申さないでいただきたい。兄上たちは国から認められた勇者パーティーなのですよ。そんな兄上たちがBランク程度のダンジョン攻略に失敗するはずがない。何かの間違いに決まっています」
ふん、とサムライの一人が鼻を鳴らした。
「妹であるお主がそう思いたくなるのも致し方ないこと。だが、これは事実だ。国中に箝口令がしかれているが、武士団ギルドには優れた隠密(忍者)が何人もおる。そやつらからの情報ゆえに間違いではない」
それに、とサムライは言葉を続ける。
「人の口に戸などは立てられんからな。このことはいずれヤマトタウンにも広がるだろう。そうなればこの街の評判も地に落ちる。カチョウが勇者パーティーの一員になったことで他の街からの評判が高まっていたのに、そのカチョウ自身の手で評判を落とすことになるのだから目も当てられん」
しかも、ともう一人のサムライが二の句を紡ぐ。
「内容が内容だ。上級ダンジョンで上級魔物と闘った結果だったならばまだしも、たかがBランク程度のダンジョン攻略に失敗するとはサムライの風上にも置けん恥さらしよ。そのような者の妹の顔など見たくはない。さっさと消え失せろ」
キキョウは「お待ちください」と懐から手紙を出した。
「消えろと申されても困ります。拙者たちは商業街のギルド長から頼まれてコジロー殿に会いに来たのです。この通り、ギルド長からの紹介状も――」
「消えろと言っているだろう! それとも痛い目を見ないと分からんか!」
次の瞬間、サムライの一人が大刀の切っ先をキキョウに向けてきた。
おいおい、本当に斬る気か。
俺は瞬時にキキョウの前に躍り出ると、向かってきた突きを中段横受けで弾き飛ばす。
それだけではない。
間髪を入れずサムライの腹部に前蹴りを繰り出した。
「うげッ!」
俺の前蹴りをまともに食らったサムライは、腹を押さえながら膝から崩れる。
「こ……こやつ、やりおった。出合え! 皆の者、出合え!」
残ったサムライが高らかに叫ぶと、あっという間に他のサムライたちが現れた。
その数はざっと20人。
このような場合を想定しているのか、全員とも大刀を片手にすでに臨戦態勢を整えている。
「どうした! 任侠団どもが攻めて来たのか!」
脱兎の如く湧き出てきたサムライの一人が、門番のサムライに問いかける。
「いや、違う。だが、曲者には違いない。こやつ、いきなりシュウザエモンを足蹴にしよった」
おいおい、先に足を出してきたのはお前らだろう。
俺は下丹田に力を込めてサムライたちを見回す。
殺すつもりは毛頭なかったが、相手は精強で知られるサムライたちだ。
下手な手加減をすると予想外のしっぺ返しを食らうかもしれない。
それに場の雰囲気からまともに話し合いをするのは難しくなっている。
だったら、少しだけサムライたちの目を覚ましてやる必要があった。
などと俺が思ったとき、一人のサムライが大刀を構えながら前に出てくる。
リーダー格の男だろうか。
年齢は30代前半ほどで、精悍な顔つきをしている。
そして他のサムライたちよりも頭一つ分は高く、衣服の上からでも筋骨隆々なのが分かった。
「どのような理由かは知らぬが、この武士団ギルドに乗り込んでくるとは見上げた度胸だ。その度胸に免じて苦しませず冥土へ送ってやるゆえ名乗られよ」
俺は一拍の間を空けたあとに答えた。
「俺の名前はケンシン・オオガミ。追放された……」
いや、と俺はすぐに言葉を訂正する。
「3人の弟子を持つ空手家だ」
その音の正体は腹部への衝撃音だった。
サムライの一人がいきなりキキョウの腹を蹴ったのだ。
「かはッ!」
キキョウの身体がくの字に曲がって後方に吹き飛ばされる。
俺は瞬時に動いてキキョウの身体を抱き止めた。
一体どうなっているんだ?
