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第三章
17・子供を守れ
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それでも子供に罪はないので、もし育てなくちゃいけなくても、可愛いからいいかな、とキイロは思った。
ドアベルが鳴った。
「私、出るわ。はあい」
梅花がドアを開けると、そこにホテルのボーイが立っていた。
「失礼します、こちらに薄氷の奥様がいらっしゃるとお聞きしたのですが」
「ええ、あちらに……きゃっ、」
梅花が言い終わらないうちに、どかどかとボーイの後ろから警官が入って来た。
なに?と驚くキイロはさっと子供を抱き上げる。
「いたぞ!あの子供だ!」
警官が数人、勝手に部屋の中へ入り込んできた。
「なんですかあなたたち!」
梅花が叫ぶも警官らは「うるさい!」と梅花を突き飛ばした。
キイロは子供を抱えて、慌てて別の部屋へと駆け込んだ。
(よくわかんないけど、この子が狙われている!)
子供を隠さなければ、とっさに考え、キイロはクローゼットに目をやった。
(ここだ!)
「ごめんね、静かにしててね」
そう言うと子供をクローゼットに押し込み、そこらへんにあったクッションを胸の中へ押し込んだ。
「いたぞ!あの女だ!」
まるで子供を抱えているかのように逃げ出すキイロを警察官が追いかけてくる。
必死で子供の代わりのクッションをぎゅうぎゅうと抱きしめ、キイロは警察官の腕にかみついた。
「うあっ!この女め!」
ばしっと頬を殴られたが、キイロは隙を見て逃げ出し、ドアを抜け、ホテルのエレベーターのボタンを押すと、階下へと流し、自分は非常階段へ向かった。
「エレベーターだ!」
「追いかけろ!」
そういって別のエレベーターに乗り込む警察官を見送り、キイロは自分の部屋に戻った。
なんとかまいたかな、とホテルのドアに鍵をかけた。
「梅花?大丈夫?」
「大丈夫でもないけどね。ったく、なんなの?」
「わかんない。警察官っぽかったけど、警察官なのかなんなのか」
ふう、とキイロはため息をついて、隠した子供を迎えにクローゼットのある部屋へ戻ろうとした。
その時だった。
かちゃりと後頭部に、銃が突き付けられた。
「大人しくしてもらおうか」
うわ、とキイロは両手をあげた。
(しまった、まだもう一人いたのか)
「知恵のまわる女だな。他の連中はあっさり騙されたらしいが、俺はそうはいかん」
そうみたいだなーとキイロはため息をついた。
(しまったー、さすがに人数迄は把握できなかったや)
キイロの胸元に押し込まれているのがクッションだと知ると、男は鼻で笑ってキイロに尋ねた。
「子供はどうした」
「さっき外に逃がしました」
「嘘をつくな。そんな隙はなかったはずだ。どこにいる」
「外です」
「よっぽど死にたいのか?」
そう言われても、キイロはなぜか全く動じなかった。
(別に、生きている意味はない気がする)
自分の人生を思い返しても、そんなに惜しいほどのことはないし、あの子供は、多分大事な子供なのだろう。
ここで自分が死んで、時間が稼げるとは思わないが、子供を奪われなければなんとかなるかもしれないな。
キイロは突然、くるっと向きを変えた。
後頭部に押し付けられた銃が、額に向けられることになった。
驚いたのは銃を向けた警官だ。
いきなりキイロの顔を真正面から見据えることになり、たじろいだ。
「別に死にたいワケでもないけど、生きる価値も殆どないなって」
「キイロ?何言ってるの?」
驚いたのは梅花だ。
「私より正直、あの子供の方が価値があるから狙われてるのは判るのよね」
意味は全く分からないが、多分大事な子供なのはキイロにも判る。
だったら、優先すべきは自分よりもあの子供だ。
「どうしたの?私を撃ったら子供の居場所がわかるとでも?」
脅しても通用しないわよ、という風にキイロが言うと、警官はやや、躊躇った。
「お前、銃が怖くないのか?」
「よくわからないし怖いのかどうかも知らない」
でも、いま自分がすべきことは命乞いじゃない。
キイロは警官をまっすぐ睨んだ。
ドアベルが鳴った。
「私、出るわ。はあい」
梅花がドアを開けると、そこにホテルのボーイが立っていた。
「失礼します、こちらに薄氷の奥様がいらっしゃるとお聞きしたのですが」
「ええ、あちらに……きゃっ、」
梅花が言い終わらないうちに、どかどかとボーイの後ろから警官が入って来た。
なに?と驚くキイロはさっと子供を抱き上げる。
「いたぞ!あの子供だ!」
警官が数人、勝手に部屋の中へ入り込んできた。
「なんですかあなたたち!」
梅花が叫ぶも警官らは「うるさい!」と梅花を突き飛ばした。
キイロは子供を抱えて、慌てて別の部屋へと駆け込んだ。
(よくわかんないけど、この子が狙われている!)
