異世界召喚されたので、能天気な冒険者やっています〜復讐を果たすその時まで〜

大和由愛

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ヒロイン

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「その手を離してください」

 僕は女の子達と男の人の間に入り、男の人の腕を掴む。

 この世界に来る前の僕なら、助けるなんて選択肢はなかったのかもしれない、でも、今の僕には力がある、困っている人を助けられる力が――

「あ?なんだ、お前」
「嫌がっています。手をなしてください」

 男の人の腕を少し強めに握ると、腕からミシミシと音が聞こえてくる。

「わ、わかった、離すから!」

 僕が手を離すと、男の人は逃げるようにこの場を去る。

「大丈夫でしたか?」

 後を振り向き、女の子達に声を掛ける。

 女の子達は、フードを被っていて、しっかりと顔を確認する事は出来ないが、腕を掴まれていた女の子はフードの隙間から赤い髪が見えた。

「助けてもらったのは、ありがたいけど、調子にのらないで」

 助けてもらったのにもかかわらず、強気な態度だ、けれど、一瞬見えた彼女の目が僕にはどこか怯えているようにも見えた。

「ベル、助けてもらったのですよ、妹が申し訳ありません、助けていただきありがとうございます」

 赤い髪の女の子、ベルと呼ばれた子の後ろにいた女の子はゆっくりと頭を下げる。フードの隙間から金色の髪が見える。

 綺麗な洗練された動きに、一瞬目が離せなくなる。

「お姉様、早くダンジョンへ行きましょう!」

  ダンジョン――その言葉に、僕たち三人の眉がピクリと動く。

「お前ら、ダンジョン行くのか?」
「貴方達に関係ないでしょ」
「俺らは、心配して――」
「そんな心配いらないわ!」

 ライトの心配も聞かず、女の子たちは僕達とは反対方向へと、歩いていってしまう。

 ――その日の夜

 僕達は、宿の食堂で夕飯を食べていた。

「やっぱり、心配ですね」

  あの子達と別れてから、ずっと頭から離れずにいた。

「 そうは言っても、あの態度じゃな、何言ってもダメそうだったじゃねえか」

 ライトは、肉をフォークに刺して口に入れる。

 確かに何を言っても駄目かもしれない、でも、あの怯えたような、あんな目を見たら――

「それでも……僕、彼女たちを探してきます」
「おい、待てよ!」
 
 やっぱり我慢できなかった。食事を置いてダンジョンへ走る。

 ライトの声が聞こえた気がしたが、今はそれどころではなかった。

「ここですね」

 数分走り、ユウとライトに聞いていたダンジョンにたどり着く。洞窟型のこのダンジョンはモンスターも多い。

 僕は一つ息を吐き覚悟を決める。そして、ダンジョン内へと、足を踏み入れる。

 ダンジョンに潜り始めて、数十分が経過していた、だが、彼女たちは今まだに見つかっていなかった。
 
「無事だといいのですが」

 ダンジョン内を、全速力で駆け抜ける。

 僕のスピードなら、彼女たちに追いつけるはず。

「ファイヤーボール!」

 前方から、戦闘音と声が聞こえてくる。

 剣を持った女の子が、弓を持った女の子を後ろに庇いながら戦っていた。

「お姉様!下がってください!キャッ!」
「ベル!」

 ベルは、敵の攻撃でバランスを崩し転んでいる、剣も遠くへ弾かれる、そして、ゴーレムがベルに腕を振り下ろす。

 その瞬間――

「アイシクルランス」

  僕は、ゴーレムを氷の矢で撃ち抜く、撃ち抜かれたところから凍り、バラバラに砕け落ちる。

「大丈夫ですか?」

 座り込んでいるベルに駆け寄り、手を差し伸ばす、だが、僕の顔を見ると、目つきを鋭くさせた。

「余計なお世話よ!」

 何か事情があるのなら、助けることが出来るのなら、僕は、この子を助けたい。

「僕に君達の手伝いをさせてください」
「信じられるわけないでしょ!」
「心配なんです!」

 つい大声を出してしまった。でも、ここで手伝わなかったら絶対に後悔する。

「信じたわけじゃないから」
「それでもいいですよ」

 ◇◇◇

 ナオトは食事を置いて、宿を出ていってしまう。

「おい、どうすんだよ」
「そう言われてもね~」

 私は、目の前の食事を口に入れる。

「お前は呑気すぎる」
「ごめんごめん、でも、追いかけるしかないんじゃない?」
「だよな、行くぞ」
「でも、その前に――」

 私達は、食料と包帯などの医療道具を買いに、雑貨屋に来ていた。本当は市場で買ったほうが安く済むのだけど、時間的にやっていない。

「おい、こんなところで買い物してる暇ないだろ!」
「わかってないな、ナオトは完全に女の子達の事しか頭になかったでしょ」
「まあ、あの様子じゃな」
「だったら、食材も、医療道具も持って行ってないでしょ」

