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第七章・兎織の過去
47・瑠璃の過去
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兎織が誘拐されてからというもの、瑠璃は毎日変わらず過ごしているように見えた。
幼い頃から一緒で、最近は学校に行き始めたから兎織との関りもべったりじゃなかったからかと周りは思ったが、あることに気づくと口ごもった。
瑠璃は毎日、朝から夕方になるまでずっと神社で待っていた。
「どうしたの、瑠璃ちゃん?」
「待ってるの」
誰が聞いてもそう答えるだけで、朝起きて、それからお昼にちょっと家に帰り、また出かけてゆく、その繰り返しで毎日を過ごした。
気づいた家族は習い事をいくつもさせて瑠璃の気を逸らそうとしたが、瑠璃は大人しく習い事には従ったが、必ず空いている時間は神社で過ごした。
何を何度聞いても、「約束だから」を繰り返す。
「兎織を待ってるの。だってそう言ったから。兎織は絶対に約束を守るから」
それだけをいってただ笑う瑠璃を、誰も強引に辞めさせることが出来なかった。
やがて学校に通い始めても、瑠璃はその行動をやめなかった。
だから実は、瑠璃には幼いころからの友人が一人もいない。
最初は仲良くなっても、毎日、なにがあるわけでもない神社でずっと待っている瑠璃に、大抵、みんな飽きていなくなった。
瑠璃は神社で勉強をこなして、ずっと長い時間を過ごした。
そんな様子だったから、自然、瑠璃の面倒は神主が気にするようになってきた。
暫く、瑠璃の店からはお目付け役がずっとついていたし、心配も特になかった。
やがて大きくなり、女学校に通うようになると、流石に毎日、朝から晩まで神社に居るのは難しくなった。
勉強も必要で、付き合いも必要で。
大きくなってくれば、まわりも口うるさくやめろというようになる。
だから、あくまでお参りをしているだけ、というようにすれば誰も文句は言えなくなった。
女学校に行って、その後は神社へ向かう。
そういうスケジュールが出来上がっていた。
そんな頃、突然、この辺りで成功しているという緑光デパートの御曹司に目をつけられた。
御曹司といっても成り上がりで、元々は父親が始めた小さな商店が大当たりして、しかも最近の好景気に乗っかってうまくいっているだけだ。
多分、瑠璃に近づいて来たのも、瑠璃を好きになったからではなく、瑠璃の家がこのあたりの商人をとりまとめている立場だから、瑠璃を狙えば自分がこの地域を手中にできると思ったのだろう。
まったくもってうっとおしい。
瑠璃はもう幼い少女ではなかったので、兎織が帰ってこないなら理由があるのだ、くらいはわかっていた。
兎織は絶対に約束を守る。
だったら、まだ帰って来れない理由があるなら、それを瑠璃が助ける必要がある。
だから、言葉を覚え、仕事を見つけ、大陸に行くつもりだった。
幸い、というか兎織がいなくなってしばらく、瑠璃に弟が生まれ、家の事は弟に、という空気が出来上がりつつあった。
それで良かった。
これからは女性も仕事をする時代だ、とばかりに瑠璃が勉強する事を家族は逆に喜んでいたし、ひょっとしたら海外に輸出することがあっても、言葉が通じたほうが良い、という瑠璃の説明に皆納得するしかなかった。
(無力だったら、兎織を守れない)
兎織は必ず帰って来る、または帰って来ようとするはずだ。
それを瑠璃は知っている。
だから、なにがあっても兎織は帰って来る前提で瑠璃は動いていたし、帰って来れない状況の為に、助けになる事ばかりを考えた。
(トールは、わたしのせいで)
瑠璃が好奇心のままに洋館になんか行ってしまったから、妙な事に巻き込まれてしまった。
本来なら瑠璃が一番被害をおうべきなのに、かわりに兎織が誘拐されてしまった。
だから、瑠璃は絶対に兎織を取り戻さなければならなかった。
兎織が誘拐された後、一度も、瑠璃は兎織の家族に責められたことがない。