俺が頭上に疑問符を浮かべた直後、エミリアが「いきなり何をするのですか!」とサムライたちに食ってかかった。
けれども、サムライたちはエミリアを無視してキキョウを睨みつける。
「よくもおめおめと武士団ギルドに顔を出せたな、この恥さらしの妹が!」
そう叫ぶとサムライたちは大刀を抜き放った。
「は、恥さらしの妹だと……それは一体どういうことか!」
俺から離れたキキョウが問いかけると、サムライたちは「何も知らんのか?」と怒りを含んだ目を向けてくる。
「カチョウのいる勇者パーティーがBランク程度のダンジョン攻略に失敗したのだ。それだけではない。あろうことか奴らは低ランクの魔物にも遅れを取り、おめおめと逃げ出したという」
もう一人のサムライが「まったくもって情けない」と同意する。
あいつら、ダンジョン攻略に失敗したのか。
どういう経緯でBランクのダンジョンに潜ったのかは知らないが、話の内容から察するに準備や計画をかなり怠ったのだろう。
そしてサムライたちはBランク程度と馬鹿にしたが、どのようなランクのダンジョンだろうと最初から舐めてかかるのは三流の証だ。
それはダンジョン以外の人間にも言えることだった。
「兄上が……嘘を申さないでいただきたい。兄上たちは国から認められた勇者パーティーなのですよ。そんな兄上たちがBランク程度のダンジョン攻略に失敗するはずがない。何かの間違いに決まっています」
ふん、とサムライの一人が鼻を鳴らした。
「妹であるお主がそう思いたくなるのも致し方ないこと。だが、これは事実だ。国中に箝口令がしかれているが、武士団ギルドには優れた隠密(忍者)が何人もおる。そやつらからの情報ゆえに間違いではない」
それに、とサムライは言葉を続ける。
「人の口に戸などは立てられんからな。このことはいずれヤマトタウンにも広がるだろう。そうなればこの街の評判も地に落ちる。カチョウが勇者パーティーの一員になったことで他の街からの評判が高まっていたのに、そのカチョウ自身の手で評判を落とすことになるのだから目も当てられん」
しかも、ともう一人のサムライが二の句を紡ぐ。
「内容が内容だ。上級ダンジョンで上級魔物と闘った結果だったならばまだしも、たかがBランク程度のダンジョン攻略に失敗するとはサムライの風上にも置けん恥さらしよ。そのような者の妹の顔など見たくはない。さっさと消え失せろ」
キキョウは「お待ちください」と懐から手紙を出した。
「消えろと申されても困ります。拙者たちは商業街のギルド長から頼まれてコジロー殿に会いに来たのです。この通り、ギルド長からの紹介状も――」
「消えろと言っているだろう! それとも痛い目を見ないと分からんか!」
次の瞬間、サムライの一人が大刀の切っ先をキキョウに向けてきた。
おいおい、本当に斬る気か。
俺は瞬時にキキョウの前に躍り出ると、向かってきた突きを中段横受けで弾き飛ばす。
それだけではない。
間髪を入れずサムライの腹部に前蹴りを繰り出した。
「うげッ!」
俺の前蹴りをまともに食らったサムライは、腹を押さえながら膝から崩れる。
「こ……こやつ、やりおった。出合え! 皆の者、出合え!」
残ったサムライが高らかに叫ぶと、あっという間に他のサムライたちが現れた。
その数はざっと20人。
このような場合を想定しているのか、全員とも大刀を片手にすでに臨戦態勢を整えている。
「どうした! 任侠団どもが攻めて来たのか!」
脱兎の如く湧き出てきたサムライの一人が、門番のサムライに問いかける。
「いや、違う。だが、曲者には違いない。こやつ、いきなりシュウザエモンを足蹴にしよった」
おいおい、先に足を出してきたのはお前らだろう。
俺は下丹田に力を込めてサムライたちを見回す。
殺すつもりは毛頭なかったが、相手は精強で知られるサムライたちだ。
下手な手加減をすると予想外のしっぺ返しを食らうかもしれない。
それに場の雰囲気からまともに話し合いをするのは難しくなっている。
だったら、少しだけサムライたちの目を覚ましてやる必要があった。
などと俺が思ったとき、一人のサムライが大刀を構えながら前に出てくる。
リーダー格の男だろうか。
年齢は30代前半ほどで、精悍な顔つきをしている。
そして他のサムライたちよりも頭一つ分は高く、衣服の上からでも筋骨隆々なのが分かった。
「どのような理由かは知らぬが、この武士団ギルドに乗り込んでくるとは見上げた度胸だ。その度胸に免じて苦しませず冥土へ送ってやるゆえ名乗られよ」
俺は一拍の間を空けたあとに答えた。
「俺の名前はケンシン・オオガミ。追放された……」
いや、と俺はすぐに言葉を訂正する。
「3人の弟子を持つ空手家だ」
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