【完結】勇者PTから追放された空手家の俺、可愛い弟子たちと空手無双する。俺が抜けたあとの勇者たちが暴走? じゃあ、最後に俺が息の根をとめる

岡崎 剛柔

文字の大きさ
60 / 104
第七章 ~華やかで煌びやかな地下の世界・武士団ギルド編~

道場訓 六十    ヤマトタウンの武士団ギルド

しおりを挟む
「ここがヤマトタウンか……そう言えば1度も来たことがなかったな」

 ケンシン・オオガミこと俺は、ヤマトタウンの街中を歩きながらつぶやく。

「ケンシン師匠がですか? 意外です。同じヤマト人が作った街なので、よく来ているものとばかり思っていました」

 隣で歩いていたエミリアが不思議そうな顔を向けてくる。

 まあ、普通ならそう思うだろうな。

 遠い異国で暮らしている者同士、日常生活を円滑えんかつに過ごせるよう一か所に集まるのは至極当然しごくとうぜんだった。

 多種多様たしゅたような民族が多く暮らしているリザイアル王国において、その顕著けんちょな例がヤマト人の移民たちが作り上げたここヤマトタウンである。

 石造りの建造物や家屋かおくが多い中央街や商業街とは違い、ヤマトタウンにある建造物のほとんどは木造式だ。

 そして街中ですれ違う通行人たちも、着流きながしと呼ばれるヤマト国の服を着ている者が多い。

 しかし、それでも俺の姿は異様だったのだろう。

 いや、俺ではなく俺たちか。

「ケンシン殿どの、やはりこうして3人で歩いていると注目されますな」

 俺とエミリアが歩きながら周囲の様子をながめていると、先頭を歩いていたキキョウが顔だけを振り向かせながら言ってくる。

「確かにな。いくら空手からてがヤマト国の武術とはいえ、さすがに空手着姿からてぎすがたの男女が往来を歩いているのは珍しいだろう」

 現在、俺たちはヤマトタウンの大通りを歩きながら、目的地である武士団サムライギルドへと向かっている。

 その中で俺たちは往来を行き交う人の注目の的だった。

 無理もない。

 男女が3人も連れ立って空手着姿からてぎすがたで歩いているなど、ヤマトタウンどころかヤマト国でもないだろう。

 しかもエミリアとキキョウの腰に巻かれているのは黒帯くろおびだ。

 そんな2人の黒帯には金の刺繍ししゅうが1本だけ入っている。

 これは色帯いろおびの上の初段しょだんを意味しており、同時に2人が【神の武道場】から恩恵技おんけいわざを1つだけ与えられたことを意味していた。

闘神とうしん威圧いあつ〉。

 使用者の強さによって周囲にいる敵を威圧いあつできる技だ。

 だが、この恩恵技おんけいわざを使えるのは2人だけではない。

 俺はエミリアとキキョウを交互に見る。

 最初こそ少し照れ臭そうだったエミリアとキキョウも、本来の度胸の良さもあってか少しの時間であっという間に空手着姿からてぎすがたであることに慣れたようだ。

 今では二人とも堂々と胸を張って歩いている。

 ただ、その中にリゼッタの姿はなかった。

「でも、ケンシン師匠。リゼッタさんは大丈夫なんでしょうか?」

「さあな。大丈夫か大丈夫でないかと聞かれても俺には分からん……しかし、まさかあいつがクレスト教の序列じょれつ・1位の聖女になっていたとは」

 これにはさすがの俺も驚きを隠せなかった。

 俺が最初に会った頃から6年はっているため、もう候補こうほではなく一人前の聖女になっているとは思っていたが、まさか序列じょれつ・1位の座にまで上りめているとは思ってもみなかった。

 そんなリゼッタがこのリザイアル王国に来たのも聖女としての仕事をするためだったらしいが、とある場所で俺の存在を知ったときから俺に会いたくてても立ってもいられなくなったという。

