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007_実行
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視聴覚準備室の次に二人が拠点としたのは、郊外の1LDKアパートだった。
ここで二人の計画は、大詰めを迎える。
アカネ「日本が財政破綻を計画中っていう、フェイクニュースを流す」
ひとつひとつ確認するように、アカネは言った。
アカネ「当然、ただのフェイクニュースなんかじゃ、世界は動かない。
せいぜいネットを騒がすくらい」
リン「だから、ボクが証拠をねつ造する、です」
リンの言葉にアカネはうなづいた。
リン「国会議員秘書のパソコンの乗っ取りに、成功してるです」
リンはここ半年、さまざまな場所に無料wifiを偽装して設置し、罠を張った。そして待った。
無防備に無料wifiにつなぐ、政治的な影響力を持つ人間を。
現役国会議員の秘書を見つけたときには、あまりにも興奮して即刻アカネに報告した。
アカネは、リンの早口で専門用語の混じった報告に、貼り付いた笑顔で相づちを打つことしか出来なかった。
そして最後に、「リンちゃんが嬉しそうで、わたしも嬉しい」とだけ言葉にした。
リン「そのパソコンを使って、国会議員の個人の公式サイトにボクの仕込んだファイルをアップするです。
ミスを装って、内部情報を流出させたように見せかけるです」
アカネ「ホントは与党すじの議員だったら良かったんだけど……
ま、ちゃんと国会議員だからね。しっかり踏み台になってもらうわ。
で、そのファイルが……」
リン「政府が財政破綻の準備をしているって内容、です」
アカネは嬉しくて仕方が無い、という表情を浮かべた。
アカネ「ね、ね、ね。いつやる?」
その日が待ちきれないようだ。
リン「動画の再生数が伸びて、国会議員側の対応が一番後手に回りやすい……金曜の夜が良いと思うです」
アカネ「わかった。金曜ね!」
アカネの満面の笑みを見て、リンは不思議な思いだった。
彼女はこの笑顔で、日本を転覆させようとしている。
********
国会議員の個人サイトに偽計画書がアップされ、デマゴーグが大々的にその計画書を取り上げた動画をアップした。
最初の一本は、その存在を知らせる速報。続いて、日本の財政破綻について考察した動画を投稿した。
そこでは、今、日本を財政破綻させて経済を立て直すことの是と、今の政府とは違う、別の仕組みによる企業国家の可能性について触れた。
動画は瞬く間に拡散され、さらに偽計画書を直接報道するネットニュースも出現した。
さらにTVニュースでも取り上げられるようになったときには、すでに海外にも報道が進んでいた。
週明けに開場される為替市場で、日本円の価値が暴落することが、もはや決定事項のように囁かれた。
アカネはそんな世界の動きを嬉々として観察し、ひとつひとつを嬉しそうにリンに言って聞かせた。
彼女にとって、これは世界を良化する正義の行為で、誇らしい成果が今まさに結実しようとしているのだ。
リンは、少し違った。
反響の大きさに面食らい、不安と恐怖が芽生えるのを感じた。
自分はこの手で、世界に大きな混乱を生み出した。正しいこと、理想の実現、アカネ。彼女が信じるものは、たとえそれがどれだけ眩しくても、不安を全て払拭するものではなかった。
国会議員の公式サイトの対応は遅く、偽計画書が消されたのは、月曜になってからだった。
それが、徒となった。
********
錯綜した情報は1週間ほどで整理され、世界は落ち着きを取り戻していた。
削除が遅れた偽計画書は広く拡散され、さまざまな専門家にその粗を指摘された。
「これは政府の作ったものではない」と結論づけられ、日本の財政破綻計画は一部の陰謀論者の言に登場するだけのものでしかなくなっていた。
日本は、政治の中心である国会議員のパソコンがハッキングされ、さらにフェイクニュースに派手に踊らされた国として、国際的な信頼を大きく損なった。
それに伴い、日本円の価値も暴落した。
だが、それは本当の財政破綻を引き起こすレベルにはほど遠かった。
アカネ「くっそー……」
アカネは日本円の為替レートを見ながら、何度目か分からない悔しさの声を漏らした。
日本円の価値は一時期に比べて、大分回復している。
アカネ「一足飛びには行かなかったかー……」
リン「でも成果がなかったわけじゃない、です」
フェイクニュース拡散の前に外貨に換金していた資金は、日本円が回復しきる前に日本円に戻しており、大きくその価値を膨らました。
アカネ「今度こそ札束風呂、出来ちゃいそうね」
リン「余裕、です」
デマゴーグは、結果的にフェイクニュース拡散の尖兵となってしまったものの、多くの人の目に触れ、チャンネル規模を大きく拡大した。
今回の騒動に対しての謝罪動画も上げており、概ね好評に受け入れられた。
土台、国会議員のサイトがハッキングされ、偽計画書がアップされる事態になるとは思いもよらなかったし、偽計画書が暴かれたのは騒動の後半になってからだ。
こうなってしまったのは、致し方ないことだ、というのが大まかな結論のようだ。
ただ一部で、いち早く動画を上げたデマゴーグと、ハッキング犯を結びつける発言は見られた。
リン「チャンネルとしては、本当に多くの人の目に触れたです。
きっと、アカネの理想に賛同する人も増えてくるですよ」
アカネ「まー、それは良かったかも」
理想が実現出来れば、それで良い。それが、自分の手による結果である必要は無い。
アカネ「次はどうしよっかね」
リン「次……ですか……」
