神の手は祈りの形をしていない 〜「将来、異能力で犯罪を犯す」と予知されて隔離されたボクら。最弱能力で未来を塗り替える〜

陽々陽

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006_秘密の趣味とNGワード

006_1

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 共同生活の難点は、一人の時間が取れないことだ。
 あかりは大きな布製のカバンを肩にかけて、木立の間を歩いていた。
 もう、ずいぶん歩いている。

あかり「……ここなら、大丈夫かしら」

 やっと落ち着いて一人になれそうな場所を見つけた。
 校舎から離れた一本の木。
 森と呼ぶにはささやかだが、幾本かの木々を超えた先の場所になる。

 それでも、あかりは周囲を見回してから、木の陰に腰を下ろした。
 カバンから二本の鋭い棒を取り出す。
 それに、力なくうなだれた、見るも無惨な動物……

あかり「……ふふ……」

 あかりは笑みを浮かべて、棒を突き刺し---

********

 共同生活の良いところは、孤独を感じにくいところだ。
 だが時には一人になってしまうときもある。

 今日は休日。授業は休みだが、隔離は解かれることなく、ユウたちは浮き島の中だけで自由に過ごすことを許された。

 先ほどまで、ユウの側にはミナトとトーマがいた。
 今日の夕食時に行う催しについて、楽しく会話を弾ませていた。

 トーマが不意に、用事があるから、と言い出して別行動になった。
 さらに、カオルにミナトが呼び出された。今日の夕食で確認したいことがあるらしい。

ユウ(……ボクもミナトと一緒に、カオルのとこに行けば良かった……)

 唐突に訪れた一人の時間を、ユウは無性にさびしく感じた。

ノクス(お前、さすがにどうかと思うぞ?
 金魚のフンみたいにどこに行くにもくっついてって……そのうち、ウザがられるからな?)

ユウ(……うるさいな……)

ノクス(ここ来る前は、ずっと一人だったじゃねえか。ぼっちでも楽しくやってたじゃねえか)

ユウ(……だからだよ)

 ユウはいらだち紛れに足を進めた。
 こんな時に限って、誰ともすれ違わない。
 気がつくと、いつの間にか校舎から離れた木々の、しかも奥の方まで来てしまった。

 きっと、こんなところには誰も……

ユウ「あれ……?」

あかり「げっ」

 大きな木の下に、あかりが座っている。
 ユウは満面の笑みを浮かべた。

ユウ「あかり!どうしたの?こんなとこで?」

あかり「……来ないで!」

 あかりの声は遅く、いや、ユウが近づくのが早過ぎて、ユウの目に映ってしまった。
 あかりの手に抱かれた、動物の半身……

 あちこちほつれた、作りかけのあみぐるみ……

ユウ「……ウマ……?」

あかり「なんでよ、ネコよ、見りゃわかるでしょうが」

 ……分からない……
 ユウは深刻な顔で見つめた。

あかり「……あーもー、なんで来るのよ……」

 あかりは作りかけの自称ネコを手で隠しながら、つぶやいた。
 何度もやり直したのか、ヒザの上は毛糸まみれだ。

ユウ「いや、ちょっと、散歩……」

あかり「じゃあ、すぐに通り過ぎなさいよ」

 ぷいっと顔をそむけて、言い放つ。

ユウ「……」

あかり「……うるさいわね、わかってるわよ。ヘタって言いたいんでしょ、ヘタって……」

ユウ「いや、何も言ってな……」

あかり「さいあく……せっかく誰にも見つからないようにしてたのに……」

 あかりはため息をついた。

ユウ「……ごめん……
 でも、あの……隠れること、ないと思うよ?」

あかり「……」

ユウ「最初は誰でも初心者なんだしさ?
 別に、誰も、笑ったりしないと、思う……」

あかり「……あんたは女同士を分かってない……」

ユウ「……」

あかり「……わたし、昔から編み物だけは苦手で……
 他のことは何でも大体出来るから、不器用なイメージ無いのに、これだけ……」

ユウ「……不器用なイメージ……無い……?」

 ユウはあかりの作った料理の数々を思い出したが、それ以上は考えるのをやめた。

あかり「……わたしだって、かわいいの、作りたいのに……」

 あかりは不満の表情を浮かべたまま、あみぐるみの次のひと編みを進めようとした。
 しかし、数回前の編み目を飛ばして編んでしまったことに気がついて、肩を落とした。

ユウ「……貸して」

 ユウはあかりの手の上から編み棒を握り、すいすいと間違った箇所までほどいた後、正しい編み方でほどいた分を編み直した。

あかり「……なんで、出来るのよ……?」

ユウ「まあ、その……一人遊びに傾倒していた、というか……」

ノクス(ぼっちでしたって、ちゃんと言えば良い)

あかり「……ちょっと、この先で分かんないとこあるから……
 ……教えて……」

 恥ずかしさにたえるように、目を逸らしながら、あかりが言った。

ユウ「もちろん!」

 ユウの屈託のない笑顔に、あかりはさらに顔をそむけた。

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