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旅人編 第一章
ジャック、カロンの村にて(5)
しおりを挟むSide:アリア
あまりにも美味しそうにカレーやポテトサラダを頬張るジャックさんを眺めていると、エルダおばさんに
「兄ちゃん、アリアちゃんの作ったベーコンポテトサラダは美味しいかい?
まあ、美味しくて当然なんだろうけどねぇ。
なんてったって、アリアちゃんの愛がたぁーくさん籠ってるんだからねぇ。」
ってからかわれた。
流石に、少しだけ居心地悪くなってきたから、この場を離れて帰りたい、って思う。
だけど、今日はもう遅くて辺りが暗くなってきているのに、初めてこの村に来たジャックさんが、迷わずにアルレの郷まで帰って来れる保証は無いので、せめて案内はしてあげないと、とも思ってしまう。
何か都合のいい理由を探していると、厨房の方に積み重なっている未洗浄の食器が見えた。
これだ!と思ったから、エルダおばさんに
「エルダおばさん、食器結構溜まってるよね?
洗うの手伝うよ。」
って言ってから気付いた。
全て、おばさんの手のひらの上だってこと。
過剰なまでに私をからかって、恥ずかしくなってこの場を離れようとするように仕向けていたんだ。
私が真面目だから、ジャックさんを一人にして置いて帰るはずがないことも考慮した上で、わざわざ、私の席から積み上がった洗い物が見えるようにして、洗い物を手伝うように、って。
お昼頃に狩猟家の狩りの手伝いに行っていたおじさんは、もう既に寝ているだろうし、声が聞こえて来ないから、おそらく、おばさんの子供たちもみんな寝ているのだろう。
あーあ、面倒だなぁ。
でも、まだ食べている最中のジャックさんを置いて帰るわけにもいかないし、仕方がないかぁ。
_____________________
Side:???
そうこうしているうちに、夜も深くなり、太陽のビン詰めも営業終了時刻になりました。
ジャックは、何故か皿洗いの手伝いをすることになったらしいアリアを待つ間、再びコレクションブックに記録する内容を纏めていました。
「ふむ、カレーの作り方と材料は聞いたから、忘れる前に書き記しておこう。
しかし、先程食べたカレーとは、摩訶不思議な食べ物だな。
これほどの種類の香辛料を使っていながらも、辛みと旨みの絶妙なバランスを保てている。
しかも、家では人気が無かった、煮込んだ猪肉を使用している。
何故か煮込むと、猪肉は微妙になるとか言っていたな。
そのせいか、家の料理人たちは、あっという間に研究を止めてしまっていたが、こんなに美味くなる調理方法があるなら、その秘訣をこのコレクションブックに記録しておきたいものだ。」
などと呟きながらジャックは、カレーに使われていた素材から製法までをノート数ページにも渡って、細かく書き記していました。
「ああ、そういえば、あのベーコンポテトサラダとやらは、アリアが作ってくれたのだったな。
意外なことに、かなり繊細で優しい味がしたな。
うん、あれもかなり美味かった。
それに、アリアの食べていたオムライスも、とても美味しそうだった。
よし。
もし、またここで食事を摂る機会に恵まれたら、次は、アリアが今回食していた、チーズオンオムライスとやらを頼もう。」
そういった決意を固めながら、ジャックはコレクションブックへ記録する内容を纏め続けていました。
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