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第八章 ~華やかで煌びやかな地下の世界・裏闘技場の闇試合編~
道場訓 六十九 予選バトルロイヤル ➀
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全員が声のしたほうへ一斉に視線を集中させる。
俺たちが入ってきた部屋の出入り口が下座ならば、その出入り口から真逆に位置する上座のほうの壁に2人の男女が現れた。
この男女も般若面を被っており、どうやら男のほうが喋ったようだ。
しかも声の通り方からすると生声ではない。
どうやらオンタナの森の採掘場などから採れる、小さな音を何十倍もの大きな音にする〈強音石〉を使っているのだろう。
『本日、この場所にお集まりの50人の皆さまは闇試合に参加を希望された方々だと思います。ただし残念ながら全員が闇試合に参加はできません。ご存じの方もおられるかもしれませんが、すでに闇試合の本選出場枠はほぼ埋まっているからです』
で・す・が、と般若面の男は勿体ぶった言い方で言葉を続ける。
『ご安心ください。そんなあなた方にもきちんと参加する資格をご用意致しております。なぜなら闇試合を優勝した者には、胴元よりどんな願いでも1つだけ叶えていただけるのです。金・名誉・地位、叶えられる願いならば何でもです』
オオオオオオオオオオオオ――――ッ!
戦争のときに上がる、鬨の声もかくやという叫び声が上がった。
『ご静粛に……それでは早速、闇試合《ダーク・バトル》の本選へ出場する条件を発表致します。それは――』
次の瞬間、喧騒が引き潮のように収まった。
俺を含めた参加希望者たちは、般若面の男の次の言葉に注目する。
『大規模な乱戦です』
そして再び般若面の男の声が響き渡った。
『只今より、1名の本選出場を賭けた大規模な乱戦を開催致します』
大規模な乱戦。
その言葉を皮切りに、部屋の中が明らかにざわついた。
今までも部屋の中にはそれなりの殺気と警戒心が充満していたものの、大規模な乱戦という言葉はより互いのきな臭い雰囲気を倍増させたのだ。
俺を除いた全員がすぐに周囲の人間と一定の距離を保つ。
開始直後の不意打ちを警戒したのだろう。
誰もが眉間に深くしわを寄せながら、全身から空気をピリつかせる緊張感を発して臨戦態勢を取る。
『ふふふ、良い雰囲気になりましたね。ですが、開始の合図を前に動くのはご遠慮してください。まだ大規模な乱戦の説明をしていないのですから』
般若面の男は淡々と言葉を続けていく。
『けれども何も難しいことはありません。ここに集まった皆さまには最後の1人になるまで闘い合っていただきます。もちろん、表の闘技場のような規定など一切ありません。どんな武器でもスキルでも魔法でもすべてOK。そして気を失った場合、戦意を喪失した場合、死んだ場合は失格とさせていただきます。それと私ども主催者側は何が起ころうと責任は負いませんのであしからず』
そして、と般若面の男は人差し指を一本だけ立てた右手を天高く突き上げる。
「時間制限は1時間とさせていただきます。これ以上を過ぎても最後の1人が決まらなかった場合、ここにいる全員はそれなりの罰則を受けていただきます」
そこまで般若面の男が説明したとき、近くにいた男の口から「おい、さっき渡されたこの木片は何だ?」という質問が出てきた。
『はい、ご質問があったようにここからが大規模な乱戦の肝でございます。先ほど皆さまに渡された木片はヤマト国の文字で番号が書かれた番符であり、その番符は主催者側が皆さまに与えた仮の命だと思っていただきたい』
再び部屋の中がざわついた。
「つまり、相手を倒さなくても番符を割ってしまえばいいのね」
別の参加者の女が得意げに言い放つ。
おそらく、全員がそうだろうと思ったはずだ。
しかし、般若面の男からの回答は違った。
『いいえ、逆です。あなた方には自他ともに関係なく番符を割らずに闘っていただきます。もしも戦闘中に相手の番符を割ってしまった方は、どのような理由であれ失格とさせていただきます。あと当然のことながら、割られた方も失格ですのでご注意ください。私ども主催者側は本選に出場するに足りる素質を持った人材を望んでおります』
しんと室内が静まり返る中、俺は自分に与えられた番符を見つめた。
なるほどな。
やはり金持ちの道楽で闘技祭を開いているわけじゃないってことか。
この番符は言わば、出鱈目な方法で参加者同士を闘わせないためのものだろう。
たとえば武器はともかくとして、スキルや魔法などには広範囲に威力を発揮するものがある。
火属性の魔法やスキルでも爆発系の技などだ。
しかし、それだと相手もろとも番符も木っ端になってしまう。
そこで主催者側は規定はないと言いつつも、番符を割らないという特殊な規定だけは定めた。
何のために?