 ライトもそれは理解している、だけれど、ナオトが心配なのだろう。

「こんなもんでいいでしょ」
「だったら、早く行こうぜ!」
「はいはい」

 買い物を終わらせ、ダンジョンへ急ぐ。

「今から行って追いつけんのか?」
「まあ、大丈夫じゃない?ナオトが追いついてるだろうし、奥までは行かないようにしてるでしょ」
「だと、いいんだけどな」

 私とライトはダンジョンへと入り、敵を倒しながら奥へと進んでいく。

「お、あれ、ナオトじゃねえか?」
「ほんとだ」

  数十分ほど走っていると、前方に三人の人影が見える。

「ユウ、ライト!」

 ナオトがこちらに気づき、手を振りながら名前を呼ぶ。

 どうやら、無事に追いついていたようだ。

「お前、勝手に行くなよな」
「すみません、心配でつい」
「まあ、無事ならよかったじゃん、早く帰ろ」

 来た道を戻ろうとするが、帰ろうとしているのは私とライトだけのようだ。

「 僕は、彼女達のお手伝いをしようと思います」

 その言葉に目を丸くさせる、けれど、なんとなくこうなるだろうと、私達はわかっていた。

「しゃーねーな、俺も手伝ってやるよ」
「まあ、私も別にいいけど」

 少し面倒だけど、ここでついていかなかったら、仲間ではないから。

 私はナオトの仲間でなくてはならない――

「そう言えば自己紹介がまだでしたね」

 名前も名乗っていないことに気づき、私たち三人が自己紹介をする。それに続き、女の子たちも自己紹介を始める。

「あたしはベル」

 赤い髪の女の子。こちらは見ずにぶっきらぼうに名前だけ名乗る。

「ユナといいます。よろしくお願いします」

 金色の髪の女の子。こっちの女の子も名前だけではあるが、ベルとは違いぶっきらぼうという感じではない。

「てか、そのフード取らねぇの?」

 そう、彼女達はずっとフードを被っている、まるで、指名手配犯のように。そんな彼女達が気になったのだろう、ライトは問いかける。

 ベルは答えようとはせず、不機嫌そうに睨むだけだった。

「髪色と少しですが顔も見えますし、いいんじゃないですか?」
「そうそう、ライトはデリカシーに欠けるよね」
「なっ!俺だって別に気にしねぇけど、一応聞いただけだろうが」

  結局フードは被ったまま、奥へと歩みを進める。

「なあ、ユウ」

 ナオト達の後を歩いていと、ライトが私にだけ聞こえるように、声を掛ける。

「二人ともレベル高くね」

 ライトが言っているのは、強さではなく、容姿のレベルが高いという事だろう、こんな時に何を言ってるんだ。

「ライトが好きな、お姉さま系ではあるか」
「そうなんだけど、胸がちょっと小さいか……」
「いや、あれくらいがちょうどいいだろ」
「ユウの方こそ、姉の方、好みドンピシャだろ、手伝ってやろうか?」

 ニヤッと笑いながら、私を見ている。

 なにいってるんだこいつは――

「ライト……」
「なんだ?」
「わかっていないようだから教えるけど……あれ見て」

 私は前方の三人を指差す。

 ライトには、早めにこの世の現実と言うものを教える必要があるようだ。

「あの三人がどうかしたか?」
「ナオトは主人公なんだよ、そしてあの二人はヒロイン、つまり……」
「つまり?」
「私たちにチャンスなどないということ」
「な……いやいや俺たちにもチャンスくらい」

 私はライトを見つめる。

「じゃあ、俺たちは……」
「あそこ三人がイチャイチャしているのを、指をくわえて見てるだけってことだね」

 ライトの表情はみるみる暗くなっていく。

「二人とも、おかしくないですか?」

 ナオトが後ろを振り向きこちらを見る。

「ああ、そうだな、世の中不公平だこんなのおかしいぜ」
「世の中はわかりませんが、ダンジョンってこんなに静かなものなんですか?」

 確かに、おかしい、あまりモンスターが出てこないダンジョンは確かにある、だが――

「このダンジョン、モンスターが多いって有名じゃなかった?」

 その瞬間――

 地面が大きく揺れる。

 


 



 

 

  

 



 

 


 
 

 



 
 
 



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