神の手は祈りの形をしていない 〜「将来、異能力で犯罪を犯す」と予知されて隔離されたボクら。最弱能力で未来を塗り替える〜

陽々陽

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006_秘密の趣味とNGワード

006_2

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 隔離生活の最大のマイナス点は、食材が限られていることだろう。
 ここ数日のじゃがいも祭はつらかった。

 肉じゃが、ポテトサラダ、ガレット、コロッケ、フライドポテト、じゃがバター、アルチョッカ……
 同じ種類の料理が並ぶのがシャクで、意地になってさまざまなバリエーションをひねり出した。
 だが、それも昨日までだ。

カオル「さあみんな!好きなだけ食ってくれ!」

 カオルは、さまざまな味と色と食材の料理を次々と並べた。
 好きな味を自由に取るビュッフェスタイルだ。

 カオルはビュッフェスタイルが好きだ。
 食事を食べる側でなく、提供する側として。
 定食は同じものを延々と作り続けることになるし、注文を受けると自分のペースで作れない。
 その点、ビュッフェなら大皿ごとに色々なものを作れるし、自分のペースで作って補給していけば良い。
 人気ですぐに無くなる皿と最後まで残り続ける皿から、料理の出来映えを推測することも出来る。こっそり挑戦的な味付けを試すことも。
 このクラスの料理当番になれた自分は幸せ者だと、感じている。
 自分の異能力にも、都合が良い……

 こはく「すっげ。今日、なんか、豪華じゃん?」

カオル「たっぷり食材が補給されたからな!使い放題だぜ!」

エレナ「いや、一週間分だからな!計画通りに!
 ……なんだ、その皿は?!」

 予定にない真っ赤な皿を見て、エレナは目を丸くした。

ミナト「ふっふっふ……説明しましょう」

********

 共同生活というのは、24時間遊び相手がいるということだ。

ミナト「それは罰ゲーム用に用意してもらったんです」

 ミナトは誇らしげに言い放った。

カオル「一口ピザトースト~タバスコの海に溺れて~だぜ。
 それから……」

 カオルはもう一方の手に持ったお盆も掲げて見せた。

カオル「ご褒美のいちごのミニパフェだ」

 お盆には10個ほどのパフェ。グラスにきれいに盛り付けられ、鮮やかなイチゴが映える。
 この島での生活が始まってから、甘味に飢えていたこはくが歓声をあげた。

ミナト「さあ、ゲーム、しましょう!勝ったらパフェ、負けたら激辛ピザトーストですよ!
 エレナさんも、やりますよね?」

 まったく悪びれないミナトの頭に、エレナはげんこつを落とした。

エレナ「無断でイベントを開催するな!」

ミナト「……ぐ、ぐぅ……」

 頭を押さえて、うめき声をあげるミナト。

ミナト「……み、みんな、仲良くなれるかなって……」

 悪気があったわけではないのだろう。エレナはため息をついた。

エレナ「……次は、ちゃんと事前に相談するように。
 限りある食材を使うような場合は、特に、だ」

ミナト「……それは、カオルが任せろって……」

エレナ「……」

 エレナはもう一度、ため息をついた。
 カオルにも後で説教が必要だ。

ミナト「……ごめんなさい。今日は、どうしたら……」

 一転、しおらしくなったミナト。エレナはほんの少し考えるふりをしたが、ちらりと横目でいちごのパフェを見た。

エレナ「ま、まあ?今日はもう作ってしまっているからな。
 ……次はちゃんと相談するんだぞ?」

 エレナも甘いものには弱いようだ。

ミナト「……では、気を取り直して……」

 ミナトはみんなの方を向いて、声を張り上げた。

ミナト「今日は、1対1でNGワードゲームをしましょう。
 ボクとカオルで、試しにやりますね」

 カオルは奥のテーブルにお盆を置いて、ミナトの横に立った。

ミナト「最初に紙とペンを渡しますので、そこに、相手に見えないようにNGワードを書いてください。このNGワードを相手に言わせたら勝ちです。
 書いた紙を交換して、こうやって……」

 カオルから紙を受け取ると、ミナトは額のところに掲げた。
 そこには、「おいしい」と書かれている。

ミナト「くれぐれも、見ないようにしてくださいね!
 お互いにこの状態になったら、ゲームスタートです。
 相手と自由に会話して、相手にNGワードを言わせましょう」

●模擬戦
 ミナト:NGワード「おいしい」
 カオル:NGワード「今度作ってやるよ」

ミナト「カオルって、料理のレパートリー多いですよね?」

カオル「ああ。昔、何日新しいものを作り続けられるかってチャレンジしたことがあって……
 いろんな国の料理にも挑戦してたんだ。多分、1か月くらいは続いたな。
 最終的に、卵かけご飯が食いたくなって終わったんだけど」

