薊の檻~瑠璃鳥はいばらの籠に囚われる

あきた

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第二章・現代編

10・助けてくれた男性

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 逃げようとしたが腕を掴まれ、引き寄せられた。

「離して!」

 どんっと突き飛ばすと佐貫さぬきがしりもちをつく。
 するとさっきまでニヤニヤしていたのが急に怒り始めた。

「生意気な女め!時代遅れの染物屋そめものやが調子にのりやがって!」

 瑠璃るりはかっとなった。
 瑠璃は自分の家の職業に誇りを持っていたし、染物屋だけではなくいろんな事業に関わる祖母や家族を尊敬していたからだ。

「うるさいわね!成金のボンのくせに!」

 瑠璃が言い返すと、佐貫さぬきはかっとなって瑠璃の両腕を掴んだ。

「この女め!」
「うやっちゃいましょうよ」
「どんな女でも男にやられりゃ静かになる」
「そうだ、佐貫さん、こっちにもやらせてくださいよ」

 瑠璃は青ざめ、逃げようともがくが佐貫らは瑠璃を引っ張って引きずり、社の中へ連れ込もうとした。

「なにするのよ!」

 足で蹴っ飛ばしながら暴れて誰かを引っかき、がぶっと噛み付いてやった。

「いってぇええ!このくそアマめ!」

 佐貫が瑠璃を殴ろうとしたその時だ。


 ふわっと佐貫が浮き上がると、突然すっとんでいった。
 なにが起こったか判らず呆然としていると、次々に取り巻き連中が殴られている所だ。

(え?なに?なんなの?)

 地べたに手をついて呆然と見つめる瑠璃は、そこでやっと、男が次々に佐貫らを殴っているのだと気づいた。
 腹を殴られ、やり返そうとした佐貫らはあっという間に男に返り討ちにされ、次々に殴られ、蹴られ、全員がそこへ倒れ込んだ。

「ぐ、ぐぇえええ」

 みっともない声をあげているのは佐貫で、股間を思い切り蹴り上げられていたからだ。
 瑠璃は驚いたまま、目を見開いていたが、はっと気づくと佐貫に怒鳴った。

「あんたたちのやったことは、全部言ってやるから!」

 そう怒鳴ると佐貫らは慌てて腰を上げ、「おい、行くぞ!」と逃げ出した。

(助かった……)

 よくわからないが、おかげで助かった。
 瑠璃は立ち上がり、目の前の助けてくれた男にぺこりと頭を下げた。

「どうも、御親切にありがとうございました」
「―――――あれは、君のフィアンセか?だったらやめた方が良い」
「とんでもない。あんなゴミが勝手に言ってるだけです。わたしにはちゃんと」

 そういって顔をあげ、瑠璃は驚く。
 目の前の男が、かなり大きな男だった、というのもあるが、立派な体躯をしていたからだ。

(軍人?でも服はスーツ、だし)

 前髪が長く、顔半分が隠れている。
 しかもどことなく端正ないでたちとふるまいだ。

「あの、ありがとうございました。軍人さんみたいに強かったです」
「ああ、軍にはちょっと居たからね。君が無事で良かった」

 そういって手を伸ばして来た。
 意味も分からず、瑠璃が手を伸ばそうとしたその時だった。
 かくんと足がもつれ、瑠璃は転びそうになった。
 さっと男が瑠璃を支えた。

「どうしました。怪我でも?」
「あ、いえ、そうじゃなくて」

 そうして瑠璃は、自分のブーツの踵が壊れていることに気づいた。

「ああ!私のお気に入りのブーツが!」

 さっき乱闘した時に、はずみでどこか壊れてしまったらしい。

(うっそお。片方、裸足で帰るしかないのかなあ)

 もーなんなんだ、と瑠璃ががっくりしていると、男は突然、瑠璃を抱え上げた。

「きゃあ!」
「靴がないとどうしようもないな……このまま送ろう」
「いや、あの」

 いきなり知らない男性に抱きかかえられ、瑠璃は混乱した。

「だ、大丈夫です、歩けるし、裸足で帰れば」
「年頃の女性が、着物も髪も乱れて、おまけに裸足なんてなにかされましたって大声でしゃべりながら宣伝するようなものだぞ」

 男性の言葉に瑠璃は黙ってしまった。

「その通りですけど」
「俺の店が近くにある。そこで最低限、整えて帰ればいい。女性ものなら揃っている」

 店?女性もの?と瑠璃は首を傾げた。

「でも、助けて頂いたのに更に御厄介に」
「乗りかかった船というものかな」

 男はそう言って瑠璃を見て笑った。
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