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最終章 ~華やかで煌びやかな地下の世界・元勇者の消滅編~

道場訓 百一    勇者の誤った行動 ㊱

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「てめえは一体……」

 俺は全身を震わせながらつぶやいた。

 どうして顔無しノーフェイスが俺の顔になったのか分からない。

 だが、どう見てもそこにあるのは俺の顔だった。

「くっ!」

 やがて正気を取り戻した俺は、最大限の力を振り絞って顔無しノーフェイスの両手を無理やり自分の顔から引きはがす。

 先ほどよりも力がゆるんでいたため、俺は何とか顔無しノーフェイスの魔の手から脱出することができた。

 それでも油断は禁物だ。

 俺は慌てて顔無しノーフェイスから飛び退き、さらに距離を取って顔無しノーフェイスを見る。

 ごくり、と俺は口内のつばを飲み込む。

 一体、こいつは本当に何者なんだ?

 確実に普通の人間でも魔物でもない。

 俺が身構えていると顔無しノーフェイスは上半身を起こし、それからゆっくりと立ち上がった。

 開いた口がふさがらないとは、まさにこのことだ。

 やはり、どこからどう見ても顔無しノーフェイスは俺の顔をしている。

 それだけではない。

 先ほどは気づかなかったが、顔だけではなく身長や肉体までも今の俺と似たような身体つきになっているように見えた。

 馬鹿な、そんなことがあるわけがねえ。

 などと思っても、目の前には確固たる現実が堂々と存在しているのだ。

 ――あなた、中々いいですね。まがい物にしてはそれなりに力を使いこなせている

 不意に顔無しノーフェイスの言葉が脳裏によぎる。

 とはどういうことだ?

 俺のこの全身の軟体化は魔人の能力だ。

 それも戦魔大陸せんまたいりくに存在していた本物の魔人の力の一部という話だった。

 だとすれば、紛い物と言う意味はおのずと導き出される。

「魔人……」

 と、俺はおそるおそる言った。

 確証はまったくない。

 とはいえ普通の人間でも魔物でもないとすると、残る可能性はそれぐらいしか思いつかない。

 一方の顔無しノーフェイスは俺になった顔を触り感触を確かめている。

 そんな顔無しノーフェイスは落ち着いた声で言った。

「ふむ、まだこの身体のほうが動きやすいですね……それでも本来の私の1000分の1ほどしか出せませんが」
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