決まっている。
闘いに関して規定のない無差別戦の中において、どこに隠したか分からない番符を割らずに相手を戦闘不能にできる本当の強者を選別するためだ。
『さて、時間も差し迫っているのでそろそろ始めたいと思っております。いいですか皆さま、私を除いた参加者の中で1人だけが本選へと出場できるのです』
次の瞬間、部屋中に凄まじい熱気と殺気が沸き起こった。
『あなた方の健闘を祈ります……』
般若面の男は、天高く上げていた右手を一気に振り下ろす。
『始めッ!』
宣言と同時に参加志望者たちの叫声が地鳴りのように轟いた。
俺たちが入ってきた部屋の出入り口が下座ならば、その出入り口から真逆に位置する上座のほうの壁に2人の男女が現れた。
この男女も般若面を被っており、どうやら男のほうが喋ったようだ。
しかも声の通り方からすると生声ではない。
どうやらオンタナの森の採掘場などから採れる、小さな音を何十倍もの大きな音にする〈強音石〉を使っているのだろう。
『本日、この場所にお集まりの50人の皆さまは闇試合に参加を希望された方々だと思います。ただし残念ながら全員が闇試合に参加はできません。ご存じの方もおられるかもしれませんが、すでに闇試合の本選出場枠はほぼ埋まっているからです』
で・す・が、と般若面の男は勿体ぶった言い方で言葉を続ける。
『ご安心ください。そんなあなた方にもきちんと参加する資格をご用意致しております。なぜなら闇試合を優勝した者には、胴元よりどんな願いでも1つだけ叶えていただけるのです。金・名誉・地位、叶えられる願いならば何でもです』
オオオオオオオオオオオオ――――ッ!
戦争のときに上がる、鬨の声もかくやという叫び声が上がった。
『ご静粛に……それでは早速、闇試合《ダーク・バトル》の本選へ出場する条件を発表致します。それは――』
次の瞬間、喧騒が引き潮のように収まった。
俺を含めた参加希望者たちは、般若面の男の次の言葉に注目する。
『大規模な乱戦です』
そして再び般若面の男の声が響き渡った。
『只今より、1名の本選出場を賭けた大規模な乱戦を開催致します』
大規模な乱戦。
その言葉を皮切りに、部屋の中が明らかにざわついた。
今までも部屋の中にはそれなりの殺気と警戒心が充満していたものの、大規模な乱戦という言葉はより互いのきな臭い雰囲気を倍増させたのだ。
俺を除いた全員がすぐに周囲の人間と一定の距離を保つ。
開始直後の不意打ちを警戒したのだろう。
誰もが眉間に深くしわを寄せながら、全身から空気をピリつかせる緊張感を発して臨戦態勢を取る。
『ふふふ、良い雰囲気になりましたね。ですが、開始の合図を前に動くのはご遠慮してください。まだ大規模な乱戦の説明をしていないのですから』
般若面の男は淡々と言葉を続けていく。
『けれども何も難しいことはありません。ここに集まった皆さまには最後の1人になるまで闘い合っていただきます。もちろん、表の闘技場のような規定など一切ありません。どんな武器でもスキルでも魔法でもすべてOK。そして気を失った場合、戦意を喪失した場合、死んだ場合は失格とさせていただきます。それと私ども主催者側は何が起ころうと責任は負いませんのであしからず』
そして、と般若面の男は人差し指を一本だけ立てた右手を天高く突き上げる。
「時間制限は1時間とさせていただきます。これ以上を過ぎても最後の1人が決まらなかった場合、ここにいる全員はそれなりの罰則を受けていただきます」
そこまで般若面の男が説明したとき、近くにいた男の口から「おい、さっき渡されたこの木片は何だ?」という質問が出てきた。
『はい、ご質問があったようにここからが大規模な乱戦の肝でございます。先ほど皆さまに渡された木片はヤマト国の文字で番号が書かれた番符であり、その番符は主催者側が皆さまに与えた仮の命だと思っていただきたい』
再び部屋の中がざわついた。
「つまり、相手を倒さなくても番符を割ってしまえばいいのね」
別の参加者の女が得意げに言い放つ。
おそらく、全員がそうだろうと思ったはずだ。
しかし、般若面の男からの回答は違った。
『いいえ、逆です。あなた方には自他ともに関係なく番符を割らずに闘っていただきます。もしも戦闘中に相手の番符を割ってしまった方は、どのような理由であれ失格とさせていただきます。あと当然のことながら、割られた方も失格ですのでご注意ください。私ども主催者側は本選に出場するに足りる素質を持った人材を望んでおります』
しんと室内が静まり返る中、俺は自分に与えられた番符を見つめた。
なるほどな。
やはり金持ちの道楽で闘技祭を開いているわけじゃないってことか。
この番符は言わば、出鱈目な方法で参加者同士を闘わせないためのものだろう。
たとえば武器はともかくとして、スキルや魔法などには広範囲に威力を発揮するものがある。
火属性の魔法やスキルでも爆発系の技などだ。
しかし、それだと相手もろとも番符も木っ端になってしまう。
そこで主催者側は規定はないと言いつつも、番符を割らないという特殊な規定だけは定めた。
何のために?
決まっている。
闘いに関して規定のない無差別戦の中において、どこに隠したか分からない番符を割らずに相手を戦闘不能にできる本当の強者を選別するためだ。
『さて、時間も差し迫っているのでそろそろ始めたいと思っております。いいですか皆さま、私を除いた参加者の中で1人だけが本選へと出場できるのです』
次の瞬間、部屋中に凄まじい熱気と殺気が沸き起こった。
『あなた方の健闘を祈ります……』
般若面の男は、天高く上げていた右手を一気に振り下ろす。
『始めッ!』
宣言と同時に参加志望者たちの叫声が地鳴りのように轟いた。
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