 その後、一緒にこの国へ来ていたお供の連中に一目でもいいから俺に会いたいと納得してもらい、期間限定で俺を探すため街へと出てきたらしい。

 このとき、俺はピンときた。

 おそらくこれはリゼッタが咄嗟とっさについた嘘だ、と。

 クレスト教の序列じょれつ・1位の聖女という肩書きはそんなに安くはない。

 ましてや一国を相手にする仕事で来たとなれば、お供の連中が1人の男に会うために自由行動を許すなど信じられなかった。

 そう思った俺はリゼッタに湯上りのあと「本当のところはどうなのか」と問いかけた。

 するとリゼッタは渋々しぶしぶと打ち明けてくれた。

 どうやらリゼッタはお供の連中に書置かきおきだけ残して街へ出たというのだ。

 だとすると、今頃はお供の連中は大慌てになっているだろう。

 それこそお供の連中は王宮にも頼み込んで、中央街を中心に大規模な捜索隊そうさくたいが編成されている可能性も十分にあった。

 だからこそ、俺はお供の連中を安心させるために1度戻れと指示を出した。

 リゼッタも子供ではない。

 素直に俺の指示を受け入れ、リゼッタは中央街へと戻っていった。

「ケンシンさま、安心してくんなはれ。今度はケンシンさまとちゃんとれるように色々としてきますわ」と空手着姿からてぎすがたのまま言い残して。

 けれども、俺に弟子入りした以上はただで返すわけにはいかなかった。

 ここにいるエミリアとキキョウもそうだが、リゼッタにも【神の武道場】に入れるための気力アニマり方と三戦サンチンの型を伝授済みだ。

 そのため、3人は俺抜きでも【神の武道場】へ入れるようになっている。

 そして、こうしておけば遠く離れていてもリゼッタとは【神の武道場】で出会える機会が増えるのだ。

 などと俺がリゼッタのことを考えていたときだった。

「ケンシン殿どのきましたぞ。ここが武士団サムライギルドです」

 キキョウが立ち止まり、こちらに身体ごと振り向いた。

 俺たちも立ち止まり、目の前にそびえ立つ建物を見上げる。

 へえ……ここが武士団サムライギルドか。

 予想していたよりも立派な門構もんがまえの武家屋敷ぶけやしきだ。

 高い土塀どへいに囲まれた敷地の広さは相当なものだろう。

 それこそ数百人ぐらいは余裕で入るに違いない。

「ここがヤマトタウンの冒険者ギルドと呼ばれている武士団サムライギルドですか。冒険者ギルドと違って物々ものものしい雰囲気がありますね」

「まあ、この国の人間から見ればヤマトの建造物は特殊すぎるから余計にそう思うんだろうな。俺が最初にこの大陸へ来たときも、ヤマト国とは違う建造物に今のお前とまったく同じ印象をいだいたものさ」

 そんな風に俺とエミリアが話をしていたときだ。

「誰だ、お主らは!」

「怪しい奴らめ!」

 突如とつじょ、開いていた門の中から高圧的な声が聞こえてきた。

 そして、すぐに二人のサムライがやってくる。

 武士団サムライギルドの門番だろうか。

 頭には立派なまげっており、純白の道衣どうい漆黒しっこくはかまの上からけい甲冑かっちゅうまとって武装している。

「正直に答えよ、この武士団サムライギルドの前で何をしていた?」

 サムライの一人が険しい表情でたずねてきた。

 どうやら物々ものものしいのは建物だけではなかったようだ。

 この二人のサムライたちからも、ピリピリと刺すような雰囲気ふんいきが感じられる。

 おそらく、不意の襲撃に備えて警戒けいかいしているのだろう。

 俺が二人のサムライを様子見していると、「お待ちください」とキキョウが二人のサムライに声をかけた。

拙者せっしゃたちは怪しい者ではありません。拙者せっしゃたちはこちらのギルド長であられる、コジロー殿どのに会うためにさんじた次第です」

 サムライたちは互いの顔を見合わせると、そのうちの一人がキキョウを見て「お手前の名は?」といぶかしい顔でいてくる。

「キキョウです。キキョウ・フウゲツと申します」

 をことさらに強調きょうちょうしてキキョウは名乗った。

 ヤマトタウンはキキョウとカチョウが生まれた街であり、確かカチョウは一時的に武士団サムライギルドに所属していたと聞いたことがある。

 そんなカチョウは勇者パーティーの切り込み隊長として名声が上がり、このヤマトタウンにおいてはキースよりも英雄扱いされているらしい。

 ならばキキョウ自身も気が大きくなるのも仕方なかった。

 英雄であるカチョウの妹と言うことなら、武士団サムライギルドのサムライたちもキキョウに対して不躾ぶしつけな態度は取れないだろう。

「キキョウ・フウゲツ……あッ!」

 やがてサムライの一人が大きく声を上げた。

「お主、カチョウ・フウゲツの妹か?」

 サムライの問いに、キキョウは堂々と胸を張って「はい」と答える。

 その直後だった。

「このはじさらしの妹が!」

 ドンッ!

 キキョウを中心に異様な音が周囲に響いた――。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

魔力ゼロで出来損ないと追放された俺、前世の物理学知識を魔法代わりに使ったら、天才ドワーフや魔王に懐かれて最強になっていた

黒崎隼人
ファンタジー
「お前は我が家の恥だ」――。 名門貴族の三男アレンは、魔力を持たずに生まれたというだけで家族に虐げられ、18歳の誕生日にすべてを奪われ追放された。 絶望の中、彼が死の淵で思い出したのは、物理学者として生きた前世の記憶。そして覚醒したのは、魔法とは全く異なる、世界の理そのものを操る力――【概念置換(コンセプト・シフト)】。 運動エネルギーの法則【E = 1/2mv²】で、小石は音速の弾丸と化す。 熱力学第二法則で、敵軍は絶対零度の世界に沈む。 そして、相対性理論【E = mc²】は、神をも打ち砕く一撃となる。 これは、魔力ゼロの少年が、科学という名の「本当の魔法」で理不尽な運命を覆し、心優しき仲間たちと共に、偽りの正義に支配された世界の真実を解き明かす物語。 「君の信じる常識は、本当に正しいのか?」 知的好奇心が、あなたの胸を熱くする。新時代のサイエンス・ファンタジーが、今、幕を開ける。

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした

有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

処理中です...