子供を隠さなければ、とっさに考え、キイロはクローゼットに目をやった。
(ここだ!)
「ごめんね、静かにしててね」
そう言うと子供をクローゼットに押し込み、そこらへんにあったクッションを胸の中へ押し込んだ。
「いたぞ!あの女だ!」
まるで子供を抱えているかのように逃げ出すキイロを警察官が追いかけてくる。
必死で子供の代わりのクッションをぎゅうぎゅうと抱きしめ、キイロは警察官の腕にかみついた。
「うあっ!この女め!」
ばしっと頬を殴られたが、キイロは隙を見て逃げ出し、ドアを抜け、ホテルのエレベーターのボタンを押すと、階下へと流し、自分は非常階段へ向かった。
「エレベーターだ!」
「追いかけろ!」
そういって別のエレベーターに乗り込む警察官を見送り、キイロは自分の部屋に戻った。
なんとかまいたかな、とホテルのドアに鍵をかけた。
「梅花?大丈夫?」
「大丈夫でもないけどね。ったく、なんなの?」
「わかんない。警察官っぽかったけど、警察官なのかなんなのか」
ふう、とキイロはため息をついて、隠した子供を迎えにクローゼットのある部屋へ戻ろうとした。
その時だった。
かちゃりと後頭部に、銃が突き付けられた。
「大人しくしてもらおうか」
うわ、とキイロは両手をあげた。
(しまった、まだもう一人いたのか)
「知恵のまわる女だな。他の連中はあっさり騙されたらしいが、俺はそうはいかん」
そうみたいだなーとキイロはため息をついた。
(しまったー、さすがに人数迄は把握できなかったや)
キイロの胸元に押し込まれているのがクッションだと知ると、男は鼻で笑ってキイロに尋ねた。
「子供はどうした」
「さっき外に逃がしました」
「嘘をつくな。そんな隙はなかったはずだ。どこにいる」
「外です」
「よっぽど死にたいのか?」
そう言われても、キイロはなぜか全く動じなかった。
(別に、生きている意味はない気がする)
自分の人生を思い返しても、そんなに惜しいほどのことはないし、あの子供は、多分大事な子供なのだろう。
ここで自分が死んで、時間が稼げるとは思わないが、子供を奪われなければなんとかなるかもしれないな。
キイロは突然、くるっと向きを変えた。
後頭部に押し付けられた銃が、額に向けられることになった。
驚いたのは銃を向けた警官だ。
いきなりキイロの顔を真正面から見据えることになり、たじろいだ。
「別に死にたいワケでもないけど、生きる価値も殆どないなって」
「キイロ?何言ってるの?」
驚いたのは梅花だ。
「私より正直、あの子供の方が価値があるから狙われてるのは判るのよね」
意味は全く分からないが、多分大事な子供なのはキイロにも判る。
だったら、優先すべきは自分よりもあの子供だ。
「どうしたの?私を撃ったら子供の居場所がわかるとでも?」
脅しても通用しないわよ、という風にキイロが言うと、警官はやや、躊躇った。
「お前、銃が怖くないのか?」
「よくわからないし怖いのかどうかも知らない」
でも、いま自分がすべきことは命乞いじゃない。
キイロは警官をまっすぐ睨んだ。
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