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一章

12-挑発

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「ご、5000万!?」

 提示した1000万がいきなり5倍に跳ね上がり、流石の俺もあ然とする。
 これは奴隷の買取金額ではない。
 あくまでたった1回のセックスに支払われる金額だ。

(正直1000万という額もかなり吹っ掛けたつもりだったんだけど……)

 どうやらこの緑川礼子という女、VIPという言葉では形容出来ないレベルの、超大富豪のようだ。
 しかも性産業を牛耳る企業のトップなだけあって、セックスには金を惜しまないのだろう。
 まさに性業界の女帝と呼ぶに相応しい貫禄を見せ、礼子は『フフフ』と笑みを零した。

「―――ただし、こちらも一つ条件を付けていいかしら?」

「条件……?」

 買う側が条件を付けるなどとは随分都合のいい話だが、金額が金額だけに、すんなりヤッてお終いとはいかない。
 やはりこの女、何か企んでいる……
 でなければ一回のセックスにいきなりこんな大金を見せるはずがない。

「その一回のセックスでわたくしを満足させることが出来れば、このお金は貴方にそのまま差し上げますわ。ですが―――もしわたくしが満足出来なかった場合、貴方にはわたくしの愛玩動物ペットになっていただきますわ。
 もちろんその場合であっても、先程申し上げました待遇で歓迎いたしますわ」

 セックスで俺がこの女を満足させれば5000万、満足させられなければペット……いくら大金が手に入るとはいえ、自由を手にしたSランクの身でその勝負に臨むのはかなりリスクが高い。

「もし勝負自体を断ったら……?」

 仮に断ったとして、この女は俺をどうするつもりなのか。この女の力ならばその気になれば地の果てまで追って来られそうだ。

「それならそれで別に構いませんが……貴方にとっては大金を手にするか、わたくしの元で奴隷とは程遠い悠々自適な生活を送るかの2択なのですから、何か断る理由がおありでして?」

 礼子がサラリと反論を述べる。確かに言葉だけならどちらにせよ俺にとっては好条件だ。
 だがこいつらは俺達男を人間とは思っておらず、奴隷を道具としか見ていないような奴らだ。
 甘い言葉で簡単に信用出来る程、こいつが信頼に値する女だとは思えない。

 なおも礼子の企みを警戒する俺に対し、礼子は更に言葉を続けた。

「それに……たった一回のセックスを競売にかけようとしたのは貴方ではありませんこと?
 女を満足させる自信もないくせに、幸運で手にしたSランクという立場を笠に着てそのような大言を豪語し、いざ買われたら逃げるなんて、自ら自分にはSランクの価値はないと言っているようなものですわ。
 もし貴方がそのように下賎な雄であるならば、わたくしもこれ以上貴方に興味はありませんわ。
 わたくしの期待外れだったということで、他の女に粗末な体を売るなり、主に捨てられた奴隷のごとく放浪するなり好きになさい」

「な、なんだと……!?」

 あからさまな売り言葉であったが、俺のプライドを逆撫でするには充分だった。
 分かりやすい挑発に乗せられて相手の策略にまんまと嵌るのは癪だが、確かにここでこの話を断れば、日本中の女達に俺がただのチキンだという噂が広まるだろう。

 そうなれば女達への復讐は元より、自由に性生活を送る日々など夢のまた夢だ。
 恐らく一方的に犯そうとしてくる女達の目に、怯えて暮らす日々に逆戻りだ。ならば―――

「―――いいぜ。5000万で受けてやるよ」

『ワァッ―――』

 俺が礼子の勝負を受けたことに会場が大きく盛り上がる。
 そしてその答えを聞いた礼子は『ニヤリ』と小さく笑みを浮かべた。

(やはりまんまと乗ってきましたわね……先程は『好きになさい』なんて言いましたが、Sランクなんて未だかつてない奴隷をみすみす手放す訳ありませんわ。
 どんな手を使ってでもわたくしの元に置いて―――飽きるまでわたくし専用の肉バイブとして使い倒し、壊れたら死ぬまでSランクとなれた謎を解き明かすための実験動物にしてやりますわ。それに―――)

 礼子が口元を手の甲で抑えながら、『ククク』と笑いを堪えた。

(たとえSランクの奴隷といえど、今の状態のわたくしを満足させることなど貴方には不可能ですわ……絶対に)

 なにやら企みを秘めながら、礼子は怪しげな視線を送った―――

「―――さて……それでは愉しませて貰おうかしら」

 礼子が今まで挿入させていた奴隷を『ドンッ』と蹴飛ばすとスクリと立ち上がり、ステージ上で艶かしく自身の体を撫でながらマットの上に寝そべった。

 夏美をはじめ調教員は突然の事態に戸惑いながらも、これから為される卑猥な行為に期待を膨らませ、会場中が固唾を飲んで見守る。

 そこに俺がゆっくりと覆い被さった。

(見てろよ……さっき調教員にしたみたいに思いっきりぶち込んでガンガン突いて―――)

 俺は即座に挿入をキメようと礼子の脚を掴んだところで、ふと気になることか頭に浮かび、行為を思い留まった。

(そういえばこの女……さっきまで奴隷に激しく挿入されていたけど、顔色一つ変えていなかった……
 ひょっとして、かなり感じにくい女なのか? それとも―――)

『クチュッ』

「―――ッ」

 俺が膣内を確かめるように指を入れると、礼子は一瞬眉毛をピクリと動かしたものの、その後も余裕な表情を崩さなかった。

(やっぱり……夏美や他の調教員と比べて、かなり弛い……)

 恐らく四六時中男の性器で遊んでいるのであろう礼子の膣内は、口を大きく開いて弾力が損なわれていた。

(つまり、普通のセックスでは平然を崩さない程に快感慣れしているのか……)

 俺は先程までのプレイでは礼子を満足させることが出来ないかもしれない、と思い悩んだ。
 なぜなら確かに俺の股間は他の男達と比べて非常に大きなサイズを有しているが、礼子程の性に狂った女が、普段から太いバイブや快感を高める薬を使っていないとは思えない。
 いや、むしろあの余裕の反応から見るに、普段から相当ハードな遊びに興じているはずだ。
 ならばいくら激しく責め立てたところで、この女を感じさせるには足りない。

 もっと別のアプローチで責めなくては―――

 だが、今まで俺が調教を介して培ったテクニックは、そのほとんどが女を激しく責める類のものだ。しかも前世では童貞で他のセックスなどしたことがない。
 俺が礼子の攻略法に考えあぐねていると―――

(フフフ……流石ですわ。わたくしの体が普通の奉仕では感じないことに気付いたみたいですわね。
 わたくしは普段から奴隷にはコックリングを着けさせ、セックスをする時は常に性感を何倍にも上げる薬を飲んでおりますわ。
 でも今それらはここにない……残念ながら、貴方がいくら強いワザや大きなペニスを持っていようとも、普段から至上の快楽を味わい尽くしているわたくしを満足させることは不可能ですわ。
 さぁ……大人しく敗北を認め、わたくしの愛玩動物ペットとなりなさい)

 礼子が勝ち誇った笑みを浮かべながら、俺の頬を優しく撫でた。
 だが一方の俺は、負けを認める気などさらさらなかった―――

(確かに俺は前世で童貞だったが、今の俺は女の身体を知り尽くしている。そしてそれに加えて、今の女達が知らないようなセックスのプレイも、知識としてではあるが前世で培ったものがある。
 経験はないが……今の俺は童貞じゃない。過去の知識と今の経験があれば、俺にも出来るはずだ……!)

 俺は意を決して礼子の体へと迫る。
 その様子を周りの女達が興奮しながら見つめる。
 そして礼子は俺を自分の近傍へと誘い込むように、不敵に舌を舐めずる。そこへ―――

『ブチュウゥゥーーッ』

「ンン~~~~ッッ!?!?」

「「はぁ~~~~っ!?」」

 俺がディーブキスをお見舞いし、礼子、そして会場中の女達が一様に驚き叫んだ―――

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