【完結】勇者PTから追放された空手家の俺、可愛い弟子たちと空手無双する。俺が抜けたあとの勇者たちが暴走? じゃあ、最後に俺が息の根をとめる

岡崎 剛柔

文字の大きさ
69 / 104
第八章 ~華やかで煌びやかな地下の世界・裏闘技場の闇試合編~

道場訓 六十九   予選バトルロイヤル ➀

しおりを挟む
 全員が声のしたほうへ一斉に視線を集中させる。

 俺たちが入ってきた部屋の出入り口が下座しもざならば、その出入り口から真逆に位置する上座かみざのほうの壁に2人の男女が現れた。

 この男女も般若面をかぶっており、どうやら男のほうがしゃべったようだ。

 しかも声の通り方からすると生声ではない。

 どうやらオンタナの森の採掘場などかられる、小さな音を何十倍もの大きな音にする〈強音石きょうおんせき〉を使っているのだろう。

『本日、この場所にお集まりの50人の皆さまは闇試合ダーク・バトルに参加を希望された方々だと思います。ただし残念ながら全員が闇試合ダーク・バトルに参加はできません。ご存じの方もおられるかもしれませんが、すでに闇試合ダーク・バトルの本選出場枠はほぼまっているからです』 

 で・す・が、と般若面はんにゃめんの男は勿体もったいぶった言い方で言葉を続ける。

『ご安心ください。そんなあなた方にもきちんと参加する資格をご用意いたしております。なぜなら闇試合ダーク・バトルを優勝した者には、胴元オーナーよりどんな願いでも1つだけ叶えていただけるのです。金・名誉・地位、叶えられる願いならば何でもです』

 オオオオオオオオオオオオ――――ッ!

 戦争のときに上がる、ときの声もかくやという叫び声が上がった。

『ご静粛せいしゅくに……それでは早速、闇試合《ダーク・バトル》の本選へ出場する条件を発表致します。それは――』

 次の瞬間、喧騒けんそうが引き潮のように収まった。

 俺を含めた参加希望者たちは、般若面はんにゃめんの男の次の言葉に注目する。

大規模な乱戦バトルロイヤルです』

 そして再び般若面はんにゃめんの男の声が響き渡った。

只今ただいまより、1名の本選出場を賭けた大規模な乱戦バトルロイヤルを開催いたします』
 
 大規模な乱戦バトルロイヤル

 その言葉を皮切りに、部屋の中が明らかにざわついた。

 今までも部屋の中にはそれなりの殺気と警戒心が充満じゅうまんしていたものの、大規模な乱戦バトルロイヤルという言葉はより互いのきな臭い雰囲気を倍増させたのだ。

 俺をのぞいた全員がすぐに周囲の人間と一定の距離を保つ。

 開始直後の不意打ちを警戒けいかいしたのだろう。

 誰もが眉間みけんに深くしわを寄せながら、全身から空気をピリつかせる緊張感を発して臨戦態勢りんせんたいせいを取る。

『ふふふ、良い雰囲気になりましたね。ですが、開始の合図を前に動くのはご遠慮えんりょしてください。まだ大規模な乱戦バトルロイヤルの説明をしていないのですから』

 般若面はんにゃめんの男は淡々と言葉を続けていく。

『けれども何も難しいことはありません。ここに集まった皆さまには最後の1人になるまで闘い合っていただきます。もちろん、のような規定ルールなど一切ありません。どんな武器でもスキルでも魔法でもすべてOK。そして気を失った場合、戦意を喪失した場合、死んだ場合は失格とさせていただきます。それと私ども主催者側は何が起ころうと責任は負いませんのであしからず』

 そして、と般若面はんにゃめんの男は人差し指を一本だけ立てた右手を天高く突き上げる。

時間制限タイムリミットは1時間とさせていただきます。これ以上を過ぎても最後の1人が決まらなかった場合、ここにいる全員はそれなりの罰則ペナルティを受けていただきます」

 そこまで般若面はんにゃめんの男が説明したとき、近くにいた男の口から「おい、さっき渡されたこの木片もくへんは何だ?」という質問が出てきた。

『はい、ご質問があったようにここからが大規模な乱戦バトルロイヤルきもでございます。先ほど皆さまに渡された木片もくへんはヤマト国の文字で番号が書かれた番符ばんふであり、その番符ばんふは主催者側が皆さまに与えた仮の命だと思っていただきたい』