全部説明しても、それでも兎織の家族は謝る瑠璃に首を横に振った。
「瑠璃ちゃんのせいじゃない」
だから謝らなくてもいい、と。
幼い頃から一緒で、最近は学校に行き始めたから兎織との関りもべったりじゃなかったからかと周りは思ったが、あることに気づくと口ごもった。
瑠璃は毎日、朝から夕方になるまでずっと神社で待っていた。
「どうしたの、瑠璃ちゃん?」
「待ってるの」
誰が聞いてもそう答えるだけで、朝起きて、それからお昼にちょっと家に帰り、また出かけてゆく、その繰り返しで毎日を過ごした。
気づいた家族は習い事をいくつもさせて瑠璃の気を逸らそうとしたが、瑠璃は大人しく習い事には従ったが、必ず空いている時間は神社で過ごした。
何を何度聞いても、「約束だから」を繰り返す。
「兎織を待ってるの。だってそう言ったから。兎織は絶対に約束を守るから」
それだけをいってただ笑う瑠璃を、誰も強引に辞めさせることが出来なかった。
やがて学校に通い始めても、瑠璃はその行動をやめなかった。
だから実は、瑠璃には幼いころからの友人が一人もいない。
最初は仲良くなっても、毎日、なにがあるわけでもない神社でずっと待っている瑠璃に、大抵、みんな飽きていなくなった。
瑠璃は神社で勉強をこなして、ずっと長い時間を過ごした。
そんな様子だったから、自然、瑠璃の面倒は神主が気にするようになってきた。
暫く、瑠璃の店からはお目付け役がずっとついていたし、心配も特になかった。
やがて大きくなり、女学校に通うようになると、流石に毎日、朝から晩まで神社に居るのは難しくなった。
勉強も必要で、付き合いも必要で。
大きくなってくれば、まわりも口うるさくやめろというようになる。
だから、あくまでお参りをしているだけ、というようにすれば誰も文句は言えなくなった。
女学校に行って、その後は神社へ向かう。
そういうスケジュールが出来上がっていた。
そんな頃、突然、この辺りで成功しているという緑光デパートの御曹司に目をつけられた。
御曹司といっても成り上がりで、元々は父親が始めた小さな商店が大当たりして、しかも最近の好景気に乗っかってうまくいっているだけだ。
多分、瑠璃に近づいて来たのも、瑠璃を好きになったからではなく、瑠璃の家がこのあたりの商人をとりまとめている立場だから、瑠璃を狙えば自分がこの地域を手中にできると思ったのだろう。
まったくもってうっとおしい。
瑠璃はもう幼い少女ではなかったので、兎織が帰ってこないなら理由があるのだ、くらいはわかっていた。
兎織は絶対に約束を守る。
だったら、まだ帰って来れない理由があるなら、それを瑠璃が助ける必要がある。
だから、言葉を覚え、仕事を見つけ、大陸に行くつもりだった。
幸い、というか兎織がいなくなってしばらく、瑠璃に弟が生まれ、家の事は弟に、という空気が出来上がりつつあった。
それで良かった。
これからは女性も仕事をする時代だ、とばかりに瑠璃が勉強する事を家族は逆に喜んでいたし、ひょっとしたら海外に輸出することがあっても、言葉が通じたほうが良い、という瑠璃の説明に皆納得するしかなかった。
(無力だったら、兎織を守れない)
兎織は必ず帰って来る、または帰って来ようとするはずだ。
それを瑠璃は知っている。
だから、なにがあっても兎織は帰って来る前提で瑠璃は動いていたし、帰って来れない状況の為に、助けになる事ばかりを考えた。
(トールは、わたしのせいで)
瑠璃が好奇心のままに洋館になんか行ってしまったから、妙な事に巻き込まれてしまった。
本来なら瑠璃が一番被害をおうべきなのに、かわりに兎織が誘拐されてしまった。
だから、瑠璃は絶対に兎織を取り戻さなければならなかった。
兎織が誘拐された後、一度も、瑠璃は兎織の家族に責められたことがない。
全部説明しても、それでも兎織の家族は謝る瑠璃に首を横に振った。
「瑠璃ちゃんのせいじゃない」
だから謝らなくてもいい、と。
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