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第八章
50・炎のような女性
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「どうって……」
キイロが戸惑っていると梅花がぐいっと前に立った。
「どうもこうも、奥様ですけど?」
「は?」
「だから、こちらは朧様の奥方様」
ふんっとなぜか梅花がふんぞり返っている。
すると赤っぽい髪の女性は全身から怒りの炎を出しそうな雰囲気で不機嫌を露わにした。
「そんな話聞いてないわ」
「あら、無関係の方にはそれはお知らせなさらないでしょう」
「無関係?なにもしらない方は恐ろしい事を言うのね」
「あら、そうですわね。すでに結婚された事すらご存じでないのですから仕方のない事ですわね」
梅花と赤っぽい髪の二人は互いににらみ合っていた。
「う、梅花、」
「いいのよ黙ってて。すでに夫婦なのに割り込もうなんて失礼でしょ。もしあなたが朧様と親しいのなら絶対に教えて貰っているはずなんだから」
「だからそれは……もういいわ、ばかばかしい。庶民には私たちの関係なんてわかるはずもないものね」
ふんっと鼻を鳴らす赤っぽい髪の女性に梅花が露骨に嫌な顔をして、キイロはおろおろとした。
「けんかじゃ。けんかはいかんのじゃ」
傍から見ていたりんが言った。
そこではっと梅花は我に返り、「そうですわね」とわざとらしくホホホと笑った。
「失礼しました。朧様と親しいお方のようですけど、先に朧様とお話になられたらよろしいかと」
そういってちらっと見ると、朧がキイロの為に飲み物を持って来た所だった。
「さあ、どうぞ……思?」
「結婚したなんて聞いてないわ」
ふんぞり返る女性に、朧が、ああ、という顔をした。
「誰にも知らせていないからね」
「どうして?私にも言えないっておかしいでしょ!」
「特殊な事情があったんだよ。失礼」
そういって朧はキイロに飲み物を渡した。
「どうぞ、疲れたでしょう」
「ありがとうございます」
朧に貰ったグラスには炭酸水が入っていた。
冷たくておいしくて、ほっとする。
それにしてもこの女性は朧とどういう関係なのだろうか?キイロが首を傾げていると朧が答えた。
「彼女は幼馴染です。親同士が長く付き合いがあって」
「婚約者よ」
「違います」
きっぱりと朧がキイロに向けて言った。
「勝手に彼女の一家がそう言っているだけで、薄氷では一切受け入れていない」
「私は受け入れてるわ」
「僕は受け入れない」
驚いた。
朧が僕というのを初めて聞いたからだ。
「昔からそう言ってる。僕にはずっと大切な人がいるって」
「それがその彼女って事?」
「そうだ」
きっぱり告げる朧に、キイロは不安は感じない。
これほどまでの人なら、そういった女性も居て当たり前だろう。
実際、キイロだって自分はだれかの身代わりと考えていたのだし。
「朧様、わたしりんと外へ出ていようかと思います」
ダンスフロアの奥から、庭園に出ることが出来るので、キイロはそっちへ向かおうと思った。
朧はちょっとほっとして、「すみません」と言ったので、これで正解なんだな、と思った。
「じゃありん、行こうか。梅花も」
「わたしは後から行くから」
そういってじっと朧と赤い髪の女性を見つめている。
観察するつもりなのか、と思って苦笑した。
「わかった。じゃあ外で待ってるね。いこっか、りんちゃん」
「うん!」
そういってキイロがりんと手を繋いだ瞬間だった。
「待ちなさい!逃げるの?話は終わってないわよ!」
赤っぽい髪の女性が怒鳴った瞬間だった。
ばちっと火花が散って、突然、キイロの帯から小さな火が上がった。
「えっ、」
胸のあたりの炎にびっくりしていると、朧がキイロの帯に手を当てた。
火は一瞬で消えた。
「―――――なにをする」
本気で怒った、唸るような不機嫌な朧の声に、赤っぽい髪の女性はそれでもじろっと朧を睨んだ。
「そこまでさせるその女のせいでしょ」
「いい加減にしろ。いますぐここで溺れたいのか」
