わたしにしか懐かない龍神の子供(?)を拾いました~可愛いんで育てたいと思います

あきた

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第一章

6・この子誰の子

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「あんたぁ!そいつ!そいつ追い出して!」

 そう怒鳴る妻に、今度はキイロの父が怒鳴った。

「黙れ!この売女!」
「きゃあ!」

 ばしっとキイロの父が自分の妻の頬を殴った。

「申し訳ございません薄氷様!!!!!」

 必死に頭を下げる男に、銀髪の青年、薄氷うすらいはこれ以上ないほど冷たく尋ねた。

「どういうことか教えて貰おうか」

 キイロの父は全身から冷や汗が流れ落ちるのを恐怖に震えて感じるしかなかった。

(まさか、本当に薄氷うすらいさまであっただなんて)

 妻の姿を見れば、なにをやっていたのかひと目で理解はできるが、この姿を見た薄氷うすらいがなんと思い、何を言うのか。
 想像だけでもう気を失いそうなキイロの父だった。



「はー、やれやれ。やっとごはんにありつけた!」

 お腹いっぱい、卵粥を食べさせて貰いキイロは自分のお腹を叩いた。
 助けた子供もお腹いっぱいに卵粥を食べて、ずっとしゃっくりを繰り返している。

「はーい、おなかいっぱいねー、良かったねー」

 キイロの友人、梅花は子供を抱っこして背中を叩いている。

「ありがとう梅花。おかげで私もこの子も助かりました」

 深々と頭を下げるキイロに梅花は笑った。

「別にかまわないよー、親友の頼みだもん。でも一体どういうこと?嫁入り当日に火事って」
「いや全く意味がわかんないし」

 キイロにしてみても、嫁入りが決まったと聞いただけで、どうせろくでもない家だろうなとしか考えていなかった。

「正直、どうせなんかの付き合いとか父親に強引に押し付けられたんだろうなとしか思ってなかったんで、名前すら聞いてない。教えてくれなかったし」
「は?嫁入り先の名前を教えないとかありえるの?」

 驚く梅花だが、キイロにしてみたら普通だ。

「あの人たちが教えてくれるわけないし。そもそも、実際よく判ってなかったっぽいよ。軍の誰かってことくらいしか」

 キイロが聞いたのは嫁入りの日と、それまでに荷物を片付けておけという命令くらいのものだった。

「なんかいい加減ね」
「うちの親どもだもの。そんなものよ」

 それでも、嫁入り先はもうちょっとマシならいいなと正直思っていた。

「せめてご飯を食べさせてくれたら目いっぱい働くし、ついでに離縁にはすぐ応じるんで、それまではおいててくれたらありがたいし、どうしても駄目なら尼寺に逃げ込もうと思ってたし」

 尼寺なら、結婚さえしていれば逃げ込む事も出来るのを知っていたから、最悪、相手がクズそうならそうすることも考えていた。

「逃げる気も込みで張り切って嫁入り先に向かったら火事な上に子供まで拾っちゃって」

 子供は着物が焦げていたので、梅花の弟の着物を貰って着替えていた。

「結局、その子ってどこの子なんだろうね?」
「さあ?親が居るなら探す必要があるんだけど、もう暗くなってきたし、夜に出かけるのはちょっと度胸がいるし」

 親が子供を探しているなら、すぐにでも現場へ向かって親を探すか、もしくは役所に行ってもいいのだけれど。

「でも、人さらいの可能性も」
「そうなのよねえ」

 実は、最近このあたりでは子供をさらう事件が多発していた。
 親だと名乗る人が居たとしても、本当にこの子の親なのかどうか、キイロには確認する手段がない。

「まずはあの火事のあったお屋敷が一体誰なのかとか調べないと、どうしようもないわよねー」

 わけもわからないまま、嫁入り先にぶっこまれたキイロとしては、先にそっちを確認する必要がある。

「なんかキイロってやっぱちょっと面白いよね。普通は嫁入り先とかめちゃめちゃ気になるじゃない」
「気にはなったけど、お前には必要ないと怒鳴られたんで、まあそうかもなって思って」
「あんたも苦労が多いわねえ」
「ま、いつもの事よ。それより明日、悪いけど一緒に付き合ってくれる?元、嫁入り先を探したいの」
「いいわよ、キイロの頼みだもん」

 梅花は頷いた。
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