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最終章 ~華やかで煌びやかな地下の世界・元勇者の消滅編~

道場訓 九十    闘神と魔神

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 3回戦と準決勝を勝ち抜いたケンシン・オオガミこと俺は、白熱する観客たちに見守られながら円形のリングへと上がった。

 すでに決勝戦の相手はリングの上で両腕を組み、不敵な笑みを浮かべて仁王立ちしている。

 カムイという名前の、俺と同じ空手家からてかだ。

 ただし、俺とはすべてが対照的だった。

 2メートル近い身長に銀色の髪。

 日焼けしたような赤銅色しゃくどういろの肌に加えて、着ていた空手着は漆黒なのだ。

「よう、大将。順調に勝ち進んできたな。ホンマに嬉しいで」

「別にお前を喜ばせるために勝ってきたわけじゃない」

 俺はキッとカムイをにらみつける。

 だが、カムイはどこ吹く風だった。

 俺の全身から放たれた闘気を見ても顔色1つ変えない。

 やはり、こいつは今まで闘ってきた奴らとはレベルが違う。

「まあ、そんな怖い顔せんと楽しもうや。これは遊戯ゲームなんやからな」

遊戯ゲーム?」

 そうや、とカムイはへらへらと笑いながら答える。

「どういう神経をしている。命懸けの闘いをしているんだぞ?」

「そんなもん、この闇試合ダーク・バトルだけやないやろう。この世に生きとし生ける者は、日々命を懸けて闘っとるんや。そう考えれば、こんな金持ちの快楽を満たす闇試合ダーク・バトル遊戯ゲーム以外の何物でもないやろうが?」

 確かにカムイの言うことも一理ある。

 だが、それとこれとは話は別だ。

「お前、狂っているな……」

 俺がそう言うと、カムイは「ワイが?」と頭上に疑問符を浮かべた。

「冗談きついな、大将。狂っているのはワイだけやなくて、大将もやで。どういう経緯があってこの闇試合ダーク・バトルに参加したんか知らんけど、エミリアちゃんみたいな可愛い子の命まで懸けさせて参加している時点で、大将も立派な狂人や」

「……かもな」

「かもな、やなくて実際にそうやで……まあ、それぐらいやないと闘神流とうしんりゅう空手家からてかなんて名乗れへんか」

 どういう意味だ、と俺はたずねた。

「さあな。知りたいならワイをこてんぱんに倒してみいや……無理やと思うけど」

「なぜだ?」

「そんなもん決まってるやないか」

 次の瞬間、カムイの全身から凄まじい闘気が放出された。

 その闘気は質量をともなった突風となり、俺の身体に容赦ようしゃなく吹きすさんでくる。

「大将は俺に負けて死ぬからや。せやけど、エミリアちゃんのことは心配せんでええで。俺の口利きで生かしてあげるさかい、死ぬんは大将だけっちゅうことや」

「いや、エミリアが助かる方法はまだ1つある」

 俺は下丹田げたんでんに力と意識を集中させ、〈気力アニマ〉を一気に練り上げた。

「俺がお前に勝てば何の問題はない。そうだろ?」

 カムイは健康そうな白い歯をき出しにして笑った。

「ええ度胸や。やれるもんならやってみい!」

 俺たちのやりとりを見て、頃合いだと判断したのだろう。

 進行役である若女面わかおんなめんの女は、慌てふためきながら試合開始の合図をする。

 そして――。

 大勢の観客が見守る中、闘神と魔神の闘いの幕が上がった。
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