「できるものならやってごらんなさい。お父様が黙ってないわよ」
ふふんと笑う女性に、キイロはここは早く去ったほうがよさうだと思った。
キイロが戸惑っていると梅花がぐいっと前に立った。
「どうもこうも、奥様ですけど?」
「は?」
「だから、こちらは朧様の奥方様」
ふんっとなぜか梅花がふんぞり返っている。
すると赤っぽい髪の女性は全身から怒りの炎を出しそうな雰囲気で不機嫌を露わにした。
「そんな話聞いてないわ」
「あら、無関係の方にはそれはお知らせなさらないでしょう」
「無関係?なにもしらない方は恐ろしい事を言うのね」
「あら、そうですわね。すでに結婚された事すらご存じでないのですから仕方のない事ですわね」
梅花と赤っぽい髪の二人は互いににらみ合っていた。
「う、梅花、」
「いいのよ黙ってて。すでに夫婦なのに割り込もうなんて失礼でしょ。もしあなたが朧様と親しいのなら絶対に教えて貰っているはずなんだから」
「だからそれは……もういいわ、ばかばかしい。庶民には私たちの関係なんてわかるはずもないものね」
ふんっと鼻を鳴らす赤っぽい髪の女性に梅花が露骨に嫌な顔をして、キイロはおろおろとした。
「けんかじゃ。けんかはいかんのじゃ」
傍から見ていたりんが言った。
そこではっと梅花は我に返り、「そうですわね」とわざとらしくホホホと笑った。
「失礼しました。朧様と親しいお方のようですけど、先に朧様とお話になられたらよろしいかと」
そういってちらっと見ると、朧がキイロの為に飲み物を持って来た所だった。
「さあ、どうぞ……思?」
「結婚したなんて聞いてないわ」
ふんぞり返る女性に、朧が、ああ、という顔をした。
「誰にも知らせていないからね」
「どうして?私にも言えないっておかしいでしょ!」
「特殊な事情があったんだよ。失礼」
そういって朧はキイロに飲み物を渡した。
「どうぞ、疲れたでしょう」
「ありがとうございます」
朧に貰ったグラスには炭酸水が入っていた。
冷たくておいしくて、ほっとする。
それにしてもこの女性は朧とどういう関係なのだろうか?キイロが首を傾げていると朧が答えた。
「彼女は幼馴染です。親同士が長く付き合いがあって」
「婚約者よ」
「違います」
きっぱりと朧がキイロに向けて言った。
「勝手に彼女の一家がそう言っているだけで、薄氷では一切受け入れていない」
「私は受け入れてるわ」
「僕は受け入れない」
驚いた。
朧が僕というのを初めて聞いたからだ。
「昔からそう言ってる。僕にはずっと大切な人がいるって」
「それがその彼女って事?」
「そうだ」
きっぱり告げる朧に、キイロは不安は感じない。
これほどまでの人なら、そういった女性も居て当たり前だろう。
実際、キイロだって自分はだれかの身代わりと考えていたのだし。
「朧様、わたしりんと外へ出ていようかと思います」
ダンスフロアの奥から、庭園に出ることが出来るので、キイロはそっちへ向かおうと思った。
朧はちょっとほっとして、「すみません」と言ったので、これで正解なんだな、と思った。
「じゃありん、行こうか。梅花も」
「わたしは後から行くから」
そういってじっと朧と赤い髪の女性を見つめている。
観察するつもりなのか、と思って苦笑した。
「わかった。じゃあ外で待ってるね。いこっか、りんちゃん」
「うん!」
そういってキイロがりんと手を繋いだ瞬間だった。
「待ちなさい!逃げるの?話は終わってないわよ!」
赤っぽい髪の女性が怒鳴った瞬間だった。
ばちっと火花が散って、突然、キイロの帯から小さな火が上がった。
「えっ、」
胸のあたりの炎にびっくりしていると、朧がキイロの帯に手を当てた。
火は一瞬で消えた。
「―――――なにをする」
本気で怒った、唸るような不機嫌な朧の声に、赤っぽい髪の女性はそれでもじろっと朧を睨んだ。
「そこまでさせるその女のせいでしょ」
「いい加減にしろ。いますぐここで溺れたいのか」
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