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二章
16-排除
しおりを挟む「消えた……」
男達が居たはずの場所を怪訝に見つめながら、イトは呟いた。
『多分、対象者に排除されたんだろうね』
普段通りの口調で語るオルフの分析に、イトも頷く。そして例の女性方へと視線を移した。
「ブヒッ! ブギィィッ!」
『ドスドスドスドスッ』
「んヒィィーーーーーッ!」
『ブシャアアーーーッ』
身体を突き破りそうな勢いでオークが股を打ち付け、女性は潮をぶち撒けた。
そこへ周りのオーク達が涎を垂らしながら、精液をふりかけていく。
女性とオーク達の体液で、辺り一面は水溜りが広がっていた。
「彼女が対象者のエミリー・ハートレイだな?」
『ああ、間違いないよ』
正に獣の狂騒を眺めながら、イトとオルフは冷静に言葉を交わす。
「これが彼女の望む世界か……」
『オークに犯されながら他の冒険者を排除……道理で誰もクエストをクリア出来ない訳だね』
VRの世界は、使用者が思うがままに操作することが出来る。それはつまりVRの世界に存在する人、物、全てを自由に生じさせ、また排除することが可能ということだ。
ここは、今イトの目の前にいる『エミリー・ハートレイ』が作り出した世界。オークに輪姦されている状況は、彼女の願望に他ならない。
故にこれまでオークを倒そうと挑んだ冒険者達は、彼女の願望を妨げる障害として、この世界から消滅させられてきたのだ。
今まさに目の前から消え去った男達と同様に―――
イトはその可能性を事前に予測し、部屋に入ってから動こうとしなかった。
だが不運にもパーティの男達は、自らの欲望に突き進み、彼女によって存在を消滅させられた。
オークとの営みを妨げる『障害』として―――
『さて―――作戦を実行するに当たって、ひとまず問題点を整理しようか、イト』
オルフは男達が消えたことを気に掛ける素振りもなく、イトへ作戦会議を求めた。
対するイトもオルフの言葉に従い、コクリと頷くが―――
「その前に、消えた彼らを弔う」
不意にイトは静かに目を閉じ、胸に手を当てて黙祷し始めた。
『毎度のことながら、イトは変なところで真面目だね。
VR内に存在する、対象者以外の人物―――NPCは、命を持たない単なる人工知能なのにさ』
人工的に作られたキャラクターの死すら弔うイトに対し、オルフは不思議そうに語り掛けた。
「ああ、分かっている。俺がNPCに黙祷を捧げるのは、人間に対する敬意を忘れない為だ。
例え自分が何処に居ようとも、ここが仮想の世界だと分かっていても、自分と変わらない存在への敬意を欠いては、真に他者への敬意を保つことは難しい」
『なるほど……』
黙祷を終えたイトが、オルフに向かって行動の訳を説明する。するとオルフは眉を曲げながら、何やら考え込んだ。
『確かにイトの言葉は理に適っているけど……それはつまり、イトは僕達が住んでいるコロニーも、本当の現実とは限らない―――と言いたいのかい?
或いは、僕やテス、ザットや他のコクーンの仲間達を含め、自分以外……つまり他者の精神や思考、自我の存在は証明し得ないという独我論的な現実認識が真実である可能性を考慮している、ということかい?』
そう質問するオルフの表情は、イトの言葉に立腹するでもなく、あくまで分析的な意図であることが伺える。
「いや、そうではない。確かに俺達が現実と認識している世界も、ひょっとすればVRのように誰かに作られた"仮想現実"である可能性は否定できない。
だが俺がNPCにも敬意を保持するのは、単に俺が現実世界で他者と生きていく上で、そうした方が良いように思っているだけだ」
『なるほど、理解したよ。なんていうか……イトは良い奴だね』
オルフがイトに向かって、温かい微笑みを向ける。
「良い、かどうか……俺には分からない。俺は抵抗なくオーク達を消滅させているし、場合によっては人間の姿をしたNPCを消滅させることもある。そのことに現実世界程の罪悪感はない故に、善悪での判断はしかねる。
ただ―――単に俺がそうしたいだけだ」
イトがそれを否定すると、オルフは更に笑顔を溢した。
『そうだね。僕達コロニーの住人は、善悪ではなく皆で決めたコロニーのルールと各々の願望に従うまでだ。
それで―――話は戻るけど、現状問題点は2つある。イト、分かるかい?』
オルフは話を仕切り直し、仕事の方向へと舵を切る。
「ああ。対象者の性欲対象が人間ではないこと、そして人間は彼女によって排除されてしまうことだ」
『そうだね。イトが人間の姿をしたまま輪に入ろうとしても、恐らく彼女は君に性欲を向けることはないと思う。
そして冒険者としてオークを倒そうとした瞬間、恐らくイトはVRの外へ弾き出されるだろうね。
となれば―――』
オルフはイトの顔をチラリと見つめ、ニコリと微笑んだ―――
『良いね、似合ってるよイト!』
「そうか」
やや興奮気味に声を上げるオルフの目には、オークとなったイトの姿が映っていた。
『さあ、その姿で対象者への接触を図ろう!』
「随分と楽しそうだな」
妙に期待に満ちた視線を向けるオルフに首を傾げながら、イトは対象者へと近付いていく。先程までの靴音とは異なり、床を踏みしめる鉤爪が『ジャリッ』と音を立てる。
すると―――
「―――グヘヘッ! 人間の雌め、いい声で鳴きやがる!」
「おい、さっさと俺に替わりやがれ!」
「ウォオオ……ッ! この吸い付きっ、た、堪らねえ!」
先程まで呻き声や豚のような鳴き声が聞こえていたのが一転、オーク達の会話がイトの耳に届いてくる。
「どうやらこの姿になると、オークの会話が理解出来るようだ」
『それは良いね! 彼等へ仲間に加えて貰えるよう、声を掛けてみたらどうだい?』
「分かった。おい、俺も仲間に加えてくれ」
オルフのアドバイスに従い、イトが一匹のオークに話し掛ける。だが、
「―――ぁあ? うるせえ新入り! 後ろで順番待ちしてろ!」
敢なく参加を拒否されてしまった。オークに言われた通り、イトは律儀に後ろへ下がり待機する。
『ドスドスドスドスッ!』
「ウォオオッ! イクぞ! しっかり妊めよぉ人間の雌!」
『ドビュルルッビュルルッ!』
「ヒグッッ!ヒグウゥゥウン! ヒボヂイィィーーーッ!」
「おい! 次は俺だっ! さっさと替われ」
「ほら口を開けろよっイクぞ……! 飲めっ!」
『ドクドクッドクッ!』
「んゴッ……! おゴッ! うえっ……! ゴチュッンクッ!」
だがその後もオーク達は順番を開ける様子もなく、対象者を犯すのに夢中だ。
「……おい、このままでは埒が明かない」
いい加減に痺れを切らしたイトが、オルフに助け舟を求めた。
『そうだねぇ……冒険者になる時も装備やステータスを上げたらスムーズに行ったから、オークのステータスを変更してみるよ。
ええと、まずはクラスを最上位の"オークロード"に変更して、ステータスを"魔王級"に……と」
するとイトの身体がみるみる巨大化し、辺りを邪悪なオーラが包み込んでいく。牙が伸び、豚の身体が引き締まり、目つきがより一層鋭くなる。
軽装に身を包んだオークとは異なり、頑丈なプレートが巨大な身体を覆い、手には天井に届きそうな程の長い斧を有している。
「……ん? なん、だ―――」
漂う禍々しいオーラに気付いたオークが振り向く。するとそこには彼等を統べる王の姿があった―――
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