ミナト「最後はそれで終わるんですね」

カオル「しばらく口なれないものばっかり食ってた後に食べる、卵かけご飯のうまさと言ったら」

ミナト「それは……感無量でしょうね。
 他にはどんな料理を作っていたんですか?珍しい料理もありました?」

カオル「シャクシュカっていう、北アフリカのトマトと卵の煮込み料理があって、これは今でもたまに食べたくなるな」

ミナト「へえ。聞いたことないです。食べてみたいなあ」

カオル「わかった。

 『今度作ってやるよ』」

ミナト「はい!
 ボクの勝ちです」

カオル「え?(額に掲げていた紙を見る)
 あ、これか!」

ミナト「珍しい料理の話をしたら、絶対言ってくれると思ってました。

 ボクのNGワードは……(紙を見る)
 うわ、あぶな!一回、言いそうでしたね、これ」

カオル「感無量、とか言ってたときな」

ミナト「いつも使わないような言葉に変換してしゃべるのも、コツの一つですね。

 こうして勝負に勝ったらパフェを、負けたら激辛ピザトーストを受け取ってください。
 では、対戦相手を見つけた方から、こちらに!」

********

ルイ「なあ、ユウ?オレと一緒にやろうぜ?」

 ユウは後ろから声をかけられて、ビクッとしてしまった。
 声をかけてきたのは葛城ルイ。電気を操る能力者だ。

ユウ「う、うん……」

 ユウは周囲を見回した。トーマは見当たらない。
 ミナトも司会者みたいにしているし……

ユウ「いいよ、やろう」

ノクス(いいのか?多分コイツ、お前のことナメて声かけていてるぞ?)

 ルイは髪を染めた、やや軽薄そうな男だ。
 今も、ニヤニヤ笑いを浮かべている。

ユウ(そんなこと言うもんじゃないよ。せっかく、声かけてきてくれたんだから)

●第一回戦
 ユウ:NGワード「すっげー」
 ルイ:NGワード「テキトーで」

ルイ「オレの異能力はさ、簡単に言えば電気そのもので、接触状態で放電すりゃゾウだって気絶させられるぜ」

ノクス(お前、いつもすげえすげえって連呼するから、それだけは言うなよ)

ユウ(うるさいな、勝手にやらせてよ)

ユウ「す……あー、うん。それって、具体的に何ボルト出せるとか、ある?」

ルイ「測ったことねえ。測り方も分かんねえし。いいんだよ、細かいことは。
 オレ、調整とか細かいのは苦手でさ、とりあえず今は出力上げたいなーって思ってる。
 能力としてはさ、多分、訓練すりゃあ電子機器とかも操れんじゃねえかな」

ユウ「へー……そういう訓練もしてみれば良いのに」

ルイ「いやー、面倒くさ……これNGワードじゃないよな?」

ユウ「違うよ」

ルイ「なんか、細かい話に誘導されてそうな気がして」

ユウ(ヤバい。半分くらいバレてる……)

ルイ「この前も携帯充電しようとして、バッテリーが破裂してさ。
 多分、爆弾にもなるぜ、あれ」

ユウ「す……それは、それは」

ルイ(あれ、コイツ、なかなか言わないな。いつも口走ってるから、チョロいと思ったけど……
 すごいって言わそうとしてるの、感づいてるのか?)

ルイ「よし、見てろよ」

 ルイはユウの顔の前に、片手を差し出した。人差し指と親指が伸びている。

 バチッ……バリバリバリ!

 その2本の指の間に青白いスパークが走る。

ユウ「うわ……すっ……」

 思わず、ユウが口走りそうになった瞬間。
 ユウの額に小さな電撃が飛び火した。

ユウ「いって!『すっげえ』、いってー!」

 のけぞった拍子に、ユウはイスから転げ落ちた。

ルイ「ご、ごめん!大丈夫か?」

 ルイが慌てて、ユウをのぞき込んだ。
 涙ぐんだ目でユウが見上げると、ルイは心配そうで申し訳なさそうな顔をしていた。
 だが、その手に一枚の紙をユウに見せつけるようにして持っていた。
 ……ユウが落としたNGワード「すっげー」が書かれた紙を。

ルイ「あと、オレの勝ちでいいか……?」

ユウ「すっげー、ひどいと思う」

********
 
 常磐しおん(ときわしおん)は、ルームメイトのあかりに声をかけた。

しおん「あかり!私と対戦して欲しいです!」

 小柄で幼い容姿の彼女は、あかりと同学年にはとても見えない。

しおん「パフェ、すごい美味しそうです!絶対、食べたいです!」

 ツインテールをぴょこぴょこ揺らしながら、あかりの腕を掴んだ。突然のパフェとゲームイベントに興奮を隠しきれないようだ。
 対して、あかりは冷たさを感じるくらいの無表情だった。

あかり「ごめんなさい、しおん。わたしは負けるわけにはいかないの」

 しおんの手から離れ、あかりは向かった。
 この戦いで、最も確実に勝利できる相手。
 夜刀かぐらの元へ……

かぐら「うちと勝負ッスか?良いッスよ!」

 口いっぱいにパスタを頬張りながら、かぐらは応えた。

●第二回戦
 あかり:NGワード「気合い」
 かぐら:NGワード「※※」

かぐら「さあ、どんな話をするッスか?どっからでもかかってくるッス!」

 あかりはかぐらの額の紙を指さした。

あかり「わたしの勝ちね」

 冷たく言い放つ。
 かぐらが自分の掲げていた紙を見るとそこには……

 「ッス」

かぐら「……これ、ズルくないッスか……?」

あかり「きゅうぅぅぅん♥おいっしー♥」

 パフェを頬張って嬌声をあげるあかりに、かぐらの言葉は届かなかった。

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