 再び部屋の中がざわついた。

「つまり、相手を倒さなくても番符ばんふを割ってしまえばいいのね」

 別の参加者の女が得意げに言い放つ。

 おそらく、全員がそうだろうと思ったはずだ。

 しかし、般若面はんにゃめんの男からの回答は違った。

『いいえ、逆です。あなた方には自他じたともに関係なく番符ばんふを割らずに闘っていただきます。もしも戦闘中に相手の番符ばんふを割ってしまった方は、どのような理由であれ失格とさせていただきます。あと当然のことながら、割られた方も失格ですのでご注意ください。私ども主催者側は本選に出場するに足りる素質を持った人材を望んでおります』

 しんと室内が静まり返る中、俺は自分に与えられた番符ばんふを見つめた。

 なるほどな。

 やはり金持ちの道楽どうらく闘技祭とうぎさいを開いているわけじゃないってことか。

 この番符ばんふは言わば、出鱈目でたらめな方法で参加者同士を闘わせないためのものだろう。

 たとえば武器はともかくとして、スキルや魔法などには広範囲に威力を発揮はっきするものがある。

 火属性の魔法やスキルでも爆発系の技などだ。

 しかし、それだと相手もろとも番符ばんふになってしまう。

 そこで主催者側は規定ルールはないと言いつつも、番符ばんふを割らないという特殊な規定ルールだけは定めた。

 何のために?

 決まっている。

 闘いに関して規定ルールのない無差別戦の中において、どこに隠したか分からない番符ばんふを割らずに相手を戦闘不能にできる本当の強者を選別せんべつするためだ。

『さて、時間も差し迫っているのでそろそろ始めたいと思っております。いいですか皆さま、私をのぞいた参加者の中で1人だけが本選へと出場できるのです』

 次の瞬間、部屋中に凄まじい熱気と殺気がき起こった。

『あなた方の健闘を祈ります……』

 般若面はんにゃめんの男は、天高く上げていた右手を一気に振り下ろす。

『始めッ!』

 宣言と同時に参加志望者たちの叫声きょうせいが地鳴りのようにとどろいた。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした

有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

魔力ゼロで出来損ないと追放された俺、前世の物理学知識を魔法代わりに使ったら、天才ドワーフや魔王に懐かれて最強になっていた

黒崎隼人
ファンタジー
「お前は我が家の恥だ」――。 名門貴族の三男アレンは、魔力を持たずに生まれたというだけで家族に虐げられ、18歳の誕生日にすべてを奪われ追放された。 絶望の中、彼が死の淵で思い出したのは、物理学者として生きた前世の記憶。そして覚醒したのは、魔法とは全く異なる、世界の理そのものを操る力――【概念置換(コンセプト・シフト)】。 運動エネルギーの法則【E = 1/2mv²】で、小石は音速の弾丸と化す。 熱力学第二法則で、敵軍は絶対零度の世界に沈む。 そして、相対性理論【E = mc²】は、神をも打ち砕く一撃となる。 これは、魔力ゼロの少年が、科学という名の「本当の魔法」で理不尽な運命を覆し、心優しき仲間たちと共に、偽りの正義に支配された世界の真実を解き明かす物語。 「君の信じる常識は、本当に正しいのか?」 知的好奇心が、あなたの胸を熱くする。新時代のサイエンス・ファンタジーが、今、幕を開ける。

S級パーティを追放された無能扱いの魔法戦士は気ままにギルド職員としてスローライフを送る

神谷ミコト
ファンタジー
【祝!4/6HOTランキング2位獲得】 元貴族の魔法剣士カイン=ポーンは、「誰よりも強くなる。」その決意から最上階と言われる100Fを目指していた。 ついにパーティ「イグニスの槍」は全人未達の90階に迫ろうとしていたが、 理不尽なパーティ追放を機に、思いがけずギルドの職員としての生活を送ることに。 今までのS級パーティとして牽引していた経験を活かし、ギルド業務。ダンジョン攻略。新人育成。そして、学園の臨時講師までそつなくこなす。 様々な経験を糧にカインはどう成長するのか。彼にとっての最強とはなんなのか。 カインが無自覚にモテながら冒険者ギルド職員としてスローライフを送るである。 ハーレム要素多め。 ※隔日更新予定です。10話前後での完結予定で構成していましたが、多くの方に見られているため10話以降も製作中です。 よければ、良いね。評価、コメントお願いします。励みになりますorz 他メディアでも掲載中。他サイトにて開始一週間でジャンル別ランキング15位。HOTランキング4位達成。応援ありがとうございます。 たくさんの誤字脱字報告ありがとうございます。すべて適応させていただきます。 物語を楽しむ邪魔をしてしまい申し訳ないですorz 今後とも応援よろしくお願い致します。

世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~

aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」 勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......? お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

処理中です...