そして日本政府は、威信にかけてハッキング犯を捕まえる、と公表した。
侵入経路を徹底的に洗い出し、特定した、という報道もあった。
リンはこの3日間、一睡も出来ていない。
ここで二人の計画は、大詰めを迎える。
アカネ「日本が財政破綻を計画中っていう、フェイクニュースを流す」
ひとつひとつ確認するように、アカネは言った。
アカネ「当然、ただのフェイクニュースなんかじゃ、世界は動かない。
せいぜいネットを騒がすくらい」
リン「だから、ボクが証拠をねつ造する、です」
リンの言葉にアカネはうなづいた。
リン「国会議員秘書のパソコンの乗っ取りに、成功してるです」
リンはここ半年、さまざまな場所に無料wifiを偽装して設置し、罠を張った。そして待った。
無防備に無料wifiにつなぐ、政治的な影響力を持つ人間を。
現役国会議員の秘書を見つけたときには、あまりにも興奮して即刻アカネに報告した。
アカネは、リンの早口で専門用語の混じった報告に、貼り付いた笑顔で相づちを打つことしか出来なかった。
そして最後に、「リンちゃんが嬉しそうで、わたしも嬉しい」とだけ言葉にした。
リン「そのパソコンを使って、国会議員の個人の公式サイトにボクの仕込んだファイルをアップするです。
ミスを装って、内部情報を流出させたように見せかけるです」
アカネ「ホントは与党すじの議員だったら良かったんだけど……
ま、ちゃんと国会議員だからね。しっかり踏み台になってもらうわ。
で、そのファイルが……」
リン「政府が財政破綻の準備をしているって内容、です」
アカネは嬉しくて仕方が無い、という表情を浮かべた。
アカネ「ね、ね、ね。いつやる?」
その日が待ちきれないようだ。
リン「動画の再生数が伸びて、国会議員側の対応が一番後手に回りやすい……金曜の夜が良いと思うです」
アカネ「わかった。金曜ね!」
アカネの満面の笑みを見て、リンは不思議な思いだった。
彼女はこの笑顔で、日本を転覆させようとしている。
********
国会議員の個人サイトに偽計画書がアップされ、デマゴーグが大々的にその計画書を取り上げた動画をアップした。
最初の一本は、その存在を知らせる速報。続いて、日本の財政破綻について考察した動画を投稿した。
そこでは、今、日本を財政破綻させて経済を立て直すことの是と、今の政府とは違う、別の仕組みによる企業国家の可能性について触れた。
動画は瞬く間に拡散され、さらに偽計画書を直接報道するネットニュースも出現した。
さらにTVニュースでも取り上げられるようになったときには、すでに海外にも報道が進んでいた。
週明けに開場される為替市場で、日本円の価値が暴落することが、もはや決定事項のように囁かれた。
アカネはそんな世界の動きを嬉々として観察し、ひとつひとつを嬉しそうにリンに言って聞かせた。
彼女にとって、これは世界を良化する正義の行為で、誇らしい成果が今まさに結実しようとしているのだ。
リンは、少し違った。
反響の大きさに面食らい、不安と恐怖が芽生えるのを感じた。
自分はこの手で、世界に大きな混乱を生み出した。正しいこと、理想の実現、アカネ。彼女が信じるものは、たとえそれがどれだけ眩しくても、不安を全て払拭するものではなかった。
国会議員の公式サイトの対応は遅く、偽計画書が消されたのは、月曜になってからだった。
それが、徒となった。
********
錯綜した情報は1週間ほどで整理され、世界は落ち着きを取り戻していた。
削除が遅れた偽計画書は広く拡散され、さまざまな専門家にその粗を指摘された。
「これは政府の作ったものではない」と結論づけられ、日本の財政破綻計画は一部の陰謀論者の言に登場するだけのものでしかなくなっていた。
日本は、政治の中心である国会議員のパソコンがハッキングされ、さらにフェイクニュースに派手に踊らされた国として、国際的な信頼を大きく損なった。
それに伴い、日本円の価値も暴落した。
だが、それは本当の財政破綻を引き起こすレベルにはほど遠かった。
アカネ「くっそー……」
アカネは日本円の為替レートを見ながら、何度目か分からない悔しさの声を漏らした。
日本円の価値は一時期に比べて、大分回復している。
アカネ「一足飛びには行かなかったかー……」
リン「でも成果がなかったわけじゃない、です」
フェイクニュース拡散の前に外貨に換金していた資金は、日本円が回復しきる前に日本円に戻しており、大きくその価値を膨らました。
アカネ「今度こそ札束風呂、出来ちゃいそうね」
リン「余裕、です」
デマゴーグは、結果的にフェイクニュース拡散の尖兵となってしまったものの、多くの人の目に触れ、チャンネル規模を大きく拡大した。
今回の騒動に対しての謝罪動画も上げており、概ね好評に受け入れられた。
土台、国会議員のサイトがハッキングされ、偽計画書がアップされる事態になるとは思いもよらなかったし、偽計画書が暴かれたのは騒動の後半になってからだ。
こうなってしまったのは、致し方ないことだ、というのが大まかな結論のようだ。
ただ一部で、いち早く動画を上げたデマゴーグと、ハッキング犯を結びつける発言は見られた。
リン「チャンネルとしては、本当に多くの人の目に触れたです。
きっと、アカネの理想に賛同する人も増えてくるですよ」
アカネ「まー、それは良かったかも」
理想が実現出来れば、それで良い。それが、自分の手による結果である必要は無い。
アカネ「次はどうしよっかね」
リン「次……ですか……」
そして日本政府は、威信にかけてハッキング犯を捕まえる、と公表した。
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