【完結】勇者PTから追放された空手家の俺、可愛い弟子たちと空手無双する。俺が抜けたあとの勇者たちが暴走? じゃあ、最後に俺が息の根をとめる

岡崎 剛柔

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第八章 ~華やかで煌びやかな地下の世界・裏闘技場の闇試合編~

道場訓 七十二   謎の般若面の男

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 大規模な乱戦バトル・ロイヤルが行われた部屋を出ると、俺と般若面はんにゃめんの男は四方を壁で囲まれた細長い通路の中を歩いていく。

「おい、このまま本選会場に行くのか?」

 俺は一定の距離を保っていた般若面はんにゃめんの男にたずねる。

「いえ、まずは控室ひかえしつへとご案内します。そこでお連れさまとともに本選――闇試合ダーク・バトルの詳細をご説明させていただきます」

 般若面はんにゃめんの男は振り返らずに答える。

 そこで俺は先ほどから思っていた疑問を投げかけた。

「なあ、アンタも本選に出るのか?」

「……どうして、そう思われたのです?」

 一拍いっぱくをあけたあと、般若面はんにゃめんの男はき返してくる。

「少なくともアンタは三十一番よりも強そうだからだ」

 三十一番とは先ほど俺の〈闘神とうしん威圧いあつ〉に耐えられた、Sランク以上の冒険者の強さを持った小柄こがらな男である。

「ご冗談を。今の私はただの雇われですよ。とてもとてもあなたにはかないません」

 本当にそうか?

 俺は般若面はんにゃめんの男の背中をじっと見つめた。

 それだけではない。

 両目に気力アニマを集中させ、その両目で般若面はんにゃめんの男を凝視ぎょうしする。

闘神とうしん真眼しんがん〉。

 闘神流空手とうしんりゅうからて2段にだんから修得できる技術の1つであり、術者の強さにより相手の真の個人情報を確かめることができる。

 直後、般若面はんにゃめんの顔の横に文字が浮かんできた。

 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 名前:?????????????????????????????????

 年齢:?????????????????????????????????

 職業:?????????????????????????????????

 称号:?????????????????????????????????

 技能スキル:?????????????????????????????????

 特技:?????????????????????????????????

 備考:?????????????????????????????????

 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「――――ッ!」

 俺は大きく目を見開くと、床を蹴って後方に跳躍ちょうやくした。

 無意識に自流の構えを取る。

 馬鹿な、こんなことがあるなんて……。

 俺が背中にじんわりと冷や汗を浮かべると、般若面はんにゃめんの男は立ち止まった。

 顔だけをこちらに向けてくる。

「いかがされました?」

 いかがも何もない。

 一体、こいつは何者なんだ?

 俺は黙って般若面はんにゃめんの男を見つめた。

 過去に俺は何百回と〈闘神とうしん真眼しんがん〉を使ったが、相手の個人情報がまったく見えないということは数える程度しかない。

 正直なところ、この〈闘神とうしん真眼しんがん〉も万能ではなかった。

 たとえば使用者である俺よりも相手が強い場合などには、相手が隠しておきたいことなどが読めない場合もある。

 だが、過去に相手の表示欄がすべて読めなかった人間は2人しかいない。

 ゴウケン・オオガミとエディス・ハミルトン。

 俺の祖父とリゼッタの祖父だ。

 ただ、これはある意味において当然だった。

 俺の祖父とリゼッタの祖父は過去に戦魔大陸せんまたいりくに渡り、魔人とり合って無事に帰って来た超人だったのだ。

 だが2人に対して〈闘神とうしん真眼しんがん〉を使ったのは何年も前だったので、今ならばもしかしたら数個ぐらいは見えるかもしれない。

 それでも俺の祖父はもう亡くなっているので試すことはできないし、リゼッタの祖父であるエディス・ハミルトンも60を過ぎた今でも本気を出せばSSダブルエスランクの冒険者では足元にも及ばない強さを保持しているはずである。

 どちらにせよ現時点で分かったのは、目の前の般若面はんにゃめんの男が俺の祖父とリゼッタの祖父並みに強いかもしれないということだった。

 それか他に考えられるのは、般若面はんにゃめんの男が凄腕の魔法使いかスキル使いのどちらかということぐらいか。

 魔法使いの中には固有こゆう魔法と呼ばれる特殊な魔法を使える者がおり、その中には小袋の中に信じられない量の荷物やアイテムを収納できる者や、俺の〈闘神とうしん真眼しんがん〉以上に相手の個人情報を読み取れる者がいるという。

 俺やエミリアのようなスキル使いにもしてもそうだ。

 さすがの俺もすべてのスキルを知っているわけではないが、魔法神秘系まほうしんぴけいに属するスキルの中には魔眼まがんと呼ばれる相手の魔力マナ量や属性を判別できるスキルがある。

 同じように魔法神秘系まほうしんぴけいに属するスキルの中には、そういった相手からの個人情報を意図的に遮断しゃだんできるスキルがあるのかもしれない。

 俺がそんなことを考えていると、般若面はんにゃめんの男は仮面の下で笑う。

「大丈夫ですよ。今の私はあくまでも本選出場者の案内係です。あなたとは闘いません」

 そう言うなり、般若面はんにゃめんの男は再び歩き出した。

 俺も構えを解いて歩き始める。

 けれども、般若面はんにゃめんの男に対する警戒けいかいは解かなかった。

 もしも不意をつかれても瞬時に対処できるよう気力アニマ充実じゅうじつさせておく。

 ほどしばらくして、俺たちは通路の奥にあった扉の前に到着した。

 般若面はんにゃめんの男が扉を開けて先に部屋へと入る。

 俺も開け放たれていた観音式かんのんしきの扉を通って部屋の中に入った。

「け、ケンシン師匠!」

 その部屋の中には、心配そうに俺を見るエミリアの